13:魔剣抜刀
別の大陸にやってきてからの第一村人。
それはドタドタと逃げるゴブリンと、彼を追いかける巨大な黄金竜だった――!
「何がなんだかわからないが、あのゴブリンを助けるぞっ!」
『おうっ!』
俺の言葉に迷わず応える仲間たち。
シルバーウルフのシルが爪を尖らせ、サラマンダーのサラが口内に爆炎を貯めはじめ、幽霊メイドのレイアが周囲に妖気の光弾を生み出し始める。
さらにゴブゾーたちゴブリン部隊も石を手に取って投石準備を進める中、俺もまた『魔城グラズヘイム』より持ち出した秘剣の柄を握り締めた――!
「頼んだぞ、一級魔宝具『黒曜剣グラム』!」
そう言って俺が引き抜いたのは、漆黒の刃を持つ異様なる長剣だった。
これこそが、魔宝具と呼ばれる伝説の武具の一種である。
魔宝具にはそれぞれ特殊な能力が宿っているとされ、その戦略的有用性から三級・二級・一級・特級とランク付けされているのだ。
そして、一級に分類されるグラムの能力は単純明快。
「いくぞ、ドラゴンッ!」
宣戦布告と共に何メートルも飛び上がり、俺は硬い鱗に覆われたドラゴンの背に刃を無理やり突き立てた――!
『グガァアアアアーーーーーッ!? じゃ、弱小な人間ごときにっ、我が刺されただとッ!?』
「悪いな。たしかに俺は弱っちいが、この剣を握ってる間は結構強いんだよ」
そう、『黒曜剣グラム』の固有能力は使用者の身体能力の強化である。
手足は剛腕かつ豪脚となり、皮膚は刃すら弾くようになる優れものだ。
剣術なんてろくに習ったことのない俺にとって、燃える魔剣とかよりもこっちのほうが性に合っている。
「さぁ、ドラゴンが怯んだぞみんなッ! 一気に畳みかけろォーッ!」
『ウォオオオオーーーーッ!』
かくして始まる仲間たちの猛攻撃。
鱗の張られていないドラゴンの首にシルが噛み付き、サラが火炎を吹いて手足の先を炙っていき、レイアが無数の光弾を放って黄金竜の全身を痛めつけていく。
ちなみにゴブリン軍団も石をポカポカ投げているのだが、こっちは硬い鱗のせいであまりダメージがない様子。まぁ、やらないよりはいいだろう。
ドラゴンはすさまじく高い生命力を持つというので、俺も容赦なく背中をザクザク刺していった。
『な、何なのだ貴様たちはッ!? 貴様たちも、この黄金の鱗狙いで我を襲うのかーっ!?』
「そんなの知るか! 事情なんて全然知らんがゴブリンを襲ってたからとりあえずボコってるだけだッ!」
『えーーーっ!? あ、ていうか言葉が通じたッ!?』
こうして数分後、『竜の誇りに懸けて雑魚どもに負けるわけにはーッ!』とか言ってたドラゴンだが、みんなで袋叩きにしまくったらついに涙目になって降参してくれたのだった。
◆ ◇ ◆
『――うぅぅぅうううッ! 仕方がなかったのだッ、腹が減っていたのだーっ!』
「あーよしよし……」
あたりも暗くなり始めた頃、サラに火を焚いてもらった俺たちは、焚火を囲んでドラゴンの話を聞いていた。
曰く彼女(女の子らしい)の種族である『ゴルディアス・ドラゴン』は、その煌びやかな金の鱗からたくさんの人間たちに狙われ続け、色々と苦労をしてきたとか。
そしてコソコソと逃げ回る生活の中、腹が減った彼女はゴブリンを食べようとして襲い掛かり、その途中で俺たちに遭遇することになったってわけだ。
ちなみに俺たちが与えた傷はすでにほとんど治っている様子。やっぱすごいんだなぁドラゴンって。
『……それで、貴様はたしかエレンだったか。本当に我を捕獲する気などないのだな?』
「当たり前だ。逆に俺は、魔物たちが人間の奴隷になんてならない国を作るために活動してるんだからな。それよりもドラゴン、腹が減ってるって言ってたよな? 俺たちの食料を分けてやるよ」
『むっ、それはありがたい話だが……しかし貴様ら、荷物なんてろくに持っていないみたいじゃないか? 言っておくが我は大食いだ、握り飯程度じゃ満足せんぞ?』
「まぁ見てろって」
そう言って俺は、懐から小銭入れのような袋を取り出した。
そして、それを逆さにしてぶんぶん振ると、
「いよっと!」
――ゴトゴトゴトゴトォッ!
『ファーッ!? し、新鮮な果実が何十個も出てきたッ!?』
驚きの声を上げるドラゴン。質量や物理法則なんて完全に無視した光景に、大きな口をあんぐりと開ける。
そう、俺が手にしている袋こそ、城から持ち出した二つ目の魔宝具『フィアナの魔法袋』だ。
等級は二級で戦闘には使えないが、その有用性は半端ない。
なにせ総重量が三百キロになるまでなら、袋に何でも詰め込めるんだからな。そして内部は真空に近い状態になっているため、食べ物なんかも長持ちするのだ。
「ほらドラゴン、銀狼の森で摘みまくってきた果実の山だ。まだまだいっぱいあるから、遠慮なく食べてくれ」
『ふぉおおおおおっ! うぐぅ……言っておくが人間よ、この程度のメシを提供したくらいで、我が貴様を信用すると思うなよッ!?』
「わかったわかった。あ、焼きリンゴってやつを作ってやろうか? 甘みがギュッと濃縮されて、すごく美味いんだよ」
『た、たべりゅーっ!』
なんだかんだ言いつつも、俺が出した食料をバクバクと食べていく黄金竜。
こうして俺たち一行は、ドラゴンとの予想外の出会いを果たすことになってしまったのだった。
・ちなみに魔法袋の中には生物も入れますが、中はほぼ真空なので非常に危ないです。
ゴブゾーがイタズラで入って死にかけました。
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