34話
オオサカ夏祭りで様々なものを手に入れた俺ことココノエ ハルキが、ハンター養成校のあるオウミ領ハチマンに戻ってきたのは夏休み終了数日前。
本当なら1週間くらい前には帰れるはずだったのだが、途中立ち寄った村でトラブルもありこのような事に……。
「早く学校まで戻りたい……」
重い身体を引きずって学校まで歩いて行く。一瞬凛風におんぶしてもらおうか悩んだが、羞恥心と天秤にかけてやめた。
「ふぅ……やっと学校ってあれは!ゴウ!」
「ん?おおハルキじゃん!今帰ってきたとこか?」
顔見知りの姿を見つけて少し頬が緩む。
ゴウの姿は……ん?
「なんかゴウ筋肉増えた?ちょっとマッチョになってない?」
「マジで!鍛えたからか?それとも大剣術が3になったからかな?」
「3になったの?おめでとう!」
「ヘヘッ、サンキュな。これで★3が来てもある程度やり合える」
ゴウの獰猛な笑み。前世の13歳では作れないような表情だが、この世界基準だと「強さを求める若武者のカッコいい笑み」である。
「あ!★3なら倒したよ!パーティーでだけど」
「マジか……ハルキやるな、でもパーティーってアレか?あの凛風とかいうキョンシー?」
凛風の事はクラスメイトではゴウ、ナツミ、そしてミユキのみが知っている。そして凛風を使役できない事も。
「いや、現地の騎士見習いの子とな。強かった」
「ナンバ領の騎士見習いか!面白そうだな……俺も来年ナンバ行こうか悩むぜ」
またなと挨拶して部屋に戻る。
ゆっくり休みたいが、まだ昼前だし……。
「用事を済ますか……」
というわけでツェルニ先生の部屋をノック。まずは彼女に報告がいるだろう。
「ハルキ君ですか〜?どうぞ〜」
まだ俺名乗ってないよね?相変わらず怖い。
「失礼します。ただいまです、先生」
「おかえりなさい〜。……うん、いい感じに伸びてますね〜」
「あ、はい……テイムもできました」
「お〜、良かったです〜!ちなみにどんなモンスターを〜?」
「フェアリーです」
桜を見せて、進化の悩みを告げる。
彼女は候補を教えてください〜と言ってきたので、図鑑で調べた内容を伝える。
「図鑑で読んだものと違わなければ、フェアリーソルジャー・フェアリーアーチャー・ハイフェアリーの3種類ですね」
「ハイフェアリー一択ですかね〜」
名前的になんとなくそんな気はしていたがやはりそうか。
「ソルジャーとアーチャー、どちらも〜★2の物理系モンスターで、追加で弱い魔法も使えますがもうそれ劣化の劣化の劣化ハルキ君というか、単体で運用するなら★2の中でも弱い方ですし〜」
ボロカスに言われてる……。
「ハイフェアリーなら魔法型なので〜、後衛に特化する分役割に当てはめやすいかもです〜」
「なるほど……ありがとうございます!」
「いえいえ〜、それに妖精系は魔法型に強力なモンスターが多いので〜最終的に考えてもそうかなって〜」
ただし、ハイフェアリーが3種類の中で機動性・防御力共に最低らしく気をつけなければいけないとか。
桜も丁寧にお礼を言っている。
というか、ツェルニ先生の事を優しいお姉さんくらいに思っている気がする……優しい誤解はさせたままにして戻そう。
桜を送還して、次にするのは借金の返済。
お金を出すと、きょとんとした顔でツェルニ先生がなんですかそれ、と聞いてくる。
「いや、ホテル代とかの借金で……」
「ああ〜、あれですね〜」
ポンと手を打ちにこりと微笑む先生。
そして何でもないかのように言う。
「ハルキ君のやる気を引き出すためのものなので〜、借金なんてないです」
「えっ、でも払ってもらってますよね……?」
「成長してるみたいですし〜、それを確認できただけでもお金を出した甲斐があるな〜って」
「えぇ……?」
申し訳なさを通り越して引き気味の俺に、こてんと首を傾げて先生は聞いてくる。
「ハルキ君に限らず〜、そろそろクラスのみんなは私がどういう先生か分かってきたと思っていたんですけど〜」
「いやまあ、はい。なんとなくは」
「ですよね〜?私は頑張って強くなる子が好きで〜、そのために手助けができるのが嬉しいから先生をやってるんです。だから……死なない程度を見極めてやってるんですよ。普段は」
前のような殺気は感じられない。
戦意もない。
ただ、ぞくりとするような笑みを浮かべて、先生は告げた。
「でも……本当の本当に強くなりたいのなら、いつか相応の死線を潜る必要がありますよね。ねぇハルキ君……?そのいつかを、楽しみにしていますね」
あれから元の雰囲気に戻ったが、先生にお土産を渡して早々に退室した。
夏休み前から気付いていたが、完全にロックオンされている……。いやもう諦めるしかないんだけども。
退学したいか?と言われるとそんな事は全くないし。なんやかんやでツェルニ先生は俺が本当に無理な範囲で何かをさせる事はない。
ギリギリのラインでやらせているのだ。夏の鬼熊戦も危なかったとはいえ、俺1人なら多分即座に逃げていた。
