4話 エリーゼのために①
前話のあらすじ:魔神はロリコンでした。
(魔王も色々苦労してたんだな…)
魔人に拉致された上に子供の頃から辛い思いをしてきたに違いない。
…この頃はそう思っていた。
世の中には想像も付かない世界があるとは知らずに。
「なぁ、魔王ってどうしても倒さなきゃいけないの?」
「…私は魔神のクソゴミクズカス野郎の思惑を阻止出来れば、別に魔王はどうなったっていいわよ。でもさっき言った通り、【番になれるのは1回だけ】だから、助けても魔王とチーレム出来るわけじゃないわよ?」
「チーレムは別にユリアがいたら興味は無い。その魔王は俺にとっては同じ世界から来た人間だし、少なくとも助けてあげたいんだが」
「…それが貴方の選択なら、それでもいいとは思うけど…」
頬を赤く染めたユリアはどこか思うところがあるようではあるが、異論はなさそうなので、その方向性でいこう。
長きに渡って、魔神にいいようにされてきたであろう魔王は、魔神のことも嫌っているだろう。同じ世界の人間同士とわかれば、手を取り合って魔神を倒すきっかけも作れるかもしれない。
きっと苦労を重ねて暗い思考が進行した結果として悪に身を投じているだけで、魔神の束縛から逃れられるなら話が変わってくるに違いない。
「じゃあ早速魔王を助けに行くか。魔王がどこにいるかわかるか?」
「そこにいるけど」
「は?」
(え?さっきまで何もいなかったよね!?)
そこには俺と同じ黒髪黒目…じゃなくて金髪青目の美人がいた。何故かピッチピチの水着を着ていて露出が多いどころではなく、目に毒である。
ユリアの手前他の女性をジロジロ見ていられないと察した俺は、さっと目線を外す。
「やっほ~。魔神さまに聞いて来てみたけど、あなたが創造神が転移させた地球人?私と魔神さまの愛の巣をぶち壊しに来たって聞いたけどほんとー?本当だったら、今すぐあなたをコロリしてこの世界から消滅させなきゃいけないんだけど」
「思ってた展開と違うんだが」
幼女好きの魔神に連れ去られてイヤイヤ従っているのかと思ったのに、愛の巣とはなんぞや?
「俺はキミを助け…」
あ、自己紹介もまだだったな。
「俺の名前はジュンイチだ。キミは?」
「私はエリーゼ。というよりあなたドイツ語喋れないー?ドイツ語の方が喋りやすいし、日本語は日本の漫画とかアニメとかラノベで勉強してるけど、難しいんだけどー?」
「ぐ、グーテンモーゲン?」
「イヒヴァイスニヒト、ウォファンドゥシュプレイストゥ。エスイスティアツトミタグ」
「…ごめん、ドイツ語なんてあんたバカぁ?な展開のアニメでしか見聞きしたことは無いんだ…」
「…」
ユリアは口を挟まずにいるが、難しい表情をして俺を見つめている。そういう表情もカワイイ。
エリーゼは俺の恥ずかしい語力があっさり暴露されたことについて呆れている。
「同じ転移者だと魔神から聞いているなら話は早い。君は魔神に地球から転移されたと聞いたけど、色々と辛い思いをしたりしてきたんじゃないのか?」
明るく振舞っているが、過去の思い出を誤魔化すためにあえて道化を演じているのでは?
「ぜんぜんー。魔神さまは毎日オヤツくれたし、めちゃくちゃ可愛がってくれたし、地球にいた頃より愛されてたわよ?あなたと違って魔神さま超絶イケメンだし、むしろ触って!好きにして!ってある程度の年で思ってたぐらいよ?」
「思っていた展開の斜め下どころか真下を突き進んでいるんだけど!?」
話をしてわかるような展開じゃないのだが、どう収集を付ければ良いのか…。
「シャッフンゴット。エアイストウンターミア。ワルンハスドゥエスアンポーレン?」
「ファインリッヒマグ、ウィエスアウシーツ。ダスイストアレス」
「…頼むから俺に理解出来る言葉で会話してください。お願いします…」
「要はあなたは頭弱そうなのになんで転移者に選んだの?と創造神に聞いたら、見た目が好みだからと返事が返ってきたところー。あとわかってないようけど今は正午だからグーテンモルゲンって挨拶は間違ってるよねー?」
「…」
俺の心はすでに折れていた。
いつも私の小説をご覧くださり、ありがとうございます!
ちなみにドイツ語の耳コピは間違ってる可能性大です。
そしてカタカナ訳は私の耳にはそう聞こえました程度です。専門家の方が見ればおかしいかもしれません。
作者は「グーテンモーゲン」ぐらいしか存じ上げません。
今後もお楽しみいただければ幸いです。
ぺこり。