28話
パトロールを7日間終えて、1日更に休み。段々とオオサカの街は祭りらしき雰囲気になってきた。
例えばお店の飾り付けだったり。
気が早いお店はもう出店を出していたり……後は今泊まっている「金の招き猫亭」も人でいっぱいになった。
狩りだが、素材の半分以上をエンキさんに納品しているため、そこまで劇的に稼いでいるわけではない。アルバイトも終了後狩りに行く日と休む日とで分けたから連続で入れれたわけだし。
しかし逆に言えば今のところ出費は食事代くらいで、ツェルニ先生に返す分もどうとでもなるもんな……半額にはなったし。
さて、そんな訳で俺としては残りの予定をこう考えている。
今日以降、祭りまでにナズナと一緒に★3を狩りに行く。目標の2体はどちらもちんどん獣道と廃棄街道。別々になるから最低2回。多くても3〜4回で行けるのではないだろうか。
残りの日程は祭りを楽しみつつ、知り合いのヘルプなり、出店でいるものがあり、足りない場合はお金稼ぎなりしようと思う。夏休みに入ってから一層頑張ってた気がするからな……。ここで休憩を入れないと。
既にナズナとは話をした。明日、4日後の2回に分けて探索を行う。
1人でやっていた場合、最悪フェアリーを諦めるか、片方だけ頑張ってもう片方をお金か他のモンスターで頼んでいたかもしれない。本当にナズナには頭が上がらない。
さて、折角なので、オオサカに貢献という事で今日はこの人の依頼を受けようと思う。
朝食の時間前に厨房の前で待っていれば、こちらに気付き近付いて来てくれる猫耳のお姉さん。
「おはようニャ、ハルキ君。ご飯が恋しくなったかニャ?」
「おはようございますクロさん。昨日のホットケーキとっても美味しかったです!……ご飯は楽しみですけど、今日は空いてるので食材取りに行けますよーって」
「おお!ほんとかニャ!?」
嬉しそうに彼女は尻尾を揺らすと、メモを取って出てくる。
「これこれ!これニャ!魚系は海になるからまだハルキ君には厳しいニャけど、肉系はランクが低くても美味しいのいっぱいニャからお願いするニャ!」
「はい、分かりました!」
「報酬はオフシーズンのギルド売値くらいで買い取るニャけど、代わりに夜はサービスするニャよ。他に何かして欲しいことがあれば言って欲しいニャ」
「はい、じゃあ行ってきます」
クロさんに見送られてちんどん獣道に向かう。
入り口では騎士見習いの子たちに会ったので軽く会釈する。全員は覚えていないが、この子たちは騎士団でちょっと会ったな。
「おはようございます」
「ああ、君は……おはようございます」
朝と夕方は特にハンターが狩り場に向かう時間、帰る時間なので人が多い。入り口で誰かに挨拶しておくと何かあった時覚えてもらえてるかもですよ〜とツェルニ先生の授業で学んだ。登山みたいだな。
入り口に入って狩りを始める。
今日の目標は、★1角兎の肉が10、★2暴れ猪の肉が3、★2大蝦蟇の油が2………。
中々ハードな買い物だけど、やれるだけやってみるか!
とりあえず全力で奥へ奥へと潜っていく。しばらくは中層に入らないはずだから、浅層の中でも奥の方に入り、★2を誘う。
途中角兎はすぐに見つけ、大蝦蟇は群れでいたので2匹と2匹狩って油を2匹分ドロップ。当然だがこういった素材の依頼では、ドロップの問題もあって想定より多いモンスターを狩らなければいけない事がある。討伐より難度が高いとされる理由がそれであり、報酬も増える。今回は義理とコネ作りがメインだし、向こうも1日で集めきれなくても全然いいニャと言っていたので失敗ペナルティもなし。そう考えるとそこまで気負う必要はないな。
と、探していると叫び声が聞こえて来た。明らかにヤバそうな声だが……。
「うーん、うー………ん。ナズナへの義理もあるし、助けに行くか」
浅層と言っても深めの場所だ。★2以上か下手したら★3相手だが、無理そうなら逃げよう。
……と思い見に行くと、4人組のパーティーが火鳥2匹と暴れ猪3匹相手に奮戦していた。
「オラ!ウォーターランス!」
リーダーらしき男性は比較的頑張っている。多分俺よりちょっと下くらいの実力に見えるから、2匹くらいまでなら抑えて持ち堪えられるだろう。
他の3人も同じくらいなら、それぞれタイマンで★2を倒すだけだが……。
「半壊してない?」
多分リーダーの人が自分の実力×4でパーティーの実力を計算してしまったか、他の人がリーダーの実力を見て慢心したかかなー?
