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18話

さて、6月もそろそろ終わりである。

凛風をテイムしてから20日以上経った訳だが、基本的には出さない方がいい、とのツェルニ先生からのアドバイスを受けて、殆どクラスメイトやギルドでは出していない。


モンスターやキョンシーが悪く見られる……とかではなく、逆だ。いざという時にユニークモンスターを使役している人間として、不相応な依頼に連れて行かれたり頼られたりしたくはないですよね〜?との事。前世に比べて力あるハンターに対する尊敬は根強く、それ故に実力以上に頼られる事も増えトラブルが増えるとか。

凛風の事は戦友としても、女の子としても情が湧いてしまっているので、寂しくならない様部屋だったり狩場の誰もいない場所だったりで一緒にしたりコミュニケーションを取ったりはしている。早く勝負して勝たないとな……。


凛風とは別にもう一つの悩みだが、夏休みはナンバ領に向かう事にした。故郷の村からハチマンに移動するのとは訳が違うので、手紙を父さんに出して確認を取っている。ついでに近況も書いた。

ナンバ領で行われる祭りについてはまだ調べていないが、先生曰くお金をできるだけ稼いでおいてくださいとの事で、今日もリハビリを兼ねて1人で狩場に向かっている。


昨日まではほぼ旧鼠や餓鬼といった★1モンスター相手に身体の動きや火魔法を確かめていたので、今日はそろそろ★2を倒して宿題を完遂させたい。

そんな訳で来たのは妖怪の山。

1人という事、リハビリ後という事もあり、浅層の中でも入口付近に出てくるはぐれ気味の★2を探す。

獄門街と悩んだが、あそこは浅層ほぼコンシーしか出ないし★1は死体粉しか落とさないし……。


「ん?あれは……!」


俺よりやや小さいくらいの背丈で、修行僧の様な服に真っ黒な羽根!★2、木の葉天狗か!

ツェルニ先生にテイム候補としておすすめされたモンスターの一体。話ができる個体もそこそこいるらしいが……。


「試してみるか……?」


そいつの前に出て、話をしようとする。


「なあ!そこの木の葉天狗……!」


案の定、衝撃波が襲いかかってくる。

風の衝撃波自体は目には見えないが、木の葉天狗が扇を振るう動きが分かりやすいから避けるのは楽だ。


「やっぱ、うぉっ!話が通じない、かっ!?」


サモナーのスキルも全く反応しない。では君はお祈りという事で……この場合お祈りされたのは俺か?


「ファイヤーボール!」


火魔法を唱え、左手で照準を合わせる。上気味に放った火の玉を木の葉天狗は避けるが、上に魔法を放ったお陰で下方向に回避してくれている。

高度が下がった相手なら、これくらい……!


飛び上がり、驚いた様子の天狗に刀で切り付ける。

致命傷にはならなかったものの、浅く翼を切り付けて飛行のバランスを一気に崩す。


あとは流れ作業の様に木の葉天狗を討伐し、一息つけた。

魔石と素材を回収しながら、火魔法について考える。これがなければ、前回と同じ様に刀を投げつけるしかなかった。一応購買に投擲用のナイフや弓矢も売っているがどちらも高いし、追尾機能のある札等はスキルで作られるため、あっても駆け出しの俺に手が出る値段ではない。

木の葉天狗の様な低空飛行しかできないモンスターでも飛行は飛行。そういった相手に対して対策が取れる様になったのは大きな一歩だと思う。

前戦った火鳥の様なモンスターには火魔法はほぼ通じないだろうが、物理が通じないモンスターもいるらしいし、そこはまた別の対策を練れる様にしないといけないか。


反省をしながらも学事に戻り、3個目の魔石を提出する。

鑑定用のアイテムを持った学事の人に確認してもらい、説明を受ける。


「はい、ではココノエハルキ君ですね。おめでとうございます。1年1学期の課題達成です」


「はい!ありがとうございます!」


夏休みが7月下旬から始まるので、実質あとタイムリミットは20日程度となる。ほとんどの生徒達は終わっているが、終わっていない生徒は大体二択。

俺やミユキさんみたいなとにかく自己強化を優先したり、あとはギルドの依頼を優先しすぎているやつとか。ここら辺は大抵既に★2のストックがあるので、万が一大怪我をしたとしても提出用に魔石を回す事は可能なのだろう。

では翻って、クラスに5人ちょいくらいいる、おそらく退学になるだろう者達はといえば。

焦りはとっくに絶望に変わっており、ツェルニ先生の授業では魂が抜けたかの様に座っている者、毎晩ブツブツとつぶやいては帰ってくる者、うーん……地獄絵図だ。

せっかくなので目の前の学事の人に聞いてみたが、別にツェルニ先生が他の先生や他の領の学校に比べて特別厳しい訳ではないらしい。全ての領である程度の基準が定められている様だ。

例えば、最初の半年までに生徒は単独かつ自力で★2を狩れるようにしなければいけないとか。それならば納得……?


「いや厳しくないですか!?半分になってますよね!?」


「それはですね〜」


「うわっ!?」


後ろに、いつの間にか立っていたのはツェルニ先生。若干傷ついた様な表情をしていたので、謝って続きを促す。


「どうしても半年だと〜、2学期から生徒達に教えたいカリキュラムが間に合わなくて〜。あと〜スキル2つなら3ヶ月もあれば倒せて当然なので〜」


さらっと修羅な事を……。


「3つにしたのはまぐれ当たりを無くす事で〜、代わりに私は授業でヒントをいっぱいあげましたからできて欲しかったですね〜、あれくらいは」


「まあ例年脱落も10人くらいなので、なんとかなる厳しさですよ〜」


本当に緩い所はお膳立てをしながら★2を倒させるらしく、確かにそれよりはよほどツェルニ先生の授業とやり方の方が役に立った。

それを言うと、本当に嬉しそうにハルキ君には期待してますからね〜と撫でて去っていった。一体何を……?


不思議そうな顔をしていると、学事の人がポケットを指差す。

「紹介状」と達筆で書かれた書類が入っている……。封筒に入ってなくていいのか?


「ツェルニ先生のお気に入りになっているみたいですが……無事に卒業出来ることを祈っています」


「なんですかそれは!?」


「ツェルニ先生、見込みがある生徒に厳しい試練を課す事があって……」


先生の授業を受けてきたから分かるが、あの先生はギリギリを越えさせる事を好んでいる節がある。多分凛風と戦った件で目をつけられたのか………?


大成するか大怪我で再起不能になる事が多いらしく……早急に凛風を使役できる様になりたい。いや、使役できたらそれはそれでハードルを上げられそう……。


…………。

……。

考えないことにしよう。


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