第15章 過去
「うぉ~すっげぇ!」
「おいしそう~」
「なんかあったの父さん?」
「会社で、昇進したのよ」
「昇進?」
「会社で、偉い人になる事だよ」
「へぇ~、じゃあパパもお偉いさんになったんだぁ」
「ねぇ?何になったの?」
「フフフッ、聞きたいかぁ~?」
「うん!」
「フフフフフッそんなに聞きたいかぁ~?」
「聞きた~い!聞きた~い!」
「オッホンッ・・・パパ、専務になったんだ!」
「すっげぇ!」
「だろ?(笑)」
「ねぇお兄ちゃん・・・専務って何?」
「ん~、そうだな、専務って言ったら、学校で例えると、教頭先生ぐらいかなぁ」
「すご~い!パパすご~い!」
「ハハハッ(笑)、そして今度の火曜、久しぶりに休みがとれた。そこでだ、その火曜日に、家族4人でどっか行くかぁ!」
「やったぁ~!」
「で?どこに行きたい?」
「俺、USJに行きたい!」
「私も!」
父「わかった!じゃあ次の火曜、USJに行くぞ!」
「やったぁ!」
「さ、早く食べちゃいなさい。冷めたら、おいしくなくなるわよ」
最後のおかずをテーブルに並べ、母がテーブルに座った。
「いただきます!」
「いただきま~す!」
「いただきますっ!」
「ウフフッ・・・どおぞ、めしあがれ」
「うぉ!うまいなぁ~これ!さすがママだ!(笑)」
「おいしい~!」
午前1時・・・食事も終わり、子供達は自分の部屋で眠りにつく。
その頃、父親と母親はリビングでお酒を飲んでいた。
「乾杯~。」
「ふーぅ、うまいなぁ」
「お疲れ様。専務。」
「フッ、ありがとう(笑)」
「それにしてもいいの?子供達にあんな約束して・・・」
「あぁ、久しぶりの休みなんだ、今まであんまりかまってやれなかったからな。やっとデカい仕事終わらせて、昇進もしたんだ、たまには家族水入らずもいいんじゃないかぁ」
「そうじゃなくて、またゴルフなんて言わないわよねぇ?」
「大丈夫だってっ(汗)」
「そう?じゃあ、あたしも楽しみにしておくわ、USJ(笑)」
「任せとけって!」
そして、運命の日がやって来た。
「お前ら、忘れ物はないかぁ?」
「うん!」
「早く行こうよ!」
「おぅし!出発進行!」
「お~!」
僕達は車に乗って、目的地に向った。
「ねぇパパ、ちょっと桜川銀行に寄ってくれない?」
「銀行?わかった」
「ごめんね・・・」
「え~!直で行かないの?」
「まぁ少しぐらい良いだろ?USJは、逃げないぞ!」
「わかったぁ・・・」
そして、僕達は銀行に到着した
「じゃあ、あたし行ってくるわね」
「じゃあ俺もついて行くよ、もうちょっと財布に入れときたいしね」
「え?でも、子供達が・・・」
「大丈夫だろ?2人共もう中学生だ、ここで待ってられるよな?」
「オッケェ!」
「な?子供達もこうして言ってる事だし」
「えぇそうね、一緒に行きましょ」
「じゃあ、麻美を頼んだぞ!京介!」
「おぅ!」
「私、そんなに子供じゃないよ!」
「あぁ、ごめんっごめん!」
「じゃあすぐに戻ってくるからね」
それが、父と母の最後の言葉でした。
後午4時20分
“キーンコーンカーンコーン”
「ふーぅ・・・やっと終わったぁ~!」
6限目の終わりの合図と共に、1人の女の子が叫んだ
「ねぇ、晴奈!今日、“あの場所”に行かない?」
「え?あの場所?」
すぐには、思い出せなかった。
「ほらっ、私達の思い出の場所・・・」
「あ!あそこか!・・・いいけど、美帆、今日部活どうすんのょ?」
「大丈夫だって!顧問の武田、今日出張でいないから、部活自主練にするらしいし、それに部長のアタシもエースの晴奈も、たまには羽のばさないと!ぶっ倒れちゃうよ(笑)」
「ん~どうしよっかなぁ~?(笑)」
気持ちは半分半分ぐらいだったんだけど
「私、マック奢っちゃうからさぁ~、ねぇ?サボっちゃおーよ♪」
この言葉が決め手かな。
「うん!わかった♪」
ダイエット中だけど、今日は特別!なんか単純な私・・・
そうゆう訳で、私は美帆の提案に乗った
“ガラガラッ!”
