プロローグ:黒天の魔王
「――虐げられし者たちよ、反逆の時はやってきたッ!」
その一言に、ありとあらゆる人外たちが奮い立った。
魔狼族が、火蜥蜴族が、粘体族が、小鬼族が。その他様々な異形の者らが、興奮の咆哮を張り上げる。
彼らが見上げる視線の先には、漆黒の王城のバルコニーに立った一人の『人間』が。
ああ――彼こそは魔の救済者にして、全人類の天敵種。
『魔性断罪』を謳うユミル教に背きし神の敵。
ヒトに生まれながらヒトに蔑まれ、その果てにあらゆる魔性と心を通わせるに至った異端者なり。
そんな彼の下に集う数万の魔物と、周囲に寄り添う見目麗しき魔の姫君たち。
その全員が心の底から信じていた。かの王と共に突き進んだ戦乱の果てにこそ、幸福なる未来があるはずだと。
――かくして、人外たちの王は告げる。
大軍勢の放つ熱気に黒き髪をなびかせながら、右手を掲げて高らかに。
「これより我らは、敵対者どもへと最終決戦を仕掛ける。誇らしき仲間たちよ、我が背に続けー--ッ!」
『ウォオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!』
『魔王エレン』の放ったその一声に、魔の軍勢は喝采の声を返したのだった――!