27話
パトロールをして5日目。そろそろ慣れてきた。
とは言っても、戦闘自体はぬるい。廃棄街道の★1は餓鬼、小鬼、唐傘。★1はそこまで多種多様にいる訳ではないからこんなものだが、当然どれも相手ではなく、唐傘に至っては5割くらい逃げようとしてくる。
では問題の★2、浅層の脅威となり得る相手は。
提灯。ナズナと戦った相手だが、その後1度遭遇した。試しにと炎魔法を撃った所本体には効くらしく、割と楽に行けた。
琴古主。大きくなった琴に顔が生えた様な不気味な相手だったが、戦闘力自体は然程でもなかった。ただしこいつの曲を聞いているとやや敵の動きが良くなっている様で、群れた餓鬼と現れたが討伐にやや時間がかかった。
後は……もう何種類か★2がいるらしいが、広大なエリアだけあって★2の種類も豊富だ。俺なんかは面白いと思うが、ハンターによっては多数の対策を考えなければいけない面倒な狩場になり得るか。
それにしても……仕方ないが、浅層の中でも中層に近い所にまで足を運んでも、初心者らしきパーティーを見つけるのは中々ヒヤヒヤするものがある。
浅層と中層は劇的に違うが、浅層でも奥の方は充分に危険な領域だ。警告して聞く手合いならこんな所にいない訳で、俺は近い所にいる時に助けを求めてくれる事を祈るしかない。
……実際にどれくらい怪我人が出ているかは不明だが、ともかく5日目は終わりだ。この日はあまりモンスターも出ず、明らかに危なそうな状況もなし。助けもなし。
というわけで時間が余ったため、俺自身が浅層の深めの場所に潜ろうと思う。狙い目は巡回ルート入ってすぐの場所。★2が出やすいと聞いたあそこだ。
道中出た小鬼を倒して、まず入り口。
木の門だが、獄門街中層の立派なものとは違いカビが生えて、割れ目が酷い。モンスターかと疑う人がいてもおかしくない寂れっぷりだが、モンスターではない為入る。
「なんとなくモンスターの気配がするな……奥の方にはハンターぽい感じもするし、右に進んでみよう」
右には小さな民家が複数。大きな家が一つ。畑らしき場所もある。
小さな民家から順に漁っていく。
「餓鬼か……っと、暮露暮露団ってやつか!?」
入り口にいた餓鬼を倒し中に入った瞬間、右の方に干してあった布団が襲いかかってくる。
赤色に光る目が見えるから、こいつは★2の暮露暮露団というモンスターに違いない。
「布団には火だろ!ファイヤーアロー!」
布は火に弱い……筈だが、湿気ったような見た目から多少火に耐性があった様だ。一撃ではやられなかったが、怯んだ所に2発、3発と撃ち込む。4発目で力尽きた。
「結構タフだな……刀で切るよりはマシだと思ったんだけど」
どれくらい耐えるのか試す意味合いもあったが、あんまり会いたくない敵だな、これは……でもエンキさんのリストにあった気もする。あと1匹くらい素材がいる気が……。
次の家もクリア。小鬼と唐傘。
次の家は敵なし。目ぼしいものもなし。
「じゃあ大きい家か。絶対★2はいるだろうけど」
入れば餓鬼、小鬼。
切ったところで上に上がれば、凄まじい勢いで刃物が奇襲気味に襲いかかってくる。
「髪切り……!?」
前の刀の材料にもなった髪切りがそこにいた。出るなんて話聞いてないが……もしやあれか?
髪切り単体なら、今の俺でも余裕はある。互いに何度か切り合い、相手の実力を把握したところで二の腕辺りを切り飛ばす。
刃そのものはともかく、肉の部分は並の★2程度の感触だ。問題なくもう片方の腕も切り飛ばし、最後に首を切りトドメを刺す。
そして髪切りをじっと見つめる。
髪切りは、いや髪切りの死体はいつものように光る事もなく、突如巻き戻ったかの様に無傷の姿に戻り、襲いかかってくる……!
「ああもう!やっぱりか!」
知らなかったらやられてたが、事前にナズナに教わっといて良かった……!髪切りと打ち合いながら部屋を見渡し、不自然に壁にかけられている絵画を見つける。髪切りの絵だ。
「ファイヤーアロー!」
俺が隙を見つけて放った火魔法が絵に着弾すると、明らかに髪切りが苦しむ。
今度は密接して絵をズタズタにする事で、ようやく髪切りは消え、絵……画霊の討伐を確認した。
「珍しいらしいけど……」
画霊。廃棄街道では珍しい★2以上のモンスターである。
そう、★2以上。こいつはランクが変動する奇妙なモンスターで、同じランクのモンスターの形を取って襲いかかってくる。
素材もそいつの素材を落とす面白いモンスターだが、対策のできない敵が出たら面白いでは済まないな……髪切りの刃と画霊の魔石を取ったあたりで、今日は撤退とした。
「いや……中々やるなお前。★2の素材をこうも卸してくれるとは」
「いや、ちょうど廃棄街道をパトロールする事になりまして、その縁で」
経過報告ということで、エンキさんに今までの素材を納品して行く。
エンキさんの依頼してきた素材は廃棄街道のものが多く、ちんどん獣道のものは1つを除いて既に終わっている。
「パトロールって地域のか。いつの間にそんな縁ができたんだ?……まあいい。お前さんが充分な実力を示しているのは確かだ。血塗れの金が気にいるのも分かる」
「あの……あんまり突っ込みたくないんですけど、血塗れの金って」
「ああ、ツェルニの奴の事だよ」
ですよねえ。
触れない様にしていたが、これ見よがしに言われると無理だよ。
そっと由来について聞いてみると、彼は心底楽しそうに笑った。
「アイツがボコった奴がな、血塗れの金髪おっぱいババアって……ブフォ!」
説明しながら笑うなよ……。
何もかも最悪だった。武勇伝とかじゃないの?こういう二つ名って普通……。
妙に疲れたので、適当に話してから凛風のマッサージをお願いしてみた。癒された。




