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14話

頭の中で情報を思い起こす。

この獄門街中層はその名の通り街になっていて、白鳥花はその中でも中間地点のような場所に多く咲いているらしい。


ここは入り口付近だから、もう少し進まなければいけないだろう。

建物を遮蔽物にしながら歩いて行く。

浅層と違って隠れる場所があるというのは楽だが、同時に細かく確認しないと奇襲される可能性が高まるという事でもある。

先ほども家から化け骨が5体程現れて、背後から襲いかかって来た。やむなくミユキさんが小筒で殴って時間稼ぎをしていたが、鉄砲って精密機械じゃないのか……?


そう思ってるうちにコンシーが2体。左右から挟み撃ちにする様にして俺に襲い掛かる。

焦らず1歩下がって片方に集中し、俺が左に出た時点で右のコンシーに遅延札が当たる。

微妙にタイミングをずらされた事でコンシー達は衝突し、隙を見て1体の首を切る。


「コンシーだけならまだ何とかなるな……」


「ですね」


コンシーの素材と魔石を回収する。

流石に中層ともなると、出てくるモンスターもバラエティに富んでくる。

首三つが並んで襲いかかってくる舞首。★1だが数体いるだけで危険度はコンシーを上回る。3体いるだけで首は9個だからな……。

どこにでもいる餓鬼。

★2では以前戦った一つ目小僧。倒しただけでもこれくらいか。

★3以上の敵は、出来る限り避ける。★2でも避けれる相手は避けているが、やはり危険度が違う。

車輪に顔のついたモンスター輪入道。

白いコートのマスクを被った女性。口裂け女。

どちらも多分、戦えば勝てる……と思うのだが、そこに他のモンスターが来ただけで一気に危なくなる。慎重に、見つかった場合も遅延札を使って逃げている。


そうして進む事……1時間くらいだろうか?浅層と違い慎重に進んでいるためそこまで奥に行けてはいないが、中層の辺りに来れてもおかしくない時間ではなかろうか。

この獄門街は層毎に景色が変わるが、流石に中層の中部はこの様な見た目で……などと詳しくは分からない。霧が立ち込めている事もあって、方向と来た道を覚えておくだけで精一杯だ。


「そうですね。この辺りの家を1軒ずつ探してみましょう。敵がいない事を祈りながら……」


ミユキさんに提案すれば、探索しようとの声が。花と言ってもこの世界はゲームじみた所がある。建物の中で花が生えていたり、宝箱の中に摘みたての花があっても不自然ではないらしい。


「明らかに……怪しいのはあそこだよね」


五重塔の様な建物。

元オタクとしては、一階ごとに敵が出てくるのかとか、ボスがいるのかとか思ってしまいはする。が、あんないかにも危険な敵がいますと言わんばかりの場所は避けるべきだ。実力の伴ってない今は特に。


「そうですね……白鳥花があるかどうかはともかく、何かしらあってもおかしくはないと思います。間違いなく敵もいるでしょうが」


「だよね〜……行くにしても後回しにしようか」


「はい」


そんな事を話しつつ家を何軒か漁る。

2軒目までは敵なし、戦利品なし。

3軒目は一つ目小僧、戦利品なし。

4軒目は………。


「あれは……!?」


遠目からでも分かる真っ白な花。

間違いない、あれが白鳥花だ!


「………そうですね、その前にこれ見よがしに立っているキョンシーが………いなければ。動く様子もなさそうですね」


手を前に突き出した様なポーズをしているから遠目からでもよく分かる。

★3モンスター、キョンシー。

前戦ったあのユニークに比べて服装もどこか簡素なものだし、威圧感の様なものもさほど感じられない。


やれる。駆け出しだが、ハンターとしての勘がそう言っている。


「ミユキさん……やろう」


こくり、と彼女が頷き、遅延札を構える。


「私が前に出ます。カバーをお願いします」


ミユキさんの後ろに付け……2人で走って距離をつめる。

キョンシーが初撃で襲いかかってくるのは当然、前にいるミユキさん。彼女は札を手にして、キョンシーに投げつける。自分から突っ込んで来たのだ。今更避けられる訳がない。

遅延札が直撃したキョンシーを確認すると同時に、くるりとお互いに前後を入れ替える。


ミユキさんの砲弾はない。なるべく他の敵に気付かれない様にするため、静かに、そして手早くっ!


キョンシーの攻撃をしっかりと見ながら、隙をついて斬撃を入れて行く。

拳を突き出して来た後に。

回し蹴りの後に。

少しずつ、しかしこちらは無傷で確実にキョンシーに傷が増えて行く。


こいつ、弱い……!

今までの★2よりは確実に強い。強いが、あのユニークにあった技術が、強烈なまでの戦意がない!

ある意味で、あのユニークに鍛えられたとも言えるのは皮肉か。どうしてもあれと比べると格が落ちる。


こいつも倒せなくて……!


「あれが届くかよ……!」


相手のストレートを前に踏み込みながら避けて、その首を落とす。

死体系と言えど首を落とせば動けない。

キョンシーの体がゆっくりと倒れる姿を見て、俺は息を吐いた。


「すごいです!ハルキ君!」


感極まった様に駆け寄り、慌てて口を手で押さえるミユキさん。

彼女からすれば、俺が1人で倒した様にも見えるのかもしれないが、最初の遅延札はかなりの効果があった。自分と動きが同等以上の相手だと目に見えて動きやすさが違うと伝えると、ホッとしている様だった。


「それじゃあ、白鳥花を摘んで‥‥戻りましょう。後は帰るだけです」


「うん」


あの大きな建物が気になるが、挑戦するならまだずっと先の話になるだろう。

なるべく気付かれない様に注意しつつ、中層を戻って行く。

幸いな事に★1かコンシーばかりで、さほど体力を消耗せずに中層の入り口、門に辿り着くことはできた。

そう、辿り着くことは。


「なるほど……そこで待ってたって訳か?やっぱ頭いいなお前」


「……」


散々に俺を苦しめてくれたそいつは、無表情のまま、俺にくい、と指を曲げて挑発して来た。

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