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25話

やや疲れを残しながら、ギルドに戻る。混み合うギルド内で報酬の受け取りや素材の支払いをして、金の招き猫亭に帰る。

やっとゆっくりできたし、外に出たくないし……今日は折角だからここの晩御飯を食べようと思う。なんでも朝は安価な定食で人を集め、夜はややお高めなご飯を出すとか。

ややお高めと言ってもあくまで庶民の味ではだ。俺でも充分出せる値段でメニュー表を見る。


「ご注文は決まりましたニャ?」


「ん?」


見てみれば、そこには猫耳と尻尾を生やした少女が。黒猫かな?割烹着をしているから、料理人の子か。


「あ、はい……じゃあこの竹コースで」


「はいニャ!」


「あと宿泊者特典の小鉢サービスをお願いします。これがキーです」


「おおっ、じゃあ君がハルキ君かニャ?私はここの料理担当、クロエ クロ!よろしくニャ!」


「どうも、朝ご飯いつも美味しいです」


「嬉しい事言ってくれるニャね。食事が終わったらまた話しかけに来るニャよ」


「ありがとうございます」


彼女は小走りで厨房に戻って行く。

一見すればモンスターの猫又に見えるが、彼女の手足は人間のそれだ。猫又と人間のハーフだろう。


この世界の人間は、人間に当たるものを「人間社会に溶け込む事ができ、法に従い、理性のある者」と定義している。


俺の様な人間が圧倒的多数を占めるが、モンスターハウスで会った様なフェアリーも広義の人間に当たるし、酷い差別を受ける事はない。モンスターの中でも知恵持ちと呼ばれる、賢い個体、その中でも人間を無闇に襲わず、人間社会に強い興味を持つ個体は、人里に来る前に死ななければ迎え入れてもらえる。

それ以外にも一部のモンスターはテイムスキルがなくとも一対一で自分を打ち破った相手に従う事もある。


まあ、そんな中でも誰かと仲良くなり、子供ができる事もある。

彼らは単純にハーフ、もしくはクォーターと呼ばれ、元になったモンスターの能力を受け継いだり、身体能力が高かったりする傾向にある。

それ以上血が薄くなると、不思議な事にモンスターの特徴は全く現れなくなるのだ。


……本人に聞いて悪口だと捉えられたら怖いので誰も聞いてないが、ツェルニ先生もハーフエルフで耳が尖っているのでは?なんて噂されていたりする。


ご飯に舌鼓を打ちながら、ぼーっとその様に考えていたが……いや、ご飯に集中しよう。昨日まで夜は食べ歩きで済ませていたが、こういうちょっと高めの所でご飯を食べるのもいいものだ。モンスターの素材なんかも使われていて、中にはびっくりする様なものもあった。人魚の肉って食べたら不老不死になるのでは……?後で聞いたら不老にはなれないが美容効果はあるとか。


「ごちそうさまでした。美味しかった……本当に。毎晩ここでも飽きないかも」


「ニャニャ、ありがとうございますニャ」


それを聞いたのか厨房からクロさんが出てきた。微妙に恥ずかしい。


「あ、いや、こちらこそ……?」


「子供だからコースが入りきるかなと思ったけど、中々いい食べっぷりニャね」


「美味しかったので」


「またオオサカを出る前に、良ければ晩ご飯食べて来ると良いニャ。数日前くらいに言ってくれれば、レアな裏コースをご馳走してやるニャよ」


「裏コース!」


なんやかんやで俺も前世日本人。裏メニューとか限定とか、そういうのには弱いのだ。必ずまた来よう。


「それはそれとして……ハルキ君は中々13歳にしてはできるハンターさんと聞いたニャ。ほんとニャ?どれくらいニャ?」


「え、まあ……そこまでではないですが、今日も送り犬を3匹狩ってきました」


「おお!養成校や騎士学校でもエリートの方じゃなかったかニャ!?それは……そんな訳で、暇だったらでいいニャが頼みたい事があるニャ」


「は、はい」


「この時期はよくあるんニャけど、食材が結構品薄になりがちでニャ……まあそれだけなら依頼すればいいニャけど、この時期ハンターに依頼しても高い!それに加え失敗率も上がる!と良い事なしニャ。食材を頼んで手に入らなかったら困るニャ。折角きてもらうお客さんに代替品をお出しするのも許せないニャ。出すしかないニャけど」


