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37話

さて、そんな訳で気持ちを新たにはしたものの、普通に時は過ぎていくわけで。


記念すべき2学期初の授業だが、1学期と違い複数の先生が交代で専門的な授業を行う様だ。

1学期はツェルニ先生が全てやっていたからなあ……そういうものだと思ってしまっていた。


「では本日の授業だが、初回という事で基本的な内容をやっていこう。スキルについて話させてもらう」


筋肉質な男性の先生が、黒板に「スキル!」と書く。


「スキル……私達人類がモンスターと戦うための力でもあり、社会を支えるものでもある」


「そしてスキルは3種類。物理系、魔法系、どちらでもない特殊系に分けられる」


俺で言うなら刀術が物理系、火魔法が魔法系、サモナーが特殊系になる。

最近知ったのだが、非戦闘系は全て特殊系になる……訳ではないらしく、結構均等に物理魔法に分けられているらしい。らしい、というのは赤スクロールで鍛冶スキルが出たりといった記録があるからだ。


「ふむ、みんな退屈そうだな。そりゃそうか!これくらいは初歩の初歩だものな」


ガハハ!と笑う教師に、クラスメイト達も苦笑している。

俺もこれは寺子屋でやった話だからな……。


「よし、じゃあそろそろ本格的な話に移るか。スキル補正について話そう」


スキル補正?ちらと周りを見ると、ミユキやクラスメイトの一部は平然としている。


一方俺もだが、半分以上は疑問符を頭に浮かべている。


「スキル補正とは!物理・魔法・特殊の3種類に分けられたこれらのスキルが、我々の肉体と魔力の性能を底上げしていると言うことだ」


「皆、倒したモンスターの力を取り込んで強くなっていってるのは分かるな?」


その言葉に皆は頷く。

ここまでは常識だ。


「スキルはその上がり幅に補正をかけてくれる……と言われている。物理スキルならば肉体の強さ。魔法スキルならば魔力の多さ。特殊はどちらにも補正がかかるが、物理や魔法スキルの1〜2割程度だと言われている」


召喚系スキルが有名だが、特殊系のスキルは強力なものが多い。

説明の内容が本当なら、バランス調整のようなものなのかもしれない。ここが神の遊戯場ならだが……。


「とはいえこの知識が役に立つかと言うと……そうでもない。物理系が多い者が魔法をメインに戦う事はないし、逆も然り。全員いつも通り戦っていればいいという話だな!」


ひとしきり笑った先生は、ではここで問題だ、と告げる。


「逆にだ。この知識が役に立つ時がある。いつだと思う?」


何人かが間違えるが、自信満々に手を挙げたミユキが正解を言う。


「スクロールを手に入れる・入れた時です。特にオークション等で複数のスクロールが出ている場合、スキルはランダムでも補正は絶対なので参考にできます」


「正解だ。まだ君たちにはスクロールを手に入れる機会は早々ないだろうが、一流を目指すのなら覚えておいて損はない」


なるほど。つまり身体能力で言えば、俺は刀術にサモナー。

特殊系を物理の1〜2割とすると1.1〜1.2の物理補正があると考えられる。


ヒヲリなら特殊系2つで0.2。

ルージュは全て物理系だから3の補正がかかっている事になる。


戦闘ではなく、単純に腕相撲か何かをすればまずルージュ、俺、ヒヲリの順位になるということだろう。


「君たちも思わなかったか?クラスメイトと同じスキルレベルと数なのに、身体能力や魔力に差がありすぎると」


言われてみれば、俺よりナズナの方がパワーがあったような……盾術があったとして、俺はあそこまで大きな盾をもったまま機敏には動けない。


となると、俺の「運命変転」に関してもより慎重に考えなければいけないという事か。

今の俺は補正で言うとバランス型。中衛適正が高いのだろう。


物理を取って前衛に特化。

魔法を取って護身もできる後衛になる。

それともバランス型か、特殊な成長の仕方か……考えないとな。


授業はまだ終わらない。

先生が生徒達の集中力に満足したのか、これから最も大事な話をする!と宣言する。


「ここからが大事な話だ。スキルというものは、同じスキルでも内容が違う事がままある」


ん?

