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22話

「ふぅ……お疲れ様です……」


「お疲れさん」


「虹の光」の剣士、マサキさんがニコリと人の良さそうな笑みを浮かべて俺の帰りを迎えてくれた。

今は3日目夕方。現在はナンバ草原という狩場に突っ込む直前だ。


この3日間はかなり疲れた。

戦闘に関してはそこまで辛くなかった。というか、周りがみんな格上で、こちらの実力を超えない様にモンスターを回してくれていた。そんな余裕もあるのかと5人にお礼を言ったくらいだ。

尤も、5人ともそれなり以上の遣い手、俺も同年代の中では相当なので、それゆえにできた事らしい。


「あなたが学校の推薦でこの仕事を請けたとしても、普通の子だったら私もあなたを追い出していたと思うわ」


と苦笑していたのはスズさん。マサキさんの恋人兼相棒だ。


「最低でもこの仕事は、★2を楽々狩れるくらいの実力がないといけないから……そう考えるとハルキ君はギリギリ一人前なんだよ。13歳なのにすごいよ」


という褒め言葉に、他の4人も頷いてたし……。

前も少し話したと思うが、★1や★2と言った各難度のモンスターには、倒す事ができるラインと楽に狩り回れるラインがある。

★1の場合、スキルレベル合計1が前者、スキルレベル合計2が後者。

★2の場合、スキルレベル合計2が前者、スキルレベル合計5、1つ以上3が後者と言われている。

相性や戦術に依る所は多大にあるが、実際に俺は★2との戦闘が楽になってきている。経験によってできた基準は信頼性が高いのだ。


ちなみに一部スキルはこの判断基準をバグらせる事で有名だ。召喚系なんて最たるもので、俺のサモナーは実際スキルレベル2の働きをしていない、0だ。

逆にシーラーのミレイさんは、手持ちのカードを使い潰す勢いで1戦闘だけに集中すれば格上狩りも単独で狙える。


ともかくだ。

俺も先輩達と打ち解け合う事ができて、和やかな雰囲気になってきたのだが、明日到着までにやらなければいけない事がある。

それは……このナンバ行き旅程のビッグイベント(ミレイさん談)、狩場のど真ん中野営である。


「はーい結界張ってー」


「はい」


馬車をまとめて、壁を背にして非戦闘員のお客さん達を誘導する。

このエリア、ちんどん獣道という名前らしいがここを突っ切ればすぐナンバ領の中心、オオサカである。

逆な気がするが突っ込まんぞ……!梅田はどこだよ。


本来なら他の狩場の様に突っ切るべきなのだが、夜に突っ切るには道が危険で横転する可能性があるらしく、かと言って狩場の外で待っていると泊数が増えてコストがかかる……という狂った考えで野営を行うらしい。


作戦は簡単。

今現在馬車を囲む様に、二重の結界が張られている。

1つ目は馬車と非戦闘員を囲む物理結界。もう1つはさらに外側にある魔物避けの結界だ。

魔物避けの結界を広範囲、長時間付けていては結局コストがかかるので、俺たちの準備が出来次第切る。馬鹿?

次に魔物が大量に来る。当たり前だがこれを殲滅する。馬鹿だ……。

朝になるか、大物が引っ掛かればそいつを倒す事で群れが逃げていくこともあるらしい。それで終わりとか。


俺はずっとこれを考えた奴のことを馬鹿だと思っているが、周りの護衛の人達はみんなボーナスタイムだぜ!と喜んでいる。俺も将来ああなるのかな……。


本来ならばパーティー単位で動き、ソロは遊撃で動く。だが俺の実力的に遊撃だと俺が死ぬかもしれないため、「虹の光」のマサキさんとスズさんに拾ってもらい、一緒に動く。ありがとうございます……。


「俺達の方がハルキよか強いのは当たり前だけど、★3ともやり合える強さなら足手まといじゃねえ。そこら辺安心しな」


「はい!」


「いい返事だ。俺達は普段俺が前衛、スズが後衛をしてる。お前にやってもらうのは基本スズの護衛。この数だからな……結界を優先するなら俺が暴れた方がいい。んで、前に出てもらう時もある。刀術3を遊ばせるのもな」


「はい」


「タイミングが分からないと思うから、私が前に出て欲しい時は言うわ。その時はよろしくね」


スズさんのアドバイスにも返事をして、考える。

俺達学生はまだ強くもないんだから隠すものなんてないだろう、ということでスキル全部話していいですよ、なんてツェルニ先生に言われているが、実際にギルドでハンターをやっている人にとって、ハンターの自己申告以上にスキルを探るのはマナー違反だそうだ。

マサキさんは槌術4を、スズさんは回復魔法3と火魔法3を教えてもらった。


「準備いいか!」


後ろから声が聞こえる。

魔物避けが切られ、そして10分ほどして……それらがやってくる。


★1、旧鼠。

10匹ほどが分散しながらこちらに向かってきて、魔法を使うのももったいないのか適当に斬られる。

断末魔に引き寄せられ新たな旧鼠が数を増していき、いつの間にか餓鬼と小鬼が増えてきている。

ここは浅層の真ん中当たり。ここの狩場が平常通りなら★2が出てきて終わりだが、残念ながらここまでの大所帯で来て、ここまで騒いでいる以上中層からもモンスターが来るだろう……!


