35:魔物少女たちの日々!
――エレンとレイアがゴブゾーにかまっていたその頃。
魔王城の庭に設置されたテラスにて、魔物の少女たちのお茶会が行われていた。
彼女たちの共通点はもちろん、『エレンのことが好きすぎる』という点である。
「――くっ……まさか進化には、オスがメスになるチカラもあるとは。これは今後、男連中もライバルになるやもしれぬな」
そう唸ったのは先日『魔人化』に成功したばかりのシルだ。
先んじて銀髪美女になったことでエレンを誘惑することも可能になった彼女だが、恋敵であるサラのことを思ってあえてストップ。
彼女が同じく魔人化するまで、本格的な誘惑はしないと決めたのだった。
――そして、そのサラはというと……。
『キッ、キッ、キィイイイイイイイイイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!! なんなのよなんなのよなんなのよぉおおおおーーーっ!?
なんで私がどんなに願っても進化できないのに、あのゴブリンのクソガキが進化してんのよッ! 意味わかんないんですけどぉーーーっ!!!』
……口からボォボォと火を吹きながら、荒れ狂っていた!
それも仕方がないだろう。美人になったシルを見て『次は自分が!』と意気込んでいたのに、まったく予想外の方向から願いを叶えた者が現れたのだから。
しかも当のゴブゾー本人は「こんなカラダ嫌ゴブーッ!」と拒否っている始末。
その結果、レイアの予想通り見事にキレ散らかすことになったのだった。
『うぅぅぅぅううっ、ぐやしいよぉおおお……ッ!』
「よしよし……」
ついには泣き出してしまうサラの背中を、シルは優しく撫でるのであった。
――そんな彼女たちに対し、『仲良しさんだね~!』『仲良しだねぇ』と言う者が二人。
『ちょっ、ラミィにハウリン!? 別にこんなヤツと仲良くなんてないんだからね!?』
『『どうだかねぇ~』』
慌てて否定するサラに、スライムのラミィとブラックハウンドのハウリンはニヤニヤとした笑みを浮かべるのだった。
『友達が出来たってことでいーじゃんいーじゃん! 実はラミィ、新しい恋敵のシルちゃんのこと警戒してたけど、めちゃくちゃイイ子だし今は認めてるよっ!』
『ラミィと同感だね。私も最初はオオカミ系の魔物としてキャラ被りしないか少し気にしていたが、インドア派の私に対してシルは根っからのアウトドア派みたいだからね。安心したよ』
『いや~、それはハウちゃんがおかしいだけだと思うよ……? 引きこもりのブラックハウンドなんて他にいないって』
『むっ、オンリーワンということかッ!』
『違うから』
天然ボケしたハウリンの言葉をスパッと否定するラミィ。
劣悪なテイマーギルドで何年も共に過ごしてきた者たち同士、かけ合いはある意味完璧であった。
「仲いいなぁ~」
そんな二人を見てほのぼのと微笑むシル。
こうして、魔物少女たちの午後のお茶会はなごやかに過ぎていくのだった。
◆ ◇ ◆
「――というわけでっ! よろしくおねがいするぞっ、せんせー!」
「はいっ、よろしくおねがいされちゃいますねっ♡」
お茶会のあとのこと。シルはレイアと共に、魔王城の厨房に立っていた。
というのも、魔物少女たちのお茶会にて『手料理』の話題が上がったのだ。
ハウリン曰く、『ニンゲンのオスに好かれるには、上手い料理で胃袋を掴むのが一番』とのこと。ならばそれを実践してみようというわけだ。
「ふっふっふ……今やわたしも二本足の魔人。オオカミだったころと違い、包丁を握れるようになったわけだ。絶対にウマい料理を作れるようになって、エレンの一番のつがいになってやるぞっ!」
エプロンを纏いながら燃え上がるシル。
そのような経緯があり、元魔王であり家事も炊事も得意なレイアに師事することになったのだった。
「では手始めに、栄養も取れてお肉も美味しい野菜炒めから作ってみましょう!」
「おーっ!」
さっそく料理を始めるレイアとシル。
――だがしかし。
「ギャーッ指切ったーーーっ!?」
「だ、大丈夫ですかシルさん!?」
「ギャーッ火傷したーーーっ!?」
「ってシルさーーーんっ!?」
「塩と砂糖間違えたーーーーっ!」
「えええええええええ!?」
切る・焼く・味付け。全ての項目で大失敗ッ!
最終的にボロボロになったシルの目の前には、焦げてたり生だったりしょっぱかったり甘かったりさらにはちょっと血の味までする、名状しがたい野菜炒めが鎮座することになったのだった。
「う、うぅぅうう……まさかここまで料理が難しいとは……」
「あはは……仕方ないですよ。シルさんはヒト型になったばかりなんですから、まだ感覚的に慣れないところはありますって」
涙目のイヌ耳少女をレイアは優しくフォローする。
――たしかに結果こそ残念だったが、それでも一人の男性を想って慣れない料理に励むシルの姿は、とても真摯なものだった。
「大丈夫ですよシルさん。その調子で経験を積んでいけば、いつか絶対にエレン様を唸らせるほどのお料理が作れますって」
「っ、そうだな……! ちょっと失敗したくらいでへこたれないぞっ!」
涙を拭って前を向くシル。
……とそこで、彼女は気が付いた。『そういえばこの目の前にある名状しがたい物体、どう処理したものか』と。
「う、うーん、捨てるのももったいないしなぁ。一応、食べれそうではあるし……。なぁレイアせんせー、どうしたらいいだろうか?」
「あー……エレン様はお優しい人ですから、このまま出しても美味しいって言って食べてくれそうですけどね。でも流石に、病み上がりの身に失敗作を食べさせるわけにはいきませんし……あっ、そうだ」
ポンと手を叩くレイア。
彼女は思いついたのだ。こういう時の適材がいるじゃないか、と。
――そんなわけで。
『うーんっウマイウマイ!!! なんかよくわからんけどウマイではないか!』
名状しがたい野菜炒めをペロリと平らげてしまう黄金竜。
――そう、大食漢で味覚も大雑把なゴルディアス・ドラゴンなら問題なく食べてくれるんじゃないかと差し出してみたところ、見事に処理してくれたのだった。
その様子を見て、シルとレイアは「わぁっ!」と歓声を上げる。
「あーよかったよかった! これならどれだけ失敗しても大丈夫だな!」
「ええっ、食材を捨てなくても済みますもんね! ドラゴンさん、ナイスですっ!」
『むっ!? 何だか知らんがご飯がもらえた上に褒められたぞッ! 嬉しいぞッ!』
喜ぶ少女たちを前にゴルディアス・ドラゴンも上機嫌だ。
……実際は残飯処理係という役目を押し付けられているのだが、それに気づくことなく食事にありつけるため、彼女が一番ハッピーな結果に終わったのだった。
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