突然、教室のドアが勢いよく開いた
「七瀬!七瀬は、いるかぁ~?」
それはこのクラスの担任の先生だった
どうやら、美帆の事を呼びに来たらしい・・・
「ここだよ。先生」
「おぉ、そこにいたのか」
「で、なんかようなの先生?」
「なんかようって、今日お前、来月の陸上競技大会の生徒会会議だろうが」
「へ?」
「もしかして、忘れてたのか?お前、陸上部の部長だからって、このクラスの代表買って出ただろうが」
「あっ!そうだった!完璧に忘れてたわ」
「まったく・・・ほれっ!早く行け!もう会議は、始まっとるぞ!」
「ごめ~ん!晴奈・・・」
「いいよ、待っててあげるから!」
「本当に!じゃあ、ちゃっちゃと済ませて来る!」
「はいよ(笑)」
美帆は、教室を飛び出して行った。
でも数秒後、また教室に戻って来た。
「ねぇ先生!会議場所ってどこだっけ?」
「体育館だ!急げよ!」
「サンキュ(笑)」
そしてまた飛び出して行った。
「まったく・・・あいつって奴は・・・」
先生も、なにやらブツブツ言いながら、教室を後にした。
それから2時間がたった。
“タッタッタッタッタッタッ”
向こうの方から誰かが、ものすごい勢いで走って来る
美帆が、体育館から戻って来た
「ごめ~ん、晴奈!まさか、こんなに時間かかるなんて思ってなかったわ」
「いいよ全然。じゃあ行こっか!」
普通なら、少しくらい怒るかもしれないけど、美帆はなんか憎めない
美帆とは、幼稚園の頃から幼馴染み。高校生になった今でも、ずっと一緒・・・
でも、ほんとは、3人だったんだ。5年前まで・・・
「・・・ぇ・・・ねぇ?聞いてる?」
「あっ!ごめん!何の話しだっけ?」
「だから、陸上競技の話しだよ!晴奈、短距離出るんでしょ?」
「もちろんよ!」
「だよね!そうゆうと思って、もうエントリーさせちゃった(笑)」
「嘘!?サンキュー(笑)でもさぁ、もし私が出ないって言ったらどうすんの?(笑)」
「大丈夫!私、信じてたから(笑)」
「何よそれ(笑)」
私達は、そんないつもと変わらない話しをしながら、途中、買い物をして、“あの場所”に向った。
「ふーぅ!着いたねぇ~(笑)」
「懐かしいなぁ~、この潮の匂い(笑)」
「何年ぶりだっけ?」
「千鶴が居なくなってから、来なくなったから、5年ぶりかなぁ・・・」
「5年ぶりかぁ・・・もうそんなにたつんだね」
ここは、私達の思い出の場所(?)というよりかは、私も美帆もあの日を境に忙しくなって、ここに来る暇がなかったって方が正しいかな。
まぁでも、やっぱり思い出の場所にはかわらない。私と美帆と千鶴の・・・
―5年前―
「ねぇ?早く教えなさいよ!(笑)」
「イヤよ(笑)」
「うわぁ~、なんか距離感じちゃうなぁ」
「せめて、名前とか歳ぐらい教えてくれたって、いいじゃないよ(笑)」
「私、マックおごるからさ!(笑)」
「アタシも!(笑)」
晴奈と美帆は千鶴を説得する。
「ダァメ(笑)だって、私、今、ダイエット中だし(笑)」
「そんな事、言わないでさぁ~ねぇ?(笑)」
「しょうがないなぁ~(笑)、じゃあ言うね?」
「名前は肇さん、歳は21・・・」
「ふ~ん、21ねぇ~って、21って私達と8も離れてるじゃん!」
「13と21は、犯罪でしょ!」
「そんな事ないわよ!とっても優しくて、いい人なんだから!」
「ん~・・・まいっか!千鶴の事だし!(笑)」
「で?いつ知り合ったのよ、その肇っていう人とは?」
「もう!それ以上聞かない約束でしょ。あっ!いっけない、もうこんな時間だ、私行かなくっちゃ」
「ほんとだ!私も帰んないと」
「そうだね、じゃあそろそろ帰ろっか」
“ププッー”
3人が帰ろうとした時、急に車のクラクションが鳴った。
「ごめ~ん、迎えが来たからもう行くね!」
「え?迎えって、例の彼氏?」
“タッタッタッタッタッタッ”
千鶴は、走ってその車に向う・・・途中、こっちに振り返り、叫んだ
「晴ぅ~!美帆~!落ち着いたらちゃんと話すからぁ!」
「オッケェ~!」
美帆も大声で応えた
千鶴はその車に乗り込み、しばらくしてから走り出した。
それが千鶴を見た最後の姿だった。
そのまま千鶴は行方不明になって、その事に気付いたのはその3日後だった。
