34:男を取り戻せ、ゴブゾー!
「チンコ欲しいゴブーっ!」
「その姿でチンコ欲しい言うな」
――衝撃のゴブゾー性転換事件から数時間後。
俺はグズグズと泣く彼……もとい彼女に袖の端を掴まれながら、城内にある『魔宝具保管庫』に向かっていた。
俺の『黒曜剣』なんかも収められていた場所だ。
もしかしたらゴブゾーの状態をなんとかする魔宝具もあるかもしれないと思ってな(※ぶっちゃけないと思っているが)。
ちなみにゴブゾーの今の恰好は、レイアの予備用だというブカブカのメイド服だ。それを着せられた時のゴブゾーの目は本当に死んだ魚のようだった。
「まぁ元気出せよゴブゾー、そのうちいいことあるって。
俺だって人間の社会に居場所をなくして飛び出したけど、なんだかんだでなんとかなってるんだからさ」
「えっ、チンコなくしてもなんとかなるゴブか!?」
「それは……スマン、どうにもならないかもしれない」
「ゴブゥウウウウーーーッ!?」
再びワンワンと泣き出してしまうゴブゾー。
ってしまった、言葉選びを間違えちまったな……。
今までたくさんの傷付いた魔物たちを慰めてきたが、コイツのようにおもしろ馬鹿すぎる理由で美少女になってメンタルブレイクしてるヤツは初めてだからなぁ……。
「うぅむ。魔王たるもの、大ポカをしてアソコが消し飛んだアホの子も慰められるようにならないとな……」
「アホの子ッ!? いまオイラのこと、アホの子って言ったゴブかっ!?」
「実際アホだろ……」
――そうしてゴブゾーとわちゃわちゃしながら歩くこと数分。
俺たちは、魔王城の地下深くにある『魔宝具保管庫』に辿り着いた。
「ふぅ。迷路みたいに通路が枝分かれしてて、少し時間がかかっちまったな。レイアから地図をもらってなかったら迷ってたかも……」
まぁそれも仕方がないか。ここには希少な魔宝具がいくつも収められているんだからな。侵入者対策としてあえて経路を複雑にしたのだろう。
その重厚な扉の前には、すでにレイアが待っていた。
「お待ちしておりましたよ、エレン様。さっそく中へとまいりましょう」
「あぁ、ごめんなレイア。道を確認しながら歩いてたのと、なによりゴブゾーに服を着せるのに手間取っちまってな……」
「ゴブゥ~……!」
そう。ちょこちょこ縛らないといけない箇所があるメイド服を着ることになったゴブゾーだが、今までほとんど全裸で過ごしたきたため、当然ながら一人で着れるわけがない。
そこでレイアが(ゴブゾーのアホ進化にびっくりしながら)手伝ってあげようとしたのだが、『オイラは男ゴブッ! アネゴに着せられるなんて恥ずかしいゴブゥー!』とゴブゾーがぐずったため、仕方なく不慣れな俺が着せていたわけだ。
「あはは……それにしてもゴブゾーさん、本当に可愛らしいお姿になってしまいましたね。どう見ても美少女です。
これ、サラマンダーのサラさんが知ったらすごく怒りそうですよね。『なんでアンタが先に魔人になってるのよっ!』って」
「ひえっ、とばっちりゴブゥ! オイラは悪くないゴブーッ!」
「いやぁ~……こうなった経緯を聞くに、進化途中で好みの女の子を妄想したゴブゾーさんも悪いかと……」
「そんなーっ!?」
レイアにも涙目にされるゴブゾー。しばらく方々(ぼう)からいじられることになるだろう。
今後、この弟分――もとい妹分に幸福あれと願いながら、俺は宝物庫へと入っていった。
◆ ◇ ◆
「チンコどこゴブかッ!」
「ってうるせぇよ!」
……相変わらず錯乱中のゴブゾーを黙らせつつ、俺はレイアに先導されて『魔宝具保管庫』に入り込んだ。
一見すれば薄暗い倉庫って感じの場所だ。
しかし、どことなく精神をざわつかせるような嫌な気配が漂っていた。
「……『黒曜剣グラム』をもらうために一度入ったことがあるが、相変わらずこの雰囲気にはなれないなぁ……」
「かつては数多くの魔宝具を納めていた場所ですからね。そしてもちろん、ここに収納されていた魔宝具のほとんどは『殺人』を目的として作られたものでした。それゆえ、殺意の名残が残っているんですよ」
ああ、物知りなハウリンから聞いたことがあるな。
魔鉱石から成る古代のアイテム――『魔宝具』は、魔物たちの進化と同じく、作成時に願われた内容によって効果を変える。
つまりは殺意を込めれば込めるほど、その能力は虐殺に特化したものになるわけだ。
――だがしかし、そうやって人殺しを目的として作成された魔宝具は、逆に使い手の精神を殺意や狂気で蝕んでしまうこともあるとか。
「怖いよなぁ、武器に心を支配されることがあるかもなんて。……なぁレイア、魔王軍の中にも魔宝具に精神を冒されちまったヤツっていたのか?」
「……ええ、いましたよ。ニンゲン憎しといくつもの戦闘用魔宝具を抱え込んで戦って、最期は理性を失ってしまった子が何人も。
ゆえにエレン様。アナタもどうか、複数の戦闘用魔宝具は使わないようご注意を」
「ん……わかった、覚えておくよ」
レイアの言葉に頷く俺だが、『絶対にしない』とは言い切れなかった。
なにせこちらは戦力に乏しい。もしも一つの国が全力で攻め込んでくる事態になったら、虫のように蹴散らされてしまうだろう。
――だが、俺は魔王だ。いざという時は命を張ってみんなを守る義務がある。
たとえ、精神を蝕まられるような無茶をやらかすことになったとしてもな。
「……レイア。お前も含めて、みんな俺が守るからな」
「っ、ずるいですよエレン様……! そういう、女の子的に止めづらくなるセリフは言わないでくださいっ! とにかく戦闘用魔宝具の多用は禁止ですからね!?」
頬を赤くしたレイアに怒られてしまう。
まぁわかってるさ。無茶をするのは本当にどうしようもなくなった時だけだ。
俺だって、みんなと笑顔で過ごしていきたいからな。
「うしっ、それじゃあゴブゾーのチ……じゃなくてアレをどうにかする魔宝具を探すか。まぁ、ぶっちゃけないと思っているが」
「ええ、正直わたくしも同感ですね。今日ここにゴブゾーさんを招き入れたのは、実際に解決法がないのを認識してもらって現実を受け入れてもらうためだったりするんですよね」
「ゴブーーーッ!? そっ、そんなぁーーーーーーー!?」
ショックでその場に崩れ落ちてしまうゴブゾー(はたから見たら涙目で震えているチビロリ巨乳美少女)。
俺はそんな彼(?)の肩を、優しくポンと叩くのだった。
「よしよしゴブゾー。――じゃ、せっかくだから俺はみんながバトルで使えそうな魔宝具でもあさってくるぜ!」
「って酷いゴブよアニキィ!? もっと慰めてくれてもー!?」
「いや、もうすぐ人間たちが侵入してくるかもなんだから仕方ないだろ。戦いの準備も魔王の仕事だからなぁ」
そう言うと、ゴブゾーは号泣しながら「オイラのチンコと仕事ッ、どっちが大事なんだゴブか!?」と叫ぶのだった。
仕事に決まってんだろうが。
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