31:魔王城巡り!
【祝・連載再開!】復活!!!
第一部までのあらすじ:魔王の紋章が刻まれた少年・エレン。彼は魔物たちの絆と強敵への怒りを燃やし、ついに【魔物の能力使用】と【魔物の魔人化】の力に目覚めたのだった。
その結果、ヒロインとついでにオッサンが美女になった。
「――よし、ようやく動けるようになったな」
城に戻ってから四日後。やっとベッドから出られるようになった。
本当はまだ節々が痛むけど、いつまでもグダグダしているわけにはいかない。
なにせ俺は『二代目魔王』だ。魔物たちが平和に生きられる場所を作ると決めた以上、頑張っていかないとな。
「さてと。リハビリがてら、みんなの様子を見に行くことにするか」
コートを羽織って部屋を出る。
――聞いた話では、シルバーウルフたちやギルド時代からの仲間の魔物たちは城内で暮らしているらしい。
この『魔城グラズヘイム』は初代魔王軍の本拠地でもあった建物だ。
様々なサイズの魔物が安心して住めるよう、大小さまざまな居室が内部に存在していた。
俺や仲間たちをそれをありがたく流用させてもらっているというわけだ。
「みんな、フカフカのベッドに感動している様子だったってレイアが言ってたなぁ。よかったよかった……」
特にテイマーギルドの魔物たちはずっと酷い生活を送ってきたからな。感動もひとしおだろう。
“彼らにとって、この場所が大切な故郷になりますように”と願いながら、俺は廊下を歩いていった。
◆ ◇ ◆
『あっ、エ、エレンッ! 動けるようになったの!?』
「よぉサラ」
俺が最初に訪れたのは、サラマンダーのサラの部屋だった。
陽ざしのよく当たる温かな場所だ。それに部屋の隅には砂場があったり、熱を放つ『赤鉱石』というムスプルヘイム産の魔石を用いた暖房器具があったりと、気温の高い砂漠で生まれたサラマンダーの彼女にとっては楽園のような環境となっていた。
……人間の俺にはちと暑いけどな。
「いい部屋をもらえたみたいでよかったな。ここなら冬場も寒くは、」
なさそうだ――と言おうとしたところで、
『スンスンスンスンスンスンスンスンッッッ!』
「ってうわぁっ!?」
サラはのしのしと近づいて来るや、急に俺の身体を嗅ぎ始めた!
ってなんだなんだ!?
『あのアホオオカミの匂いはッ……する、けど、そこまではしないわね。なによエレン……あの子のことを拒んだわけ?』
「え、あぁ……そのことについてか」
昨夜、銀髪の美少女となったシルバーウルフのシルが俺の部屋を訪れた件だな。
俺はサラの鼻先を撫で、その顛末について答える。
「拒んだわけじゃないさ。俺はシルからの告白をちゃんと受け止めたし、俺もあの子に好きだと伝えた。……実際、シルが元気づけてくれなかったら、精神的にやばかったからな。本当にあの子には救われたよ」
『な、ならなんでアイツの匂いがそんなにしないのよっ!? その、こ、交尾はしなかったわけ!?』
恥ずかしげに問いただしてくるサラ。
だけどごめん、朝から交尾とか叫ばないでくれ。
というかせめてもう少し別の言い方をしてくれ。ド直球すぎるから。
「ははは……たしかに交尾……じゃなくて“そういうの”の誘いはしてきたな。魔人になったシルの姿は本当に綺麗すぎたし、俺も断る理由なんてなかった」
『ならなんで交尾しなかったのよ……』
「だから交尾いうな」
生々しすぎるわ。
「まぁそれはともかく――途中でさ、シルが言ってきたんだよ。『譲られた勝利なんて欲しくはない。ゆえに、サラが進化する時を待つことにした』ってな」
『っ、アイツぅ……!』
その言葉に、怒ったような――しかしどこか嬉しそうな表情を浮かべるサラ。
赤い尻尾をブンブン振りながら、フンッと鼻を鳴らす。
『なによなによ! せっかくアタシがエレンのはじめてを譲ってあげたのに、そんなアホなことを言ってやめちゃったわけ!? 本当にアイツはアホオオカミねっ! 損する性格してるわぁ!』
「そうかもな。でも、優しい子だ」
『っ……ええ、その通りねぇ』
観念したように頷くサラ。ともに、無邪気な銀狼の笑顔を想う。