どういう事だ?


流石にこの話には、クラスメイトの殆どが不思議そうな顔をしている。


「魔法系スキルがある者は分かりやすいだろう。魔法系はスキルレベルが上がるごとに選択肢が現れる。その中から自分に合った呪文を覚えて行くから、ランクが上がるほど人ごとに差が出る」


これは広く知られている。

俺もスキルレベル1の時はファイヤーボールしか唱えられなかったが、2になった時に2つの選択肢が出た。

俺はそこからファイヤーアローを選んだというわけだ。


「魔法系は特に顕著だが、物理系も変わっていく。例えば剣術。最初は同じスタートかもしれないが、スピード重視の者、長剣を得意とする者、斬撃を飛ばす者……」


つまり、スキルは持ち主の戦闘スタイルや本来の資質に合った補正、そして能力の上がり幅になって行くと言う事だろうか?

分かりやすい例で言うとナズナか?

あのまま成長すれば、バックラーのような小さな盾より大きな盾を使っている時の方が強くなるという事か。


それとも、この世界では戦闘スタイルの事をスキルというのか?クラスメイトはみんな納得している様だけど、この謎についてはいつか考えてみたいな。


そして……説明を聞いて、俺の刀術についても思い浮かべる。

刀を投擲する俺。

刀を壊す俺。


火魔法を手に入れてからはそんな事していないが、気を付けよう……。






変わって午後。

午後の授業では、授業……?校外カリキュラムのオリエンテーションがあった。


ハンターギルドに直接赴き、内容を知るというものだ。

確かに、まだ多少のクラスメイトはギルドで狩りをしていなかった気もするが……。


「はい、では皆さん班ごとに並んで。今日は直接依頼を受けてもらいます」


ざわざわと声がする。期待、或いは緊張の声だ。野外実習としか聞いていなかった所にこれなのだ。


「こちらの掲示板に依頼が貼ってあります。常設依頼と通常依頼の2種類があるので、よく考えて受けてくださいね」


常設依頼は間引きや、常に需要のあるモンスターの討伐、植物などの採取もある。


通常依頼は本当に多岐に渡る。討伐・採取・護衛・同行・教練など……。

常設に比べ締切が厳しめのものが多い。


「では今日はクエストを受ける流れを学んでもらいます。皆さん、★1モンスター討伐、もしくは★2の単体モンスター討伐依頼を班ごとに1つ選んでください。今日中にそれを終わらせてもらいます」


「どうする?」


どちらも、ソロで今から始めても間に合いそうだ。

折角なら意見を聞いてみたいが……。


「こんなの……どれでも変わらないわ。さっさと終わるやつにして」


「わ、私は……な……も……」


ルージュは苛立たしげに。

ヒヲリはなんでもいいそうだ。


「……まあじゃあ適当に」


★2 大蝦蟇の討伐を選ぶ。

慣れてる狩場だし、2〜3匹でいる事が多いから多少いい勝負になるんじゃないだろうか……?


全員が依頼を選んだ所で、受付で依頼を受ける流れを説明される。


「受付で参加者の登録、そして依頼の確認が行われます。依頼によっては違約金を先に預ける場合や、前金がある場合もありますからね」


パーティー登録をする事で、誰かのギルドカードを見せればこの辺りの手続きが済む様になる。

俺とミユキは一緒によく狩りをしていたから、パーティー登録をしていた。


「今しているパーティー登録は解除して、1年終わりまで班ごとでパーティー登録をしてください」


ご、ごめんミユキ……ちらりと見れば悲しそうな顔でこちらを見ていた。手だけ振っておこう。


あ、ちょっと笑顔になった。


「では班ごとに並んでくださいね」


ギルドの魔道具でそれぞれのカードを読み取り、依頼を確認。

後は狩りに行くだけだ。


「狩猟依頼については今更皆さんに細かい説明をするつもりはありませんが、浅層でも稀にユニークや奥から出てきたモンスターが現れます。気をつけてくださいね」


先生が最後に資料室と売店の説明をして、狩りに向かう事となった。





「じゃあ……陣形を決めよう。俺はだけど」


「そんなもの前衛中衛後衛でいいでしょう、さっさとやりましょう」


「え、う……うん……」


上から俺、ルージュ、ヒヲリである。

打ち合わせの時からずっと思っているがやっぱり連携どころか仲良くなるという概念がない……!