事実俺は養成校の同学年の中でもかなりの上位に入る事は間違いない。餓鬼を倒す前の、刀術スキルしかなかった頃に比べたら成長は凄いことになっているのだ。
俺の目標兼神様?との約束として、とりあえず成り上がれるだけ成り上がるつもりではいる。どうしても無理だと感じたらその時は逃げよう。
「……そうならないためにも、強くならないとな」
廊下でつい独り言を漏らす。
軽く首を振って次の用事を済ませに行く。
「こんにちはー」
「いらっしゃいませ、ってハルキ君!おかえりなさい」
「おや、おかえりなさいハルキ君。夏祭りは楽しかったかい?」
購買のお姉さんと鍛冶屋のお兄さんだ。2人とも顔を綻ばせて喜んでくれている。
「結構モンスターと戦っていた気もしますけど、楽しかったです。あと、これお土産です」
「お菓子?ありがとうねハルキ君。13歳なのに気遣いができる子ね……商人の才能もあるかも?」
「いや、流石にそこまでは……」
「おおっ!こんなに鉱石を!?お金は大丈夫だったんですか!?」
「はい、ナンバでも狩りをしていたので」
お姉さんの方はニコニコと、お兄さんの方はぎらついた表情でお礼を言ってくる。
「ではこちら、まず代金です」
「あ、どうも」
多少上乗せしてお金をもらう。2人にはいつもお世話になっている以上、これくらいなら全然利益なんていらないんだけど……。
「そして……この素材でとあるものを作る事が出来る様になる筈です。研究と練習で半分くらいは駄目にするかもしれませんが、2〜3個は作れる見込みなので、そのうち1つをハルキ君に渡したい」
「は、はあ……一体何を?」
「折角なので秘密にしましょう!ハルキ君が★4以上のモンスターの素材及び魔石を手に入れたら教えてください。片方でもとりあえず聞いてくれれば」
もし卒業までにできなかったら現物をあげますよ、との事らしい。
とてもワクワクしているようで、ここまで言わせるほどのものが何か楽しみだ。
そして今できる用事をとりあえずは全て済ませて、自室に戻る。
「疲れたよ……」
「……」
「ありがとう凛風」
「あ!私もやる!」
「ありがとう桜」
「えっへん!」
両手に花。両手にモンスターだが2人に頭を撫でられながら、ぼんやりと目標について考える。
最終目標は神様との約束通り「この世界に名を刻む」事だ。
そう考えると、まず狩人としてのランクを上げるのが一番。今まで見た強者の姿を思い浮かべる。
「父さんは鬼を倒したと言われている。それで村や町レベルの主戦力」
父さんは確か格闘術5、刀術5だったか?ソロでかどうかは怪しいが、凛風と正面から戦える域にある。
「ナンバに行く時に見た護衛の人、あの人は牛頭鬼と馬頭鬼を1人で倒しきっていた」
確か何かのスキル6がある……とかだったか?詳しくは聞いていない。
鬼より1ランク劣るとはいえ、2対1でそれだ。
「ツェルニ先生は分からない……どうなってるんだあの人?」
あの人ってスキルランクどれくらいなんだろう。凄み的には今まで見た誰よりも強そうなんだけど。
………。
……。
ともかく、最低でもそれくらいの実力がないと上位レベルの腕を持つハンターとは見なされない筈だ。
最終的に名を刻むとするなら、いるか分からないが凄まじい強さのモンスターを倒して伝説になるとか、活躍を重ねて領主を狙うとかがある。
1年の1学期を終えた今、狙える事ではないな……。
そしてもう1つ。
ハーレム、作れるか?
凛風と桜は俺に好意的だし、ミユキは……どうなんだ?ナズナもだし。
俺も男だから考えない事もない。
この世界では力があれば、悪い事じゃなければ許されがちだ。
例えば「生き物を切るのが楽しくて仕方がないからハンターをやっている」と明言する奴がいたとしよう。
これが実力のないハンターだった場合、周りからはこう見られる。
「あの人餓鬼を切って回って興奮するどうしようもない人よ……」
「カッコつけてる割に情けないわねえ……」
可哀想すぎる。
一方で強いハンターが同じ事を言って活躍するとしよう。こうなる。
「あの人、モンスターとの戦いにストイックでカッコいい……!」
「剣に生きるってやつかしら?あそこまで強くなるには尖らないといけないのかしら」
という具合だ。
実力もないのにアホな事やってないで努力しろ、という訳だ。
ハーレムもおそらく同じ。
金で縛り付けてるのかヒモなのか分からないけど情けない人ねえと言われるか、それだけの実力がある人間だと思われるか……。
どちらにせよ強くならないといけないわけだ。
「2学期も頑張ろう……」
「……」
「マスターいっつも頑張ってるー」
2人になったテイムモンスター達と戯れながら、夏の終わりは過ぎて行く……。
夏休み編、終了です。
次回2学期。主人公たちは新しい事を学び始めます。
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