プロローグ 二度目の死
なんだか、水の中にいるようだ。
夢でも見ているのだろうか。
目の前には広い空が広がっている。
ああ、なんて綺麗なのだろうか。
下には雲の海が漂っている。
あの中に潜ったらどうなるのだろうか。
僕は何をしにここへ来たのだろう。
あまり記憶がない。
とてつもなく長い時間ここにいたような気もする。
つまらないなあ。
そもそも僕は一度死んだはずなのだ。死因は自殺だ。
僕は父親からの虐待を受けていた。
「兄に比べてお前はなぜそこまで出来損ないなのだ。」
これが父の口癖だった。実際兄は僕の数倍は賢く、学校の成績もすべてトップだった。
それに対して僕は学校の成績はおろか、いじめさえ受けるようなよわよわ人間だった。
完璧な出来損ないだったのだ。
でもそんな僕をかばってくれたのも兄だった。
僕をかばっては父と殴り合いをしていた。ヒーローだと思った。
でもその光景を見るのが苦しくもあった。僕さえいなければ仲が良かっただろう二人が目の前でけんかをしているのが耐えられなかった。だから死んだ。
つまるところ、ここは三途の川だということか。わからないけれど、とても神々しい世界が広がっている。間違いない。天国では、僕も幸せになれるのだろうか。
ん?なんだろうか。向こうから鉛筆のようなものが見える。
久しく鉛筆など見ていない。なぜなら学校なんて行ってなかったからな。当然だ。
それにしてもなぜこの世界に鉛筆があるのだろう。しかもこっちに向かってくる。
気づいたら他にも四方から鉛筆が飛んできた。6,7本はある。しかもかなりでかい鉛筆だ。これらは僕をめがけて飛んできた。一瞬だった。気づいたときには僕の記憶が途切れていた。
次に起きたとき、目の前には一人の少女と爺さんがいた。