ツェルニ先生の言葉を思い出す。


『あの2人、あのままだと大して強くもなれずに野垂れ死ぬと思ったので〜、そこら辺うまそうなハルキ君と組ませてダメそうならそれまでかなって〜』


こんな事言われて放っておけるやついなくないか!?

とりあえず今日はなんとかなるだろうし、作戦を考えるか……。


反論して喧嘩になるのはまずいので、軽く詫びてルージュ、俺、ヒヲリの順番に駆けていく。


純前衛のルージュがやはり早い。そしてこちらの事を全く気にしていない……!


息切れ気味のヒヲリとペースを合わせ、並びながら進んでいく。


「……ッ、仕方ない。凛風!」


俺の横に凛風が現れ、驚いたヒヲリをおんぶしてもらう。


「ごめん、このペースはキツいよね。しばらく運んでもらうから休んでて」


ただでさえ片目が隠れてて分かりにくいが、ありがとうと呟かれた気がする。

おぶられたヒヲリににかりと笑い、進む。


「いた!大蝦蟇3匹!」


ルージュが叫び、こちらを見る。


大体のモンスターは避けるか辻斬りじみてルージュか俺が倒すかだったから、ようやく目標を見つけた彼女が止まる。

凛風を見て僅かに顔を顰めるものの、報告だけをすると最前の大蝦蟇に突っ込んでいった。


戦闘ができない凛風を返して、ヒヲリを見る。


「戦える?護身が厳しいなら俺が護衛するし、問題ないなら敵の方行くけど」


「………る」


できると聞こえたので、じゃあ牽制しつつ行ってくる!と返事をする。


「ファイヤーアロー!」


3匹がかりでルージュに襲い掛かっている大蝦蟇のうち、1匹に魔法を飛ばす。

直撃。


僅かにのけぞりこちらを見る大蝦蟇。これで楽にはなったか?と思った瞬間。大蝦蟇達の周りに10匹以上の化け骨が現れて襲い掛かる。


「ネクロマンサーか!」


通常死体系のモンスターが出ない狩場だからすぐにピンと来た。

★1モンスターとはいえ数が数。明らかに時間稼ぎと注意を逸らす事に徹しているし、しばらくは持ちそうだ。


炎魔法で他の大蝦蟇にちょっかいをかけつつ1匹を仕留める。

同じ頃に2匹仕留めたルージュにお疲れ様、と言うと、ええ、とだけ返される。


そして3人集まると、こう告げた。


「同じくらいの実力と聞いたけど、ヒヲリ、あなたもう少し貢献して」


「ぁ……ぅ……」


硬直しかけながらもこくりと頷くヒヲリに、ルージュは鼻を鳴らす。

流石にそれは言い過ぎだ。というかそもそも、彼女の援護は的確だった。


「ヒヲリは上手くやってくれたよ、俺も大蝦蟇を倒しやすかったし、そっちだってそうだろ?」


「そうね。でも3人で狩っているのだから当たり前じゃないかしら?大蝦蟇に会う前にへばっていたみたいだし……」


険しい目線でヒヲリのみならず俺を見ると、入り口に体を向ける。帰るという事だろう。


(前途多難だな……)


とりあえず素材と魔石をいつも通り回収して帰る。

ギルドで素材と魔石を見せて、討伐を確認してもらう。今回は納品ではないため素材も魔石も俺たちで分け合う。


ここでも揉めるかと思ったが、意外にもルージュはあまり興味がなさそうで、ヒヲリも同様。2人とも必要な素材でもなければ欲しがろうとしないのだろうか。

ちょうど3匹いたから、1匹ずつ分素材を分け合う。


受付の所で待っていた先生がこちらを見て微笑む。


「あなた達は4番目……大蝦蟇4匹で4番目は早いですね」


「ありがとうございます」


「………はい」


「あ、………ぅ」


3人でお礼を言って、この日の授業は解散となった。

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