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2話

「ハル!早く来いよ!」


「ちょっと、分かったから大丈夫だって」


前方で急かすクラスメイト、ユウタロウに『俺』……ハルキは答えながら学校に向かう。


『俺』は転生した。あの神と名乗った女性の力によって。

今いる場所は東大陸。転生後の世界では、東西に大陸が二つ。それを挟む様にして広い海があるらしい。

そして産まれたのは大陸の南西、オウミ領の南端。近江と聞けば滋賀だろうと思うかもしれないが、別にこの南が伊賀や伊勢(三重)という訳でもない様だ。


転生した当初、はっきりと物心がついたのは2歳頃だったらしい。父親曰く、ぽやぽやとした子だったとか……まあぽやぽやというかなんというか。まだはっきりと物心がついていなかったというか。


初めは『名を世界に刻む』なんて言われても何の事か分からなかった。情報を収集しようと父親にいろいろ聞いたり、友達と村を駆け回ったりしたが、今は何となく理解している。剣と魔法のファンタジー世界と言われたように、この世界ではモンスターの脅威が日常茶飯事となっている。それを倒す職業になろうというのが今のところの俺の目的だ。

とりあえず、今のところは村の寺子屋に通っている。俺は次の3月で卒業だ。


子供を年ごとに細かくクラス分けする……ほどではないものの、それでもうちの寺子屋ではおおよそ100名ほどの生徒がいる。これでも領内の村の中では大きな方らしい。

その中でも、俺を含めた15名ほどの生徒たちが別室に集められ、アシハラ先生の授業を受ける。


「はい、みんなよく聞け。お前たち最高学年は、明日から街の南にある森で演習をする。それにあたって今日は1日復習だ。死んだらいけないからな」


「「「はい!」」」


「よし、じゃあまず授業からだ。おい、嫌そうな顔をするな」


先生は順に、俺たちに質問を当てて行く。


「明日狩るモンスターは?」


「餓鬼です!」


モンスター、餓鬼。

異世界転生の常としてか……この世界には当たり前のようにモンスターや魔法、スキルといった要素が存在する。

それを狩るのがハンターと騎士で、俺はそのうちのハンターになろうと思っている。

理由は簡単。それ以外の成り上がり方がほぼないからだ。他に転生者がいた訳ではなさそうなのに、技術はモンスター素材や魔法のお陰で現代日本の水準以上のものを保てる。料理も地球の料理は大体既にある。というか、なくても細かい作り方なんて分かるわけがない。


それに何より、俺のスキルもあからさまに戦闘向けだからだ。


座学が終わり、アシハラ先生に連れられて庭にある半透明の板を見る。


「順番にスキルボードを触れ。全員自分のスキルは既に知っていると思うが、忘れないように」


俺がそれに手を振れると、頭の中に文字列が浮かび上がる。


ココノエ ハルキ

●転生者

刀術1


これが俺のスキルということになる。

「転生者」は複合スキル。これが特典というやつだろう。今まで誰もこのスキルについて言及しなかったことから、●が付いているものは人には見えないし見せる事もできない様だ。

刀術はそのまま、刀を使った立ち回りが上手くなる。といっても、1とあるように最弱。最低限の動きという訳だ。

スキルは才能でもあり、努力で手に入るものでもあり、そして神からの贈り物でもあるとされている。


俺の「転生者」というスキルは間違いなく神からの贈り物だし、刀術もそれに併せて手に入れたものだが、毎日刀の練習をしていれば同じように刀術が手に入っていた可能性もある。

他にも色々な入手の仕方があるが、それは置いておいて。


「はっ!おりゃ!」


元気よく大きな木刀を振るユウタロウは、大太刀術1を持っている。

隣の女の子は弓を構えている事から弓術1、その隣は槍だから多分槍術1だ。

大体の人間は生まれた時から10歳くらいまでに、何かしらのスキルを1〜3個ほど手に入れる。0は存在しない。4以上は……本当に稀にいるらしいが、こちらもまずいない。


先生以外はみんな実戦経験がないはずだが、殆どの生徒はまともに動けている。一部動きが悪い子もいるが、自分のスキルに合う武器がなかったのか、非戦闘系のスキルを貰ったかになる。


「よーし、そこまで。じゃあ今日は早めに帰っていいぞ。明日は初の実戦だから、夜更かしせずに準備するんだぞ」


はーい、と声をあげて、生徒たちが荷物をまとめて寺子屋から出て行く。


「ハルキ、明日は何匹モンスターを倒せると思う!?俺は100匹は行ける!」


「え?無理でしょ」


「はー!?お前分かってねーな!俺のスキル大太刀術は強い!ってか大太刀がデカくてつええ!1回振ったらガキ10匹はやれるから、10回振ったら俺は伝説だぜ!」


「はいはい……明日は頑張ろうね」


「おう、じゃあな!」


元気なユウタロウと別れ、家に着く。

先に片付け、お風呂などを済ませて晩ご飯の準備に入った頃、ただいまーという父の声が聞こえる。


「おかえり、父さん」


「おう、ただいまハルキ」


この枯れたおじさんみたいな優男が、俺の父親ということになる。ココノエ イブキ。村の自警団をしている。

この辺りには結構な数の村が点在しており、オウミ領の騎士団が守護している。が、常にその手が回るわけではない。自警団は騎士団が来るまでの抑えというわけだ。


「明日はお前の初陣だろ?親として一緒に準備手伝ってやろっかなぁって」


「大丈夫だって、子供じゃ……子供だ」


「子供だろ。12は。その年で大人ぶりたいなら、鬼くらいは倒せるようにならなきゃな」


「んな無茶な……」


そんな会話をしつつ、明日の持ち物を点検。

武器、これは刀だ。安物だが地球の刀と違い、最下級のモンスター数体程度なら切っても問題ない。

防具、モンスター素材を使った鎧だ。急所にのみやや頑強な素材を使っているが、殆どは餓鬼レベルの攻撃を想定した最下級の防具。

これらは父さんが用意してくれたものだ。あんまり高級品を与えちまうと、変な癖がついて死ぬかもしれんとかなんとか。

ここら辺は本当に家庭によるらしく、貧乏な家庭が見栄のために高級品を揃えてくることもあれば豪商の息子が武器一つで実習に来たこともあるそうだ。それが周りにどう見られるかは置いておいて。


「ほら、準備したら寝る!明日なにかあっても知らんぞ」


「大丈夫だよ、ほんと、おやすみ」


微妙に分かりにくい心配をしてくれる今世の父親にむず痒さを感じながら、俺は眠りについた。

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