39話
「ってわけで、大変だったんだよ……」
「あはは……ハルキ君のとこ、みんな癖が強そうですもんね」
次の休日。桜の運用も兼ねて、俺はミユキと一緒に妖怪の山に出かけていた。
やはり一番共に戦ってきた仲間だけあって呼吸は合わせやすく、既に餓鬼の群れと大蜘蛛3匹を討伐している。
じゃあそろそろ桜を出そうとなった所で、ミユキに「班員の方とは組まないんですか?」と聞かれた俺は、昨日の顛末を話す事にしたのだ。
「ルージュもヒヲリも、確かにスキルからしても、戦闘を見ても強いんだけど……協調性がない」
「そ、そこまで……」
「いや、ヒヲリはまだあるかも……?」
ルージュとヒヲリ。
2人ともクラスメイトの中では飛び抜けた強さを確かに持っている、いるのだが……2人とも別方向にコミュニケーションが取れない。
「多分ヒヲリに関しては、(マイルドに言えば)緊張か気後れかだと思うけど、ルージュがなあ……」
「ああ……いつも張り詰めてますよね、ルージュさん」
「多分何か理由はあるんだと思うけど、俺やヒヲリに対しても若干当たりが強くてな」
昨日の間引きもそうだったのだ。
このハチマンにも『初心者の森』という故郷と似たような狩場がある。
俺達は昨日そこを周り、偵察パーティーの調査結果に則って、浅いエリアに★2がいないかを見て回るという仕事をした。
間引きは基本的にモンスターを狩らない。初心者向けの所で俺達が狩りを行っても大した成果はないし、目標の餓鬼や小鬼が減っても困るからだ。
そのかわり何も狩らなくても報酬が貰える、のだが。
「……ペースが遅いわ、ヒヲリ」
「……ぇぅ」
またスタミナが一番ないだろうヒヲリが責められ、物理系スキルがないからだ、スキルの差は仕方がないと説得はできたものの、不満そうにはしていた。
「変われるならミユキと毎日狩りに行きたいくらいでさ〜!疲れたよ……」
「は、はい!?よよよ喜んで!」
不意打ちのつもりはなかったんだけど、割と本気でそう思ってはいる。
同時に、まだ12歳と思えば……仕方ないかもしれない。
ハンター養成校のクラスメイトって、大体態度が子供離れしてるんだよな。
多分地元の村とかでは1番の天才とかだった分、ライバルができていい意味で対等にお互いを尊敬できているのか。それともそれだけ冷静でいれないと1学期の宿題を乗り越えられなかったのか。
話を切り上げて、桜を呼び出す。
「おはよ、マスター!それにミユキもさっきぶり!」
「うん。桜ちゃんもよろしくね」
桜は出発前に一度顔合わせしてある。
西大陸のモンスターという事でミユキが興味深そうにしていたのが印象的だった。
「今から★1〜2を対象に狙う。陣形は俺前衛の2人後衛、ある程度時間が経つか、怪我をした時点で終わりで」
「はい」
「オッケー!」
2人を先導する形で、俺が走って行く。
全速力だと桜を引き離してしまう為、最も遅い彼女のペースに合わせて進む。
「桜!ミユキ!餓鬼7!これなら桜中心に行こう!」
「はい!」
「任せて!まずは……スリープ!」
詠唱と共に、餓鬼の上から粉のようなものが降り注ぐ。
それに触れた餓鬼が何匹か倒れてしまう。
眠りの魔法がうまく効いたことに満足して、念話でマジックアローを指示する。
「マジックアロー!」
光の矢が現れ、餓鬼に放たれる。
狙い通り起きている餓鬼に直撃。そのまま倒される。
やっぱり★1相手なら一撃、餓鬼程度の相手なら見てから避ける事も厳しいな。
眠る餓鬼も同じく検証で1発撃ってもらう。こちらもやはり一撃。
「魔力は?」
「うーん、マジックアローなら後50発くらい行けるわ!」
多いな……!
