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23話

「ここが……オオサカ……!」


精神的にボロボロな中、ナンバ領オオサカの南門を通過する。

こういった場所でよくある「通行に時間がかかって……」というのはあまりこの世界では見られない。少なくともこの東大陸では、人間同士で争う余裕は未だ無く、また変な武器や、例え暴れさせるためのモンスターを中に入れるより、ハンターや騎士一人一人の方が危険だからというのもある。

勿論悪人が皆無というわけではないが、それは……っと。

オオサカに入った事で俺達乗客は下車し、各自解散となった。

色々教えてくれた先輩方とも別れた。少し寂しいが、これからオオサカで新しい仲間を探すわけだからな。


街を歩いて行くが、ハチマンと比べても人の行き交いが凄まじい。これでまだ祭りの当日ではないのだから、他の領からも人が集まっているのがよく分かる。


ツェルニ先生に手配してもらった宿は「黄金の招き猫亭」。入り口に名前通りの招き猫が置いてあって、非常に分かりやすい。


「はいはーい!いらっしゃい!予約はしてくれてるかな?あいにく満室で……」


入ってきた俺に対応してくれたのは俺より数歳上の女の子。看板娘とかだろうか?


「はい。予約したココノエハルキです。ツェルニという人が予約代行をしてくれてるはずです」


「ふんふん、1ヶ月近く借りてくれてるね!ありがとう!お会計は既にされてるんだけど……伝言があってね」


「え、は、はい……」


「これは借金なので、帰りまでにナンバ領で狩りをして返してください。なお、モンスターをテイムできたら半額とします。また大物を狩れた場合も更に半額とします、だって。君はテイム系のスキル持ってるんだね!珍しいね」


「あはは……ありがとうございます」


提示された金額は高額、などという事はなく、普通に今払い切ることも不可能ではないか?と言った程度。だがそれでは買い物ができなくなる。要するに先生は怠けるなと言いたいのだ……。


「とりあえず、部屋をお願いします」


「はーい!角部屋だよ!ご飯は朝食付きで承ってるけど、いらない日は前日に言ってくれると嬉しいな!」


「はい、ありがとうございます」


「あと……そうそう!テイムしたモンスターは宿泊代取らないけど、他の人を泊める場合は別料金だからね。1部屋2人までなら止められるから」


「はい。何から何までありがとうございます」


「本当に礼儀正しくていい子ね!アタシはヨモギって言うの。ここの受付をやってるから、困った時は言ってね」


「はい」


部屋は窓付きだ。と言っても微妙な位置らしく、道路は見えない。

受付にあった観光パンフレットらしきものを読む……前に、凛風を呼び出す。


「おはよ凛風。ここが1ヶ月くらい俺達が泊まる宿。金の招き猫亭だよ」


こくこくと頷いてくれる凛風と一緒にベッドに腰掛けて、改めてパンフレットを見る。凛風はお札で見えてるのか……?気になるが、読みながらやっていこう。


「オオサカ夏祭りパンフレット……」


期間は3週間後。3日間に渡ってお祭りが行われる。

3日間とも夜に花火がありこれが見所。紙が差し込んであり、「窓から見れないお客様!ウチは屋根から見れます!」との事。どこか1日くらいは屋根に登って見ようか?


それ以外にも色々なイベントがあり、人混みも合わさってどこに行こうか悩む。

「闘技大会」なるものや、「宝物オーディション」もあり、ここ2週間は稼ぎながら情報収集をしていくのがベストか。


地図を見てみれば、ここから数ブロック先がギルドになっている。さてはツェルニ先生、ギルドに近いかどうかでこの宿を選んだな?


手持ちの素材だが……★2や★1の素材が満載。ハチマン〜オオサカ間も狩りまくってたしなあ……。


「とりあえずパンフレットは読んだし、情報収集と行くか」


(こくり)




念のため凛風をヨモギさんに紹介して、チップを渡して色々聞いてみる。

テイムモンスターの手がかりとしては、やはりツェルニ先生が教えてくれた店だが、それ以外にもあるか。その他の情報も色々聞くことができた。


ずっといる訳でもなし、凛風と一緒にお出かけしたくなった俺は、彼女の手を握り引いて行く。

一緒にデートしようと言うと、不思議そうに頷いてついて来てくれた。


街を歩いて行く。

先ほどよりは人がまだ少ない。楽に歩ける程度のまばらさだ。

オオサカの各門入り口辺りは今でも行き交う人で凄まじい人だかりらしいが、この辺りは流石に祭りが本格的に近くならないと混まないようだ。


とりあえず魔石と素材はまだ売らずに取っておいて、貴重な生きたモンスターを手配できる店に行く。

凛風と手を繋いだまま、「モンスターハウス」と書かれた看板を抜けて行く。店名は突っ込み待ちなのか……?