前衛を抜けて、スズさんに襲い掛かろうとする小鬼を2匹まとめて切り裂く。マサキさんはまだまだ余裕の様だ……前方では見た事ない犬と戦ってるし。特徴からして★2、送り犬か?


観察していると1匹通ってきたので様子を見ながら戦う。

そこまで強くないな。マサキさんに対し4匹で連携している所から、群れで行動すると強いタイプか。単独で戦っている俺はそこまで脅威を感じないし。

噛みついてきた所にファイヤーボールを撃ち込み、悶えている送り犬の首を切り飛ばす。


「ありがとう。その調子なら★3くらいまでは任せていいわね」


「あはは……頑張ります」


まだこちらは会話する余裕もある。

が、また送り犬が。今度は複数なので、流石にスズさんも手伝ってくれる。スズさんのファイヤーアローを真似して、こちらもファイヤーアローを放つ。


俺がレベル2で覚えた火魔法、ファイヤーアローは要するに強化ファイヤーボールだ。魔力の消費が増えた代わりに攻撃力とスピードがやや上がった。飛距離は変わらない。

送り犬に直撃させると、スズさんの当てた方は倒れ、俺の方はふらついている。そこに刀で止めを刺す。

スキルレベルや今まで倒したモンスターからの経験値蓄積で効果の大小も変わる。レベル2違いともなれば流石にこうなるか。


「お、見てみてハルキ君、見える?あれは★4の牛頭鬼だね」


「すごい……!」


巨大な牛の人型。それが巨大な棍棒を振り回しているというのに、護衛の男性らしきハンターはあろう事か棍棒を足場にして牛頭鬼の角を折っている。

怒り狂う牛頭鬼の攻撃はハンターに掠りもせず、逆に牛頭鬼の傷は増えて行く。


「実力差がありすぎるけど流石に牛頭鬼はでっかいからね、もう少しかかるんじゃないかな」


そう話していたその時、牛頭鬼の後ろからさらにもう一体巨体が現れる。馬面にノコギリの様な得物……前世ではよくセットになっていたから現れるのも当然なのか?


「馬頭鬼まで現れた?それでも勝てると思うけど、雑魚が結構キツくなってきたね……ごめん、10分はかからないと思うから、マサキの援護行ってくれる?怪我したら引いてね!」


「分かりました!」


地獄の獄卒と言われたモンスター達がハンターと戦う中、俺もマサキさんの元に駆け寄る。

ずっと戦闘に集中していたからか、俺のファイヤーアローは化け猫を貫く。

味方が一体やられた事により浮足だったモンスター達を、マサキさんは一気にハンマーを振り回し片付けていく。


「ナイスタイミング!いいね、助かったよ!」


「ありがとうございま……!」


一気に空いた穴を埋めようとしたのか、1匹の大きな熊が現れる。周りの餓鬼を引き裂きながら、俺達に近寄ってくる!


「鬼熊だ!アローで援護を!」


「はい!ファイヤーアロー!」


指示通り、魔法を3発ほど放つ。

1発をその鋭い爪で弾いたが、2発目と3発目が当たり、やや傷つき後退する。


見た目から思っていたがやっぱり★3以上だ……。

そこにハンマーが突き刺さる。同時にファイヤーボールが連続して20個近く鬼熊の顔面に叩き込まれる。スズさんだ!


ファイヤーボールといえど20発も顔面に受ければ普通は苦しむ。

その隙を狙いマサキさんは力を溜め……鬼熊をかち上げる!


グロッキー状態になった鬼熊に、スズさんがファイヤーアローを何本も出し射出。

空中で鬼熊は爆散し、素材と魔石になっていった。




「よし、お疲れみんな!あとは緊急事態にならない限り護衛チームが見張るから、ゆっくりしてくれ」


特割乗車券組である俺達もそう言われて、馬車の荷車に突っ伏す。

いや、顔を上げれば突っ伏してるのは俺だけだ……。


「ナイスだったぞハルキ君。やっぱ養成校の生徒はガッツがあるな」


と朗らかに笑うマサキさん。

残りの4人も頑張ったね、とかオオサカ楽しんでね、とか声をかけてくれる。

完全にひよっこを見る優しい目なのだが、実際そうだしな……。

でも、数日間せっかく仲良くなったのに、ここでお別れなのは寂しいかもしれない。

そう伝えると、彼らは今度こそ面白そうに笑った。


「次は俺と肩を並べるくらいになっててくれよ!楽しみにしてるぜ」


マサキさんがそう言って俺の肩を叩く。


「私達三本の剣は祭りが終わってしばらくはオウミ領にいるから、困ったらおいで。でも先生は呼ばないでね」


ミレイさんが最後だけ真顔で言う。


こうして疲労困憊にはなっているものの、尊敬できる先輩達と狩りができたのはとてもいい夏休みの財産かもしれない。

しれないがツェルニ先生には、帰ったら文句を言おうと思う。

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