「は、はあ」


「そんな訳で朝、余裕があって気が向いたらで良いニャけど。食材を狩ってきてくれると嬉しいニャね。ギルドの依頼料そのままではないけど、多少高く買うニャし、何か私にできる頼みとかなら等価交換でもいいニャ」


「なるほど……」


「それだけ!ニャ!とりあえずの賄賂として、後でお部屋にタルトを運んであげるニャ」


「あはは、ありがとうございます」


そう言うと、今度こそ鼻歌を歌いながらクロさんは去って行った。




さて、整理の時間だ。

部屋に戻って凛風を呼び出し、2人でこれからの方針を決める。いや凛風は何も言わないんだけど、仲間だから情報共有はしておきたい。


俺達がやらなければいけない事と、やれる事を列挙してみよう。


やらなければいけない事は、優先度順にこうなる。


・ツェルニ先生に借金を返す

・フェアリーの借金を返す

・鍛冶屋のお兄さんが求める石を探す

・何か役に立つものを探す


改めて見ると借金だらけじゃん、俺。

とはいえ借金で首が回らなくなるなんて事はない。1番上も手持ちの金で返そうと思えば返せるし、2番目も最悪できなくても良い。諦める事で何かペナルティが生まれる訳ではないからだ。


とはいえエンキさんの依頼をクリアしてフェアリーをテイムすれば、もうそれだけで宿泊代の半分はタダだ。

お金に余裕があるほど下二つは買いやすい。露店が並ぶ祭り本番までにどれだけやれるかがポイントだろう。



次にやれる事。

俺にやれる金策なんてハンター業しかないから、基本戦闘だが……選択肢はいくつかある。


①ギルドの依頼を受ける

オーソドックスだ。昨日もやった選択肢ではある。ここのメリットは依頼を自分で好きなように選べる事。

難点は俺のランクが低いため選べる依頼は1つ。1日★2相当の依頼を1つやれば、暮らす分には余裕が出るくらいなんだが、純粋に金策と考えると微妙。


②騎士団のパトロール任務

やはりメリットは助っ人……ナズナさんの存在だろう。フェアリーの借金を返すために手伝ってもらうには最適の人材だ。

欠点は、強いて言うならパトロールの都合上美味しい獲物とかがいても道を逸れるようなら無視しないといけないことだろうか。巡回中に遭遇したモンスターは向こうから襲ってくるはずなので、倒すのは許されるだろう。


③食材を集める

クロさんに頼まれた食材を集めるものだ。ちんどん獣道の浅層と言っていたから、そこまで難易度自体は高くないだろう。俺に頼んできた以上、特別なスキルだったり難易度の高い食材をという話ではないはずだ。

利点はギルドの依頼より身入りがいい。ギルドの依頼と並行できる。こんな感じか?

難点は依頼の期限が早い。失敗してペナルティが具体的にある訳ではないだろうが……流石に簡単な依頼を何度も失敗したら申し訳なさすぎる。基本依頼に猶予があるギルドの依頼とは勝手が違うからな。


こうして考えると……うーん。

最低限フェアリーは仲間にしたい。そうすればツェルニ先生の借金もほぼチャラ、よし。


まずは依頼を最優先で終わらせよう。

フェアリーもテイムして、★3も倒せるくらいになって……。


「早く強くなって、凛風にも勝てるくらいになりたいな」


その言葉にこくり、と頷く凛風だが、内心それだけで嬉しさに舞い上がっているのが分かる。お気に入りの子が自分を倒すため努力している、なんと素晴らしい!と言った感じか。

武闘派だ……今となっては頼もしいんだけどな。


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