9:魔城・グラズヘイム
「これ魔城作ってるんじゃなくて呼び寄せてるじゃねーか」というご指摘を受け、
スキル『魔城創造』を『魔城招来』に変えました! 本当にその通りでございますぅー・・・!
へんなとこあったら皆さんもどんどん言ってください!
「『魔の紋章』が魔王由来の力ってことはわかった。じゃあサラたちギルドの魔物が『呪縛の魔法紋』を打ち破ったことも?」
「ええ。一週間ほど前の時点で、エレン様は『魔の紋章』の覚醒条件をほぼ満たしていましたからね。
紋章の力の一つである『眷属強化』が微弱に発動していたのでしょう。アレは魔物の身体能力だけでなく、魔術などへの霊的耐性を高める効果もありますから」
「あぁ、なるほどな。……覚醒条件ってたしか、魔物たちと深い絆を紡いでいることと、敵対者への殺意だったか。
ギルドにいた頃の俺はすっかり心が折れてて、逆らおうなんて気はなかったからなぁ……」
愉快な魔物たちに和まされた後、俺は幽霊メイドのレイアへと質問を続けていた。
にしても彼女、本当に何でも知っているらしい。
「なぁレイア。これも聞きたいんだが、キミはそもそも何者なんだ? この魔城とやらの管理を任されていることといい、やっぱり魔王の側仕えだったり?」
「あっ、それは…………いえ、その通りですよ。いつか『魔の紋章』の適合者様が現れたらお世話するよう、魔王様から仰せつかった身なんですっ!」
そう言って「なんでも答えれちゃいますよーっ!」と豊かな胸を張るレイア。かわいい。
ともかく彼女の存在はすごく助かる。
俺たちにとって『魔の紋章』は最大にして唯一の武器だ。
それが全くわけのわからん状態のままなら、途方に暮れていたしな。アフターサービスも万全な魔王様に感謝だ。
「じゃあレイア、新しく仲間になったキミにも言っておきたい。
――俺はこの世界に、魔物が冷遇されない『理想の国家』を作りたいんだ」
真剣な眼差しでレイアに告げる。
俺の理想は世界から危険視されるものだ。忠告の意味も込めて彼女には聞かせておきたい。
「ただでさえ俺は黒髪の嫌われ者だ。そんな存在がそんな野望を堂々と掲げようものなら、世界中の人間が即座に殺しに来るだろう。
だからレイア、キミが魔王に『紋章の適合者を助けろ』と命令されているというだけで俺に協力するのならやめておいたほうがいい」
「っ……」
俺の言葉に、彼女はわずかに目を見開いた。
――そして、フッとやわらかく笑みを浮かべた。
「レイア……?」
「エレン様……アナタは本当にお優しい人ですね。もしもこれでわたくしが『ハイそうですか』と魔城の説明なども行わずに出て行ったら、困るのはアナタでしょうに」
「うっ、それはまぁそうなんだが……!? でも言っとかなきゃ悪いだろっ! 幽霊だとか魔王の従者である以前に、レイアは女の子なんだ。男として、無理やり危険な目に合わせるわけにはいかないだろうがっ!」
「お、女の子って……フフッ、もうエレン様ってばっ……そんな扱いをされたのは初めてですよぉ……!」
「そうなのかぁ?」
どっからどう見ても可愛らしい女の子なんだが、そりゃ不思議な話もあったものだ。
首を捻る俺の様子がおかしかったのか、クスクスと笑うレイアの目じりに涙がたまり始めた。
「……知っていますかエレン様? 魔王はかつて、魔物という異形の生命を生み出す能力を持っていたことから、人々に忌み嫌われていたそうです。
でももし世界中の人々がアナタみたいな感じだったら、魔王も暴走を始めなかったでしょうねぇ……」
目じりの涙をぬぐいながらレイアは呟く。
そして『魔の紋章』が宿った俺の手に、そっと自身の白い手を重ねてきた。
実体こそないものの、ひんやりとした霊気の感覚を感じる。
「レ、レイア?」
「ふふっ、合格ですよエレン様! アナタにはこの『魔城グラズヘイム』の全機能使用権を譲渡します!」
「合格って……うッ!?」
彼女が笑顔で告げてきた瞬間、俺の頭に数々の情報が流れ込んできた――!
