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41:激闘の始まり




『すまんエレン、進化したわたし強すぎて騎士たちみんな倒してしまった……』


 ――シルからそんなテレパシーが飛んできた時には、思わず反応に困ってしまった。

 彼女に頼んだのはあくまで攪乱かくらん工作。怪我しない程度に敵にちょっかいをかけたら、即座に退いてくれという内容だ。


「(そうしたら、あとは俺たち主力部隊が城の前で迎え撃つって策だったんだが……)」


 だがしかし……一人ぼっちで城の前に来た王子様を見て苦笑する。

 まさか、退けと命じた『即座』の内に騎士団を全滅させるとは思わなかった。

 これが魔人の力ってわけか。森の中で奇襲しやすかったというのもあるのだろうが、それにしても強すぎる。


「(まぁ怪我もなく敵を追い込めたのならそれでいいか。さて、あとは……)」


 一人残されたスクルド王子とやらに向かい、俺は一歩踏み出した。

 美麗な王子様の横顔に冷や汗が流れる。


「ッ、おい黒髪の人間……これは一体どういうことだッ!?  背後にいる魔物の群れは、貴様の下僕なのか!?」


「下僕じゃねえよ。みんな俺の大切な家族だ」


 的外れなスクルドの言葉を否定する。

 ……シル曰く、一角獣の魔物『ユニコーン』たちを酷く扱っていたというお前らと一緒にするなよ。


「俺の名はエレン・アークス。人間たちから虐げられる魔物たちの居場所を作るため、『魔王』になろうと誓った者だ」


「な……魔王だとッ!? 要するに貴様、黒髪のゴミの分際で人間社会に歯向かおうというわけかッ!? 森の異変もまさか貴様がっ!?」


 ユニコーンから飛び降りるスクルド王子。

 彼は黄金の剣を腰から抜くと、鋭い切っ先を俺へと向けてきた。


『アイツ、エレンに剣をッ!』『ぶっ殺してやるゴブ!』『みんなでエレンをッ、魔王様を守れーッ!』


 途端に騒ぎ出す魔物たち。

 だが、俺はそんな彼らを後ろ手で制すると、スクルドと一対一で向かい合う。


「……なんだ貴様、どういうつもりだ。まさかタイマンを張って、魔物どもなんぞにいいところを見せたいとでも?」


「あぁその通りだ。お前と一緒だよ、スクルド。

 銀狼の魔人・シル……お前の配下を全滅させた女の子を通して、騎士たちの話を聞かせてもらったぜ。

 お前、よからぬ噂を払しょくするために好感度稼ぎに励んでいるんだってな?」


「ッ……騎士連中、そんな話をしていたのか……」


 怒りで表情を歪めるスクルド。

 彼は騎士たちの死体が散らばったほうを一瞥すると、再び俺を睨みつけてきた。


「フンッ、何が一緒だ! 私はいずれ国王になる者として、民に好かれようとしているだけだ。お前のような人間社会の底辺の黒髪野郎に、私の気持ちがわかるかよッ!」


「いいやわかるぜ。……ご覧の通り、俺には大切な仲間たちが山ほどいてな。こいつらからもっと好かれるためなら、多少の無理はしてやるさ」


 背後の仲間たちに見せつけるように、俺は黒剣を引き抜いた。

 その柄を強く握った瞬間、身体強化の魔宝具『黒曜剣グラム』の力が俺の全身にほとばしる。


「さぁ、やろうぜスクルド王子ッ! 次期王様と二代目魔王の、メンツをかけた戦いをなッ!」


「調子に乗るなァアアーーーッ!」


 足元より爆風を放ち、空を駆けるように斬りかかってくるスクルド。

 俺もまた地面が砕けるほどに踏み込むと、ヤツに向かっていくのだった――!



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