「すみませーん!助けいりますかー!」
モンスターと共にこちらを振り向くパーティーメンバー達。リーダーは葛藤している様だったが、他の3人はお願いします!と言って来たのですぐに援護する。
「ファイヤーランス」
暴れ猪の2匹を受け持ち、魔力の消費を気にせずファイヤーランスを連射。ひとまずは頭数を減らさなければいけない。
もう1匹の暴れ猪はじっくりと刀で相手をしつつ、他のパーティーメンバーを見る。
リーダーは安定したな。火鳥2匹相手に優勢だ……1匹倒したな。
他3人は半壊していたこともあってやや厳しいが、持ち堪えるだけならなんとかって感じか?
ちょっと厳しいけどもう少し魔力を使うか……。
俺はファイヤーランスを数本生み出し、目の前の暴れ猪に射出する。
側面に全て直撃。痛みと、煙によって視界が塞がった暴れ猪のもう片方の目に刀で切りつける。
目が見えなくなり文字通り暴れる猪に、今度こそファイヤーランスを5連射。2匹目を討伐。
「気持ち後数発か……?」
これ以上魔力を使うのはまずい気がするので、残りの魔力はセーブ。
流石に俺込み4:1なら暴れ猪も余裕。リーダーが残りの火鳥を倒す頃には、こちらも終わっていた。
「すまん、助かった……」
やや悔しそうに言うのはこのパーティーのリーダー。
ナンバ領とは言ってもオオサカ外の村からやって来た4人らしく、値上がりしている依頼料を見て無理な相手に挑んだとか。
「火鳥相手だから、俺の水魔法2なら行けると思ったんだ……」
「火鳥2匹だけならねえ……」
さて、どうするか。
暴れ猪の素材は俺が貰う。マナー的な話をするなら、俺が全て素材をとっても全く悪くない。とはいえなあ……これ以上彼らに危険な狩りをさせて、死人が出るのも助けた意味がなくなるし、仕方ないか……?
「ねえ、君らの依頼って火鳥の魔石?」
「ああ、そうだけど……うおっ!?」
火鳥の魔石をリーダーらしき男の子に渡す。
「あげるから、代わりに祭りが終わるまで危険な狩りはしない事」
「……すまん、助かる」
これくらいなら許容範囲だろう。彼が1対1で火鳥を倒せそうなのは事実だし……。代わりに残りは貰う。
MPも切れた事だし、これくらいで帰るか。
帰って早々、クロさんに素材を全て納品する。
「マジニャ!?これ全部1日で集めたニャ!?ハルキ君舐めてたニャね………!」
時間がかかると言っていたクロさんの依頼を1日でやり切ったことには、流石に驚きを隠せない様子。
「私もハルキ君にビッグなお礼をしなければいけないニャね、これは……!ハルキ君が望むなら、ちょっと気合い入れて料理作るニャよ!」
「えっと……いつもは気合い入ってないんですか……?」
「言葉の綾ニャ!私の料理スキル5を使って、バフ付きの料理を作ってもいいって話ニャ!」
「おお……!」
「まあ効果カッスカスニャけど」
「えぇ……?」
その後詳しく聞いたが、要するに最低でも★3の素材とレベル3以上の料理スキルがないとバフ付きの料理は付かないとかなんとか。
「★3の食材って時点でそこそこ高くなるニャし〜、それで数時間力が1.05倍になるとか、必要ありますか?」
「ちょっと語尾」
「はニャ!?ま、まあそういうわけニャ。あとは食材の仕入れとかもできるニャけど、高い!高いからハルキ君に頼んでんニャよ!普通にコース食うかなんかした方がいいと思う、ニャ」
「あ、はい」
とりあえずその日はディナーを食べてみた。本来ならば予約必須のコースらしいが、ハルキ君が上手くやってくれた分還元ニャ!だそうだ。
蟹しゃぶとふぐって、今世でも美味しいんだな………。




