表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
GAME  作者: 普久原 なみ
19/24

第16章 絶望

俺達は、もう一度あの宝箱のあったポイントで集まっていた。






爆発までの残り時間・・・47分11秒・・・








「・・・・」







どれほどの沈黙が続いただろう。







そんな中、最初に口を開いたのは、麻美だった。






「私達・・・ここで死んじゃうのかな・・・」






「そんな事あらへんて!・・・きっと、なんか他にここから出れる方法があるって・・・きっと・・・」







啓悟も本当はわかっていた・・・







「・・・・」






「優!お前も黙っとらんとなんか知恵貸せ!・・・」






もう他に手が無いって事・・・








「俺、思うんだ・・・俺達にこんなゲームをさせてる奴は、本当に俺達をこっから出すつもりがあったのかって・・・」






「どうゆう事や?」






「この無線機の時間差の事もそうだけど、俺がもし、お前らと会っていない状態で、先に俺がこの宝箱を開けたら、仲間を見つける時間とそこから出口のポイントに行く時間・・・どう考えても40分じゃ足りないんだ・・・」




「ほんまやな・・・確かに俺ら偶然にも3人集まっとったから良かったけど。その事考えたら、絶対間にあってへんわなぁ・・・」







「じゃあ、私達がしてた事って無駄だったのよね・・・」






「いや、そうでもないんだ」





「どうゆう事や?」






「俺達の無線機の中に、たまにノイズがまじっただろ?数は6回・・・別に規則性もなかったし、俺は何かあると思うんだ・・・」







「ノイズねぇ・・・」






「でも、もう出口は開かないのよ!他に出口はないし・・・もう無理なのよ・・・ここから出るのは・・・」







「諦めたらあかんって!」






啓悟は、麻美を勇気づける・・・だが、空気はどんどんと重苦しくなる一方だった。







「麻美ちゃん、ここから出たいよなぁ?・・・」






「出たいけど・・・もう出口が・・・」







「いやっ、あるんだ・・・たった一つの出口が・・・」


「!」






「とりあえずついて来てくれ」






優は、そう言ってそのまま無言で歩き始めた。







麻美も啓悟も半信半疑の状態で優の後に続く・・・







だが、啓悟は気付く・・・優の向う出口を・・・







しばらく歩き続けた。優もこの建物の構造に慣れてきたのか、最初の頃とは全く違う速さで目的地に到着した。








「ここって・・・」






「そう・・・俺と麻美ちゃんが初めて出会った場所だ。この窓から外へ出られる・・・」







「・・・ちょっと待ってよ!この窓じゃ優も啓も出られないじゃない!」







「そんな事気にせんでええて!」






「嫌よ!私、1人じゃ出たくない!」






「俺達は大丈夫やから・・・」






「嫌!絶対に嫌よ!3人じゃないと、ここから出る意味ないじゃない・・・だから嫌!」


「麻美ちゃん、聞いてくれ・・・俺さ、赤ちゃんぐらいの時に両親をなくしたんだ。赤ん坊だったから、全然記憶にないんだけど、でもたった1人、親代わりになってくれた人がいてさ・・・その人が、死ぬ時こう言ってきたんだ…「私達の分まで生きて」ってさ・・・だから・・・」







「だから、俺達の分まで生きろって言うの?・・・そんなのなんか重いよ・・・」







「何言ってんだよ!今は、そんな事言ってる暇はねぇんだぞ!」







「でも・・・」







「頼むわ。麻美ちゃん・・・」






“サッ・・・”







優は、麻美の手を引っ張り、体を抱えて、無理やり外に出そうとする・・・







「嫌!私、1人でなんか全然嬉しくない!」







そして、麻美は優によって、無理矢理外に出されたと同時に、内側から鍵をかけた。







“ドンドンドンッ”






麻美が窓を叩く・・・






「・・・優!・・・啓!・・・開けてよ!私・・・1人じゃ何も出来ない・・・」







泣きながら窓に向って叫ぶ!


「どんなにかかるかわかんないけど、一緒にここから出るって言ったじゃない!」






「ごめん・・・約束破っちまったかな・・・」






「・・・大阪・・・案内してくれるって言ったじゃない!・・・」






「スマンなぁ・・・そらまた今度や・・・」






「そんなの・・・2人共、勝手だよ・・・」






「いいから早くこっから離れろ!こんなゲームを仕掛けてくる奴なんだ!いつ爆発するかわかんねぇんだぞ!」






「だけど・・・」





「いいから早く行くんだ!!」





優が叫んだ・・・






その声を聞くと、麻美は森の奥へと走って行った。







「ええんか、あんな言い方して・・・」





「いいんだよ・・・もう目の前で誰かが死ぬのは見たくない・・・」





「なるほどなぁ。でも、とうとう返せんかったなぁ~、あのCD・・・」





「ああ、あれか・・・かまわねぇよ」





「でもあれ、先生からの、誕生日プレゼントやったやろ?」





「ああ・・・でも、もういいんだ・・・」





「そうかぁ・・・でもあれ貰った時、困ったよなぁ」





「そうだったな、ディスクがあっても、肝心のプレーヤーがなかったもんな!(笑)」





「そんで、次の俺の誕生日にCDラジカセ貰て、2人で喧嘩しもって聞いてたもんなぁ(笑)」





「そうだったよなぁ・・・」





「ラジカセで思い出したけど、ラジカセに―」





優と啓悟は昔の話しをして時を過ごした。




そして・・・その約30分後・・・




時間通り・・・建物は爆破された。





その音は島中に響き、麻美の耳からは一生離れられない音となった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