「随分若いガキが来たな。★4以上の腕……ではなさそうだ。紹介状は?」


「あ……はい、これを」


やけに渋い、羽織を着たおじさんがジロリとこちらを見る。紹介状を渡すと、なるほどな、と呟いてこちらを見る。


「お前さんあの"血塗れの金"の紹介か。って事は生徒か……難儀なこったな、紹介状を書かれるほど気に入られてるなんて」


「は、はあ……」


なんか今ヤバいあだ名が聞こえて来たんですけど!?


「いや……まあいい。俺はエンキ、ここの支配人だ。役に立つかは分からんが見ていけ」


エンキさんに着いて行って、モンスター達を見学する……前に、説明を受ける。

基本的にここのモンスター達は人間に協力しようと思っている訳ではない。

捕獲して出れないようにしているだけのモンスター。

専属の調教師が調教して、定期的に調教しなければ従順に従わないモンスター。

その辺りが大部分を占めるらしい。


「前者は大体が闘技場の相手だったり、人材育成の相手にされたりする」


「後者はその手の趣味がある奴のために娼館行きにするか、危ない趣味の奴に売りつけるかだ」


13歳にする話か?

でも言わんとする事は分かった。

俺のサモナーというスキルは、あくまで俺とモンスターが同意する事でそのモンスターを従える事ができる。

俺とエンキさんがモンスターを売り買いして、それでモンスターが俺のものになる事を納得するかというと……あり得ない。


とりあえず今いるモンスターリストと、金額を見てみる。

参考のために金額を見てみれば、やはり全て高めだ。★1……例えば小鬼なんかもあるが、これだけで★2の素材を一つ売り払わなければならない。

現状俺が買える範囲なら、★2が無難、★3がこれから祭りまで頑張ればそこそこ狙える、と言った感じか。

俺のサモナースキルは2。残り契約枠も1しかないため、最初からお金は1匹前提で済む。


「ちょっと話をしてみても?」


「できるならどうぞ」


というわけで、保管庫を見て行く。

モンスターの殆どは静かだ。薬を飲まされているのか、それとも何か呪文をかけられているのか……。

しかしいざ話しかけてみても、全く手応えはなし。


「あのー……俺はサモナーなんですけどー……」


「グルァ!」


「はい、失礼しまーす」



「えっと、俺の従属モンスターにならない?」


「……」


「そっかあ……」



後は話の通じるモンスターでも、条件が受け入れ難く、交渉が決裂した場合もあった。


カタログで見たサキュバスなんかは話せたが、提示条件が1日10発って……死ぬわ!

他の話せるモンスターにしても、そもそも俺は相手より強さで言えば格下になってしまう。どうしても自分より弱い子供に従えと言われて頷くモンスターは少ないだろう。凛風もボロボロになるまでやりあってやっと仮契約だったし。


格下のモンスターか……★1や★2のモンスターでもいいといえばいいんだけど。サモナースキルには従属モンスターをランクアップさせる力があるし……。でも面倒なんだよな、調べてみたけど……。


「ねえねえ、アンタ召喚系スキル持ってんの?何?テイマーとか!テイマーだったらなんと……あたしが仲間になってあげる!」


「え!?」


陽気そうな声が左から聞こえる。

ぼーっと考え事をしていたが、仲間になってあげるという声にぐるりと振り向く。


そこにいたのは……。


「ただし……条件があるからね!このあたしを満足させる条件が!」


小さな透明の羽根。

ふわりとした金髪。

レオタードの様な服装に、白いトレンカらしきものを履いた少女。

彼女のサイズは、辛うじて俺の肩に乗るくらい……つまり。


「フェアリー?」


俺の言葉に、彼女は胸を張って頷いた。


フェアリー。

今手を繋いでいる凛風が★3ユニーク……おおよそ★4〜★5くらいの強さだと考えると、★1のこの子は多分俺でも片手で捻れるレベルの弱さだ。

西大陸のモンスターで、魔法を個体ごとに1〜2種類覚えている。あまり効果は強くなく、群れで行動する事も少ないため初心者でも倒せるらしい。


彼女単体で見れば弱い。俺が戦っている間に殺されてもおかしくないのだが、しかし俺は彼女と契約できるならばしたい。

理由としては2つ。契約モンスターの少なさと、将来性だ。

契約モンスターの少なさにについては言わずもがな。しかも契約できそうなモンスターもそもそも少ない。この機会をふいにして次はいつ契約できるのか?という話である。

次に将来性。俺のサモナースキルでは従属モンスターを進化させる事ができる。これはシーラーやテイマーには見られない特徴で、これ故にサモナーはモンスターを「テイム時の強さ」「最終的な強さ」の2点から見る必要がある……気がする。

