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39:呪縛の脅威



「――ス、スクルド王子。間違っても瘴気をお吸いにならないように。魂が穢れて廃人になりますぞ……!」


「フン、舐めるな騎士団長。私を誰だと思っている」


 多くの騎士たちを従え、スクルド・フォン・ニダヴェリールは銀狼の森へとたどり着いた。

 猛毒の瘴気が壁のように森を覆っていたが問題ない。スクルド王子は配下たちへと見せつけるように、その手に執られた黄金の剣を振り上げる。


「我こそは、ニダヴェリール王国が第一王子にして宮廷魔術師に選ばれし大天才・スクルドなりッ! 我が魔宝具『激成剣レヴィル』よ、我に宿りし力を高めよッ!」


 その瞬間、スクルドの全身より新緑の魔力がゴウと音を立てて溢れ出した。

 これこそが彼の魔宝具『激成剣レヴィル』の能力だ。

 持ち主の魔力を爆発的に増大させ、一点より放つことが出来るのである。


「汚らわしき瘴気よ、私の前から消え去るがいいッ! バニシング・ストリームッ!」


 苛烈一閃。

 スクルドが剣を振るうのと同時に、刀身から魔の大旋風が巻き起こった――!

 瘴気の壁に大穴が開き、囲われていた銀狼の森が露わとなる。


「さ、流石は王子ッ! 素晴らしき風魔法の腕前ッ!」


「フン、世辞はいい。……それよりも見てみろ騎士団長。森の中心部に、見たこともない城が建っているぞ」


「おぉたしかに……! アレが瘴気を放っていた原因というわけですかな……?」


「さてな。――では、行くとしようか騎士たちよッ! 役立った者には好きなだけ褒美をやろうッ!」


『オォオオオオオーーーーッ!』


 森へと響く配下たちの雄叫び。

 士気高揚な騎士団と共に、王子スクルドは進撃を始める。


「さぁ、いくぞ魔物どもよ。何をへばっている」


『ブルルヒッ……』


 と、ここで。

 スクルドは側で座り込んでいる一角獣のモンスター『ユニコーン』たちを見て眉根をひそめた。

 近年、騎馬の代わりに繁殖させることに成功した魔獣である。

 馬によく似た見た目をしているが、モンスターだけあって体力も速度も凄まじい。


『ブルッ、ルヒィ……』


 ……だがしかし、いかに強壮といえども限度はある。

 王都から休みなく騎士たちの足として使われてきたことで、ユニコーンの一団は疲れ果てていた。


「フン、仕方のない連中だ」


 そんな魔獣たちを見て、スクルドはハァと溜め息を吐くと……。


「ではこうしよう――『呪縛の魔法紋』を以って命ず。人外どもよ、強制駆動を開始せよ」


『ブッ、ブルルヒィイイイイイイイイイッ!?』


 その瞬間、まるで機械仕掛けのごとく座り込んでいた一角獣たちが跳ね起きた。

 さらにはドクッドクッと外部に響き渡るほどの音を出しながら心臓が動き、ユニコーンたちの目が血走っていく。


 ――これが魔物たちを縛り上げている魔の刻印『呪縛の魔法紋』の使い方の一つである。

 刻みつけたモンスターの行動を自由に操れるだけでなく、その心肺機能すらも無理やり操作できるのだ。


「わかるか、モンスターども。お前たちに休む権利などないのだ。生まれた瞬間から死ぬときまで、私たち人間の文明を発達させるために働き続けろ、わかったな?」


 冷たく言い捨てるスクルド。

 彼は顔色を一切変えることなくユニコーンに乗り込むと、その腹を蹴って「さぁ進め」と命令を下す。

 他の騎士たちも同じ調子だ。ユニコーンたちの背に、全身鎧の重圧がのしかかる。


『ブルルッ、ヒ……(誰か、助けて……!)』


 ――かくして、人知れず悲鳴を上げる魔物たちを足に、騎士たちは進軍を開始するのだった……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です! [気になる点] >スクルド 自分の中ではどうしても北欧神話と『ああっ女神さまっ』のイメージが強いから、 悪役の名前として出て来ると違和感を禁じ得ないな……。 [一言]…
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