0話 夢オチじゃない異世界転移
明るい日差しが降り注ぐお昼ごろ。
赤いボディーが圃場で目立つ60馬力のトラクターに乗る。トラクターの進行方向の後ろ側には、美しい大地が広がっている。
「今日もいい天気!土も乾いてるし畑を耕すのには最高だね!」
(…そろそろ畦が近づいてきたかなー。ハンドル切ろうか)
PTOは自動で切れるように設定しているため心配ないけど、作業機が上がっている事を示す警告音が鳴る。トラクターはハンドル操作に従い自動で片輪ブレーキをかけて急旋回し、180度Uターンする。
Uターンした先にはキレイにラインを引いたかのように、耕されて黒く見える地面と、まだ耕されていない茶色い地面が左右に分かれている。
いま耕している畑の向こう側には、大きく育ったキャベツや白菜の畑がある。
「あなたー!お昼ご飯ですよー!」
おや、俺の可愛くて胸の装甲が強靭で、しかも料理が上手な完璧な奥様が【ランチデート】のお誘いに来てくれたようだ。
「ちょうどキリのいい所だしお昼にしようか!」
俺と可愛い妻ユリアの生活は、平凡ながらもとても幸せなものだ。
ユリアの大きくなってきたお腹からは新しい命も誕生してくるだろう。
「ユリア、愛してる」
「もー、ジュンイチ、私も毎日愛してるって言ってるでしょー。…チュッ」
ほっぺたチューいただきました!
今日も我が愛妻は可愛いしセクシーだし最高だ!
「ところであなた、そろそろこちらの世界に来てもらえないと困るわよ?」
こちらの世界とは何のことだろう?
「こちらの世界を維持するために、あなたとそのトラクターが必要なの。私がこの世界に干渉出来るのもあと少しの時間だけ。少し無理やりだけど後で怒らないでね」
ユリアの唇が俺の唇と触れ合った。そしてそのまま舌が…!?
…触れ合うことは無かった。
直後に激しい虚脱感に襲われた俺はトラクターの座席で目を覚ます。
「夢だったのか…!?」
寝ぼけながらも現実に戻った俺は、周りを見渡す。あまりにもリアルな夢を見た時は、それが現実なのか夢なのか確認したくなる。その状態だ。
だがトラクターに乗ったままの俺の周りの景色は一変していた!
見たことが無い景色。
「ここはどう見ても俺がいた畑じゃない…」
俺の人生は一変するのかもしれない。
いつも私の小説をお読みいただきありがとうございます!
今後もお楽しみいただければ幸いです。
ぺこり。