11:ゴブリンの里へ!
「――うわぁ、これはすごいなぁ……」
城のバルコニーに出た俺は、銀狼の森が瘴気で覆われていく様を見ながらそう呟いた。
濛々と立ち込める紫の霧が、壁のように四方を包み込みこんでいく。
「ふふっ、すごいでしょう『魔城グラズヘイム』は? 数百年前の大戦時代は、この防衛機能によってほとんどの敵を阻んじゃったんですから!」
むふぅーっと自慢げに胸を張る幽霊メイドのレイア。
この城を作ったのは魔王のはずなんだが、まぁいいか。
「たしかにこれなら領主たちも早々手を出しては来ないだろうな。……だが、テイマーギルドの魔物たちはどうだと思う?」
「えっ……あっ……!」
俺の言葉にレイアはハッと表情を変えた。
そう、瘴気が毒性を発揮するのはあくまで人間相手だけだ。『呪縛の魔法紋』によってテイムされた哀れな魔物たちには効かないはずだ。
その問題点に気付かされ、レイアは悔しげに肩を震わせる。
「あぁ、そうでしたね……。数百年前とは違い、魔物たちは人の手に落ちてるんでした……」
「そうだ。俺と違って他の人間は魔物から情報を聞き出すことはできないが、魔物と視界を共有できる魔術師がいるというからな。そうした者が派遣されたら、すぐに森の調査が行われるはずだ」
腕を組みながら領主ポルンの行動を予測する。
しばらくはショックで混乱するだろうが、正気に戻ったら即座にニダヴェリール王家に瘴気の発生を報告しに向かうだろう。
そして魔物との感覚共有が可能な魔術師が遣わされたら、前哨戦の始まりだ。
「どう見ても悪の魔城って感じだからなぁ、『魔城グラズヘイム』。敵に発見され次第、この城が瘴気の発生源なのだと断定されて攻撃が始まるはずだ」
「あはは、ですよねぇー……。当時やさぐれていた魔王は、『世界が私を悪だというなら本当の悪になってやるッ!』っていうノリでこの城のデザインを決めましたからねぇ。こんなことならもう少し地味だったり、迷彩機能とかつけておけばよかったですねー……はぁ」
魔王のせいだというのに、なぜかレイアが肩を落とすのだった。
ま、それはともかく。
「これからのことについて考えよう。王都までは距離があるからな、領主ポルンが情報を伝えてから調査隊が送り込まれるまで半月はかかるだろう。
その間に俺たちは、城の転移機能【天翔陣】を使って仲間の数を増やしに向かおうと思う」
「なるほど、軍隊を用意するわけですね」
「そういうことだ。どのみち俺の目的は、魔物たちの迫害されない理想の国を作ることだからな」
森を追われそうになっていたシルバーウルフたちのように、各地には苦しんでいる魔物の群れが大勢いるはずだ。
そんな者たちを救い出し、仲間に加えていこうと思う。
「というわけで、問題はどこに向かうかだが……」
そうして俺が思案しようとした時だ。俺やレイアと共に外の様子を見ていたゴブゾーが、『ハイッ!』と元気に手を挙げた。
『エレンのアニキッ、今はとにかくたくさんの仲間が欲しいんだゴブね!? だったら、ゴブリンの里に向かうべきゴブッ!』
「ゴブリンの里だと?」
『そうっ! ここよりはるか遠くの荒れた土地、スヴァルトヘイム大陸にあるっていう隠れ里ゴブ。そこにはたくさんのゴブリンたちが住んでいて、オイラの祖先も元をたどればそこの出身らしいゴブッ!』
なるほど……そりゃいいかもしれないな。
ゴブリンは最弱だが最多の魔物だ。それに人間に近い体形をしているだけあって、モノ作りも可能とされている。
いずれは森の一部を切り開いて村を作ろうと思っていたからな。仲間にするにはちょうどいい種族かもしれない。
「よしわかった、それじゃあスヴァルトヘイム大陸に行ってみよう。【天翔陣】で移動できる八か所の中に、そこも含まれていたはずだ」
『ゴブーッ!』
こうして俺たちの活動方針は決まった。
森を覆う瘴気が城への侵入を阻んでくれている間に、仲間を増やして敵を追い払う準備を整える。
その第一目標は、ゴブゾーの故郷であるゴブリンの里だ……!
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