凛風は正直分からん。キョンシーの上位種ってなんだ?しかもユニークだから余計分からん事になっている。

一方フェアリーは分かりやすい。有名な派生種はいくらでもあるし、最終的には★7や★8あたりに名前が載っているモンスターもいる事はいる。オベロンとか。いや、それはネームドだったか?


あと可愛い。

将来性なら西大陸のゴブリンなども言えるかもしれないが、ゴブリンなら正直悩んだかも……ごめんゴブリン。


「うん、じゃあ条件を聞かせてくれるかな」


「いいわよ!あたしはね!ビッグでキュートな女になりたいの!サモナーならあたしをランクアップさせてくれるんでしょ?だから……それが条件!」


詳しく聞くと。

要するに、ランクアップをサボらないで欲しい、ランクアップをする時は自分の意見を優先して欲しいという事らしい。


……まあ問題はないか。

まだ手持ちのモンスターが少ない以上、この子がどういう進化をしても使えなくなる事はないだろうし。


「いいよ」


「いいの!やったー!」


ふわふわと上下に舞いながら踊る姿は愛らしい。喜びのダンスを踊った後、さて契約……となりそうだったのだが。


「おいフェアリー。借金は」


「アイエッ!?な、なんの事だか……」


え、なんか不穏な空気になって来たんですけど。エンキさん!?


「こいつはなあ、西大陸から密航してこっちの大陸に来たんだよ。貨物であるモンスターのフリをしてな……」


ガッツがありすぎる……★1のバイタリティではない。


「まあ俺も知恵持ちのモンスター相手だから、働かせるにしても給仕やら仕事を割り振らせて借金を返させるつもりだったが、ここでトンズラするなら話は別だ。闘技場か娼館だな」


「どっちもヤー!」


「えっと、ちなみにどれくらいで……?」


「大陸を渡る船だ。本来はクソ高いが……貨物の値段として値引けばこれくらいだな」


それでも高いんですけど……学生に払えるお金じゃねえ!仕方ない、ここは諦めるか……。


と肩を落とした所で告げられる。


「ま、お前さんも学生だもんな。ここは負けてやる。お前の腕次第で!」


「つまり……そういう事なんですか?」


「ああ、祭りの時期はハンターも忙しくて依頼料が上がる。その分お前さんがある程度雑用を請けてくれるなら、あのフェアリーを寄越す。どうだ?」


「どうだと言われても……俺、そんな強くないですよ」


「そりゃベテランほど期待はしてねえよ。★2くらいは楽に狩れないと話にならんが。それともそこのキョンシーがやってくれんのか?見たところ戦闘できそうにないな」


「あはは……鋭いですね」


「他のモンスターに威嚇されても動いていないからな。護衛行動ができないって事は戦闘もできんのだろう」


という訳で、交渉(真)となった。

依頼は材料の調達。★1〜2の素材が主だが、★3の素材も2点ある。こちらは買って手に入れてもいいが、通常時期の相場までしかエンキさんは金を出さない。要するに損したくなければ狩って来いという訳だ。厳しい……。


しかし不可能ではなくなった。無理なら早めに言えとは言われたが、やれるだけの事はやってみよう。





「モンスターハウス」を抜けて、さらに歩いて回る。

闘技場はエントリー受付中となっていたが、流石に出るのは無謀か。「ジュニア部門」もあったが、年齢的に1個上の学生も出そうだし、モンスターの実力も相応になりそう。異世界、闘技大会と来たら参加したい気持ちはあるんだけど……来年来れたらかな。

オークションは観覧券と参加券が別々にある。参加券もやや高く感じるが買えないほどではない。

しかしこちらも、参加券を高く感じる様な子供が何を競り落とせるのかという話である。目録を見る限り結構豪華なんだけど。スクロールなんて2本もあるし……。これこそ殆どは上位のハンターか、金持ちかが買い占めそうだな。


という所で夜。

ナンバ名物!と書かれたたこ焼きやお好み焼きの屋台で買い、部屋で黙々と食べている。


「オオサカ名物では……?」


これも突っ込んだらダメだったのか?

昨日までの疲れもあり、夜は早めにぐっすりと眠ってしまった。

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