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・■代■■レイアの権限により、エレン・アークスを正式権利者として承認。
これより、『魔城グラズヘイム』の全機能使用権を譲渡します。
・防衛機能【瘴気結界】の使用が可能になりました。
・転移機能【天翔陣】の使用が可能になりました。
・撃滅機能【ジェノサイド・セブンスレーザー】の使用が可能になりました。
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「これはまた、どれもすごいな……!」
痛む頭を抱えながらも、この城の常識外れっぷりに驚いてしまう。
まず【瘴気結界】。これは周辺を人体に有害な毒素『瘴気』で覆ってしまうというものらしい。
瘴気の影響を受けない者は、魔物と『魔の紋章』を持つ者だけだ。まずほとんどの侵入者はこれで阻める。
次に【天翔陣】。城に刻まれた陣の上に立つと、世界の9か所に魔王がこっそり建てていった祠に移動できるらしい。空間の転移なんて聞いたことがないぞ。
そして最後に【ジェノサイド・セブンスレーザー】。
これはもう……なんというか滅茶苦茶だ。七つの極大破壊光線をぶっ放して、全てを滅ぼすとか説明にあった。
ただし地脈からエネルギーを吸わなければいけないため一日何度も使えるわけじゃないようだが、ともかく強力すぎて意味わからんことには変わりない。
「魔王め、最後のヤツは絶対に調子こいて搭載しただろ……なんか一つだけ名前も浮いてるし」
「あはは……魔王は晩年、人間たちに対抗するために『魔宝具』の開発に力を入れていましたからね。
バリバリに殺意が滾っていたことはもちろん、特大火力をぶっ放すことに気持ちよくなって、この城を作る際に付けてみちゃったといいますか……」
「そっかぁ~気持ちよくなっちゃったのか~……」
わりと愉快な性格してたんだなー魔王って……。
ちなみに『魔宝具』とは、『魔鉱石』という素材を使った不思議な力を持つ超兵器のことだ。
しかし数百年前の魔王と人類の大戦争にて、どちらの軍も鉱石を取りまくっては兵器にして戦場に投入しまくっていたために、今やほとんど採掘できなくなってしまったらしい。
現存の魔宝具もわずかにしか残っていないため、各国の宮廷魔術師しか所持を許されないとされている。
「この城も、現代に残った貴重な魔宝具ってわけか。気前よくくれた魔王様に感謝しないとな」
「ふふ、武器庫にも少しは有用な物が残っていますので、あとで確認してくださいね。
――ともかくエレン様。これでアナタは正式に、魔王の後を引き継ぐ身となりました。先ほどとは逆にわたくしのほうから問いかけますが、あらゆる勢力から魔物たちを守り抜く覚悟はありますか?」
まっすぐに俺を見ながら問いかけてくるレイア。
その質問に答えようとした瞬間、周囲の仲間たちがワッと寄ってきた――!
『舐めるなよレイアとやらっ! わたしたちは守られるのではなく、エレンと共に戦う身だッ!』
『ええっ、そこのワンコロと同意見よ! 逆に私たちがエレンのことを守ってやるんだから~っ!』
『ゴブブゥッ! いざとなったらエレンのアニキを連れて逃げるから大丈夫ゴブゥー!』
頼もしいことを言ってくれるシルやサラに、頼もしくないけど嬉しいことを言ってくれるゴブリンのゴブゾー。
ほかの魔物たちも彼らの言葉に頷いてくれる。
そんな素敵すぎる仲間たちに、レイアは「あらあらぁ」と母親のような笑みを浮かべる。
「本当に愛されていますねぇエレン様は。
――では質問を変えましょうっ! エレン様もシルさんもサラさんもゴブゾーさんもみなさんもっ、最後まで『みんな』で戦う覚悟はありますかー!?」
『「当たり前だーーーーッ!」』
レイアの言葉に、俺たちはみんなで元気に答えるのだった――!
・このたび、「黒天の魔王」の書籍化が決まりました!
さらに漫画版底辺領主とブレイドスキル・オンライン2巻が発売です!表紙がエロかっこいいのでみてみてね~!
『更新早くしろ』『ホント更新早くしろ』『止まるじゃねぇぞ』『毎秒更新しろ』
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