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54:魔王と■■の交わる真昼



「王族が黒髪の人間の子供だなんて、とんでもないスキャンダルだろ。シラを切ってもよかったんだぜ?」


「うるさい黙れ。聞いてきたのは貴様だろうが」


 ベッドの上で膝を抱えるスクルド。

 俺のほうを見ないまま、一言。


「――もう、母の存在を否定し続けるのは嫌なんだよ。いい人であるなら、なおさらな……」


 ……そう呟いたスクルドの瞳は、酷く乾いているように見えた。

 生みの親を黒歴史としなければいけない人生。それはどれほど辛いものであるのだろうか。

 苦悩する金髪の王子を前に、俺は思わず頭を下げる。


「すまない、スクルド。俺はきっと……お前の理想を台無しにしてしまったんだな」


 今ならばよくわかる。

 どうして彼が王子であるにも関わらず、危険を冒してまで国中のトラブル解決に携わり続けたか。

 彼がぽつりと漏らした、黒髪の人間を庇うような発言の意味が。

 決着の瞬間に叫んだ、“『あの人』のためにも、こんなところで死ねないんだ”という言葉に込められた想いが……痛いほどによくわかる。


「スクルド。お前は騎士たちから、人気取りに必死だと揶揄されてでも……この国の王になりたかったんだな?

 いつの日か、母親が安心して暮らせる国を作るために……!」


「ッ、うぅ……っ!」


 地下牢に響く呻き声。

 スクルドは両目に涙を溜めると、こちらを鋭く睨みつけてきた……!


「ああ――あぁそうだよッ! 私はいつか王となり、母様のことを救いたかったッ!

 父王陛下の隠し部屋でずっと飼われ続けている彼女を、日の光の下で歩かせたかったっ!」


 感情のままに叫ぶスクルド。

 殺意と悲哀に満ちた言葉を、俺は黙って受け止め続ける。


「母様のためならば、お前たち黒髪の者をついでに救い上げてやってもよかった!

 少しずつ、少しずつ、お前たちへの束縛を緩め、あらゆる手を尽くして差別意識を薄れさせてやってもよかった! 黒髪の者が平和に暮らせる特別区域を作ってやってもよかったんだ! そこでなら母様も落ち着いて過ごせただろう!

 なぁわかるかエレン・アークスッ!? お前が立ち上がらなくっても、黒髪の者は私が救う運命だったんだよォオーーッ!」


 雪崩のごとく降り注ぐ怒号。

 胸の中にある全ての怒りを吐き出すような叫び。

 その全部を俺へとぶつけ……やがてスクルドは、息を切らしながら膝に顔を埋めた。

 掛けられたシーツが、嗚咽と共に濡れていく。


「うぅ……それが私の理想だったのに……もう終わりだよ。

 敵の虜囚となるなど、一生の恥だ。もう王になんてなれやしない。ただでさえ私の出生の秘密が、『誰か』によって噂として流されているのに……全部全部、終わりだよぉ……!」


 絶望感に満ち溢れた声で、彼はグズグズと泣き喚く。

 もはやそこに、かつての高慢で自信に溢れた姿はあらず。

 今の王子は、心の弱ったただの女子供のようだった。


「スクルド……」


 俺は、そんな彼にそっと手を伸ばし――。


「俺が言うのもなんだが……諦めてんじゃねぇええー-----ッ!」


 その白い額に、思いっきりデコピンをブチ込んでやるッ!


「ってアイタァーーーーーーッ!? なっ、貴様なにをッ!?」


 真っ赤になったデコを押さえてこちらを睨んでくるスクルド。

 俺は「うるせぇッ!」と一喝し、彼のシャツの胸元を掴み上げたッ!


「ぐぅ……!?」


「もう終わりだと!? 全部終わりだと!? ふざけんなアホ王子ッ! 何も終わってねぇだろうが! 冷静にテメェの理想とやらを考え直してみろッ!」


「か、考え直す……!?」


 目をぱちくりとするスクルドに、「あぁそうだ」と俺は頷く。


「お前の理想は、あくまでも『母親を救う』ことなんだろう?

 国王になることなんて、ただの手段に過ぎないじゃねえかよ。ソレが駄目になったくらいで絶望してんじゃねえッ!」


「ッ、それ、は……!」


「だったらッ!」


 俺はさらにスクルドを掴み上げ、顔を真正面に近づける!

 彼のシャツの繊維が破れそうなのか“ブチブチッ”という音がしたが、今は無視だ。


「だったらスクルド! この俺に――『魔王』の下に服従しろ! 共に戦う騎士となれッ!

 俺の理想は『差別のない国』を作ることだ。その過程で、黒髪の人間も全員救って見せる。無論、お前の母親もだ!」


「なっ……!?」


 大きく揺れる青い瞳。

 そんな馬鹿なと、第一王子は呆然と呟く。


「何を、言ってるんだ……! 私の頭を見てみろっ、金髪だぞ!?

 貴様にとって、黒髪の人間と魔物以外は全て敵のはずじゃ……っ!」


「ンなわけあるか。それじゃあコッチが差別主義者になっちまうじゃねーか」


 アホな勘違いをしている王子にもう一発デコピンを食らわせる。

 そんなくだらない矛盾をするわけあるか。


「俺がぶっ飛ばすと決めているのは、あくまでも理不尽に誰かを苦しめるヤツだけだ。

 ゆえにスクルド。黒髪の者はもちろん、魔物とだって仲良くしてくれると誓うなら、お前のことも喜んで助けてやるぜ?」


「っ……エレン……」


 ニッと笑う俺と、静かに目を見開くスクルド。

 彼の綺麗な碧眼に、初めて敵意以外の光を感じた。


「それで、返答はどうなんだよ王子様。俺の仲間になるのかならないのか、どっちなんだ? 男らしくはっきり言えっての」


「あ、あぁ……もちろん……!」


 ――かくして、スクルドが頷いてくれようとした……その時。

 ブチブチブチッという音が、彼のシャツの『下』から起こった……!


 そして、ばいんッ――と!


「えっ……スクルドさん、コレは……!?」


「なっ、なぁああああああああぁああああぁー------ッ!?」


 顔を真っ赤にする美貌の王子。そして俺の目の前には、やわらかく突き出たスクルドの胸部が。

 魔人たちよりは控え目なサイズだが、コレはたしかに……。


「あっ、あぁー……コレは、アレだなッ! 急成長したってことだよなッ!」


「って違うわアホぉ! キサマわかってるだろうがーーーッ!」


 スクルド王子――あらため『スクルド姫』の甲高い声が、魔城の地下に響き渡ったのだった……!




『面白い』『更新早くしろ』『止まるんじゃねぇぞ』『死んでもエタるな』『こんな展開が見たい!!!』『これなんやねん!』『こんなキャラ出せ!』


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― 新着の感想 ―
[一言] そうきたかァー!
[一言] あ~ やつぱり (∧∧;)
[良い点] 今話もありがとうございます! >顔を真っ赤にする美貌の王子。そして俺の目の前には、やわらかく突き出たスクルドの胸部が。 >魔人たちよりは控え目なサイズだが、コレはたしかに……。 古典的…
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