『フンッ……そんなことを言われたんじゃ、さっさと魔人になってやらないと申し訳ないわね。進化したら交尾しまくってやるんだから覚悟しなさいよ、エレンッ!』
「だから交尾いうなって」
温かな日差しが照らす中、俺たちは仲良く微笑み合うのだった。
◆ ◇ ◆
「よぉドラゴン。みんなと仲良くやってるか?」
『おぉエレンか!』
俺が次に訪れたのは、城の地下にある大闘技場だった。
そう、この『魔城グラズヘイム』には何万人でも収容できそうなほどのコロシアムがあるのだ。
初代魔王のレイア曰く、血の気の盛んな魔物たちはここで模擬戦を行って己を高めていたらしい。
「聞いたよドラゴン、大陸から戻ってからはずっとここで修業しているんだってな」
『うぅむ……あのサングリースという男には手ひどくやられてしまったからな』
悔しそうに唸るゴルディアス・ドラゴン。やはり、あの日のことを後悔しているようだ。
『……偉大なる竜種である我にとって、ゴブリンなどオヤツだ。腹を満たすためならば平気で食べてしまえるさ。
だがしかし……大雑把なくくりで言えば、ヤツらも魔物という名の同胞だからな。食べるわけでもない虐殺を受ける様など、もう見たくはない』
「ドラゴン……」
『ゆえに、我はもっと強くなるぞ! そのためにも今日も「師匠」と修行だーーっ!』
そう叫びながらドラゴンはウォオオオーーッとある者に突撃していき……首をガシッと掴まれて、見事に投げ飛ばされてしまうのだった。
『ってグエーッ!?』
『グフフフフ……アマいトロ! 猪突猛進はアホのやることトロ!』
闘技場に野太い笑い声が響く。
巨体のドラゴンをたやすく投げ飛ばしたのは、ギルド時代からの仲間である『トロール』のトロロだった。
「よぉトロロ。相手の力をうまく利用した、技あり一本だったぜ」
『エレン! 元気になったトロね!?』
「ああ。トロロのほうは身体は大丈夫か?」
『大丈夫トロ! ココの寝床はキレイだしご飯もいっぱい食べれるから、最近はすっかり元気トロ~!』
無邪気に笑うトロロ。だが、その筋骨隆々とした身体はどこもかしこも傷だらけだ。
「そっか……無理すんなよ、トロロ」
……なにせ彼は元拳闘用の魔物だからな。人間たちのあいだでは魔物同士を戦わせる悪趣味な遊びも流行っており、トロロもそのために飼われている者の一体だった。
だがしかし、度重なる戦闘によって身体を故障。そうして廃棄されそうだったところを、ギルドマスターのケイズが安く買い取ったというわけだ。
まぁ、ケイズの野郎はそんなトロロに容赦なく重労働を強いてやがったけどな。地獄でせいぜい苦しみやがれ。
「にしてもトロロ。レイアからドラゴンの修行を相手をしているって聞いた時は驚いたぞ? 身体が心配なのはもちろんだけど……こういう闘技場みたいな場所にいたら、昔のことを思い出しちゃわないか?」
『アァ……ソレはあるトロねぇ。あの時はホントに嫌だったトロ。同じ魔物を殴らなきゃいけないし……でも手を抜いて試合に負けたら、観客のニンゲンどもは「賭けに負けた責任を取れ!」ってゴミを投げてくるし……』
苦々しい声色で語るトロロ。過去の辛い記憶が脳裏によみがえっているのだろう。
――しかし彼は微笑を浮かべると、へばっているドラゴンを見ながら『でも』と呟いた。
『でも……拳闘奴隷だった時に磨いた技が、「強くなりたい」って願ってる仲間の役に立つなら、ジブンはすっごく嬉しいトロ!』
「トロロ……!」
『だからエレンッ、期待して待ってるトロ! ジブン自身はあんまり戦えないけど、このドラゴンは鍛えに鍛えて鍛えまくって、「二代目魔王軍」イチバンの戦力にしてやるトローッ!』
そう言ってトロロは、やる気いっぱいに拳を振り上げるのだった。
あぁまったく。本当に強くて優しい最高の男だよ、コイツは。
トロロならドラゴンを十分に鍛えてくれることだろう。
そう思いながら、俺は次の場所に向かうのだった。
……背後から『うぎゃーッ、もう疲れたから休ませてくれ! エレン助けてーッ!』とドラゴンの悲鳴が聞こえた気がするが、まぁ気のせいだろう。
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