普段俺と狩りをしているミユキも驚いている。
俺がファイヤーアローを魔力切れまで撃ったとして、30行くだろうか……?命を削るレベルで無理をすれば、いや。しても50は無理だな。
「やっぱり魔法特化なだけあるな。威力も多分、俺のファイヤーアローより上」
「へっへーん!代わりにちゃんと守ってよね、マスター!それにミユキもお願いね!」
「はい、任せてください」
とはいえ今日は一身札なしでやっている。どれくらいの負荷をかけれるか試す意味合いがあるし、最悪桜が致命傷を受けても俺と契約している内は復活ができる。
「流石に毎回盾にされるのは困るけど〜、マスターが強くなるためなら、あたしも頑張らなきゃ!」
との事で、変に肉盾にしたり使い捨てにされなければ桜もOKだそうだ。
「じゃあここから次は★2の……単独でいるやつでも探したいな」
「そうですね……見つかるかは時の運ですが」
いつも以上に気配を探るのをやめ、完全に偶発的な遭遇を心掛ける。
やはり事故防止で浅層を狙うからか、会うのは餓鬼と小鬼が多い。どちらも弾と魔力の節約で、俺が始末している。
1時間ほど経った時、ようやくチャンスが現れた。
「河童!大蝦蟇2匹と戦ってる!」
「チャンスですね!私は大蝦蟇のうち1匹をやります!」
「桜、前の大蝦蟇、河童の順でスリープをかけてから河童を倒すか俺が止めるまでアローを」
「わかった!スリープ!」
戦闘中の大蝦蟇と河童に眠りの粉が襲い掛かる。
どちらも気付き、逃げようとするがぎりぎり間に合わず粉を被ってしまう。
これでどちらも戦闘不能……とはならない。完全な格下である餓鬼とは違うのだ。
「マジックアロー!」
それでもチャンス。多少なりとも眠くなり、動きに精彩を欠くようになった河童に、矢が襲い掛かる。
1発目をなんとか甲羅でやり過ごすも、衝撃でよろめいた所に2発目。完全にお腹を見せた所に3発目が入り、4発目は頭部のお皿にクリーンヒット。
「よし!大蝦蟇に切り替え!」
素材と魔石に変わる河童を確認して、大蝦蟇を狙ってもらう。
こちらも同じく眠気にやられていたが、数発避けられつつ、反撃をされつつも10発以内に倒し切る事ができた。
ミユキが最後の1匹を倒したのを確認しつつ、3人で入り口に戻る。
「うーん、悪くないんじゃない?」
「ですね。サモナーも契約ができれば強力なんですね」
「問題はクールタイムかあ」
今回は結局怪我がなかったが、召喚中に怪我をした分再召喚までの時間は伸びる。致命傷を受けた場合、1週間は召喚できなくなるだろう。
「まあ出し惜しみして結局俺が死んだら、契約してる凛風と桜も消えるらしいし……」
「無理するくらいなら大人の女であるあたしに頼ってもらいたいわね!」
「桜ちゃんはお姉さんできてえらいね」
「へへっ、でしょ!」
桜とミユキの相性も良し。凛風に対しては未だにやや緊張してしまうミユキだが、そもそもがいい子だしな。
「ありがとうな、ミユキ。いっつも助けてもらって」
「そんな事言わないでくださいよ。相棒、でしょう?」
にこり、と笑顔を浮かべてくれるミユキはとてもありがたいのだが。
実際1学期のようにミユキとペアの様に行動する事は難しいだろう。
うちの班がアレなだけで、普通他の班は班メンバーで連携の調整をしたり、ギルドの依頼を受ける練習をしている筈。
多分今日は……休養日か何かだったかもしれない。悪い事をしたな……。
「本当にありがとうね……何かして欲しい事とかあったら、俺するからさ」
「し、して欲しい事……」
そこですごい表情するじゃん。
「う、うん。俺にできる事なら」
しばらく考え込んだ後、ミユキは頷いて言った。
「今度私と、ハチマンの外にお出かけしましょう!」
お、それは面白そうかも。
なんやかんやで俺の知ってる場所って、故郷の村、ハチマン、オオサカだもんな……3ヶ所である。
「うん、じゃあ楽しみにしとく。もうちょっと授業が落ち着いたら場所と日程を決めよう」
「はい!」
学生旅行かあ……楽しみだ!




