15:里からの使者ゴブっぺ!
「――ちっ、チクショウめぇッ! 覚えてやがれぇええええええーーーーっ!」
捨て台詞を吐きながらドタドタと駆けていく襲撃者たち。
かくして戦闘開始から数分後、新たにドラゴンを仲間に加えた俺たちが負けるわけもなく、敵を追っ払うことに成功するのだった。
ちなみに奴らの奴隷にされていた魔物たちも解放してやったのだが、『呪縛の魔法紋』を傷つけて解いた瞬間、『もう人間に捕まるのは嫌だーっ!』と逃げて行ってしまった。
ま、一応は人間である俺をいきなり信用しろってのも無理だからな。あいつらには自然の中でひっそりと生きていってほしい。
「さぁてドラゴン、初仕事ご苦労様だったな」
『フハハッ、思いっきり暴れまわったおかげで腹が減ったぞエレンよ!』
「ってまだ食うつもりかお前は!?」
えぇ……少し前に大量の朝飯を食わせてやったばかりなんだが……。
これからも彼女を食わせていけるだろうかと、俺は少し心配になってくるのだった。
と、そんなときだ。突如として荒れた地面がゴバッと爆ぜ、スコップを持ったゴブリンが現れたのである……!
「って、なんだなんだぁ!?」
『わははっ、驚かせて悪いゴブねぇッ! ちなみにオラの言葉、ちゃんとわかるゴブっぺか? お兄さんの好きな食べ物は!?』
「……カレーだが」
『ゴブゴブ~!? おぉ、本当に言葉が通じる人間がいるゴブねぇッ! 長老の言った通りゴブっぺー!』
こりゃたまげたと大笑いする謎のゴブリン。
……ってコイツ、もしかして昨日ドラゴンから助けたゴブリンか!?
『いやぁ~昨日はお礼も言えずに消えちまって悪かったゴブっぺねぇ。実はあの後、里のみんなに知らせるためにアンタらの戦う様子を覗き見てたゴブ。
そしたらお兄さん、人間のくせに魔物たちとコミュニケーションを取りながら連携してたから驚いたゴブッ! それを里の長老に話したら、すぐ連れてこいって言われたゴブよー』
「里だと? それってまさか、ゴブリンの里のことか……!?」
『その通りゴブっぺ~!』
俺の言葉に頷くゴブリン。
……これは思ってもみなかったなぁ。元々この地にはゴブリンの里を探しに来たんだが、まさか向こうから使者を遣わせてくれるとは。
答えはもちろんイエスだ。その誘い、ぜひとも受けさせてもらおう。
そうして俺が返事をしようとした時だ。
新たに仲間になったドラゴンのお腹から、グゥ~~~~ッという特大の音が鳴って……!
『あぁ、もう腹が減って死にそうだッ! おいゴブリンよ、殺しはせんからちょっと味見させろッ!』
『ゴブゥウウウウーーーっ!?』
ってせっかくの使者を脅すんじゃねえよポンコツドラゴンがーーーッ!
◆ ◇ ◆
――幻の土地、ゴブリンの里。
草木がほとんど生えてない大地のどこにあるのかと思ったら、なんとそれは地下にあった。
スヴァルトヘイム大陸の各所には地の底に続く小穴がいくつもあり、そこから出入りしているのだそうだ。
なるほど、賢い選択だなぁと思う。子供くらいの大きさしかないゴブリンのサイズに合わせた穴なら、危険な猛獣が入ってくることもないだろうしな。
……しかし一つだけ、里の長老とやらの命令で、深い谷底にドラゴンでもギリギリ入れるような隠し通路が設けられていた。
俺たち一行はそこを使わせてもらい、ゴブリンたちの楽園へと向かったのだった。
『さぁついたゴブッ、ここがゴブリンの里ゴブっぺよー!』
「おぉ……っ!」
目の前に広がった光景に、俺は思わず感嘆の息を漏らしてしまう。
暗い横穴を抜けた先にはドーム状の大空間が広がっており、そこでは多くのゴブリンたちが店などを設けて生活していたのだ。
ゴブゴブゥーという元気な声があちらこちらから伝わってくる。
「すごいなぁこれは、人間の街にも負けないくらいの活気だ……! それに、地の底なのにすごく明るいし」
『フッフッフ、ヒカリゴケっていうほのかに発光する苔をあちこちに張り付けているゴブっぺからねぇ~。
ささっ、エレンのお兄さんがたはどうぞ長老の小屋まで! そこの金ぴかドラゴン様は、悪いけど長老には会わせられないゴブゥ……』
『ってなんでだ貴様ッ!? ドラゴン差別か!』
『オメェオラのこと食おうとしといてよく言えたゴブねぇ!?』
ギャーギャーと騒ぎあうドラゴンとゴブリンの姿に思わず苦笑してしまう。
まぁ接触禁止も仕方ない。二度も食おうとしてきたヤツを重要人物の前には連れていけないわな。
「ごめんなドラゴン、食べ物をいくらか置いていくからお前は通路のあたりで待っててくれ。あとシルとサラは、そいつのことを見てやっててくれ」
『了解だ』『妥当な判断ねー』
『ってお目付け役まで置いていかれた!? もしかして我、問題児扱いされてるッ!?』
アホドラゴンのその発言に、使者のゴブリンも含めて全員で『当たり前だろうがッ!』とツッコむのだった。
ある意味コイツのおかげで、みんなの心が一つになった瞬間である。
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