千鶴の両親も、1週間後にはどっかに引越ししちゃって、結局その後、千鶴がどうなったのかは、分からずじまい
そのまま5年の月日が経ったてた。
「ねぇ?今日は、なんでここなの?5年ぶりだし・・・」
「実は…私、彼氏出来たんだ!(笑)」
「嘘!?良かったじゃない!おめでとう!」
「ありがとう(笑)」
「で?相手はやっぱりあいつ?」
「うん!昨日メールで告ったらOK貰ってさ」
「で、思い出のこの場所で、発表てわけか」
「うん。千鶴がいたら、多分ここで、言ってたと思うし、千鶴にも届くかなぁ~なんて・・・」
「何言ってんの!千鶴はまだ死んでないわよ」
「そうだよね・・・」
「でも、美帆にも彼氏が出来たのかぁ~」
「晴奈もがんばりなよ!」
「ねぇ・・・」
「どうしたのよ?」
「美帆は、どこにも行ったりしないよね?」
「何言ってんのよ!そんなの当たり前じゃない!私達ずっと一緒だよ」
「だよね!ずっと一緒・・・」
そんな約束をしたのに。
私から約束したのに・・・
私は今・・・
地獄にいます。
誰か助けて・・・
薄暗い工場の様な場所だった
「さぁ目を覚ましたまえ!肇君」
スピーカーからした声で俺は目を覚ました。
「・・・ん・・・ここは・・・」
「ふんっまだ寝ぼけているのか?」
「・・・ハッ!?・・・」
俺は、両手両足に鎖が繋がってるのを見て、全てを思い出した。
ここがどこなのか。
今、喋ってる奴が誰なのか。
「・・・で?・・・今日は俺に何のようだ?」
「何のようだと?ここにいるのならその答えは、既に出ているはずだが」
「何?」
「それに、私達組織は君に用は無い・・・“君の中”にいる奴と話しがしたい」
「ちょっと待てよ・・・約束が違うぞ!」
「約束?」
「あぁ・・・この前の医者で最後の仕事だったはずだ!」
「あぁ・・・そうだったな」
「そうだったじゃねぇ!じゃあなんで俺はここにいる!」
「だから、もう答えは出ているはずだ・・・」
「また・・・仕事をしろって事か・・・」
「フフフ・・そうゆう事だ。さぁ、早くキミの中の―』
「ふざけるな!!」
間髪入れず、肇が叫ぶ
「・・・・」
「もう一度、仕事をしろだと!?もうお前達組織には、借りなんか残ってねぇ!金も全部渡した。もう関係ねぇだろ!?」
「関係ないだと?組織の情報を握っている人間を、簡単に外へ出すわけには行かないのだよ。それに、必要なのはキミではない・・・」
「あくまで、俺達に仕事をさせたいようだが、前にも言ったように、この前の仕事で最後だ。もう仕事はしない・・・」
「果たして・・・そんな事がいえるのかな」
「どうゆう事だ!」
「肇君、キミには最近、恋人が出来たようですね。まだ少女じゃありませんか・・・」
「まさか!?・・・千鶴?・・・ちょっと待てあいつは関係ねぇ!」
「関係ない?そんな事はありませんよ。組織の情報を握ってるキミの恋人ですよ・・・関係なくはないでしょう」
「・・・千鶴・・・・千鶴は?あいつはどこにいる!」
「彼女は今、別室でぐっすり眠ってますよ・・・」
「貴様ら・・・卑怯だぞ!」
「卑怯?・・・人聞きの悪い、これはあくまでビジネスです。組織の秘密を守る為にしている事なんですよ」
「わかった・・・次が最後だ・・・その代わり、次の仕事が無事に終われば・・・あいつを・・・千鶴を解放しろ・・・」
「わかりました・・・その約束は守りましょう。ただし無事に完了出来ればの話しですがね・・・」
スピーカーから、声がして表情はわからなかったけど、こいつが笑っているように思えた。
「わかったよ。やってやるよ」
「では、交渉は成立ですね。それでは早く呼んで貰いましょうか。仁様を』
肇は静かに目をつぶった。
「パチッ・・・」
そして、大きく目を開けた。
「ふーぅ、やっと出てこられたぜ・・・」
肇と、仁の人格が入れ替わった
「おーい・・・なんだこの鎖は早く外しやがれ!」
その言葉を聞くと左右にあった扉から黒服の男2人が仁の手足についていた鎖を外しにやって来た。
“ゴキッ!バキッ!”
鈍い音が部屋に響く。
“ドサッ・・・”
2人の男が倒れた。
仁は、一瞬のうちに2人の男の首を折った。
「ありがとよ、そいつは俺様からの礼だ・・・あっ、もう聞こえねぇか・・・・・んで?おっさん!次の仕事はなんだ?」
「えぇ次の指令は銀行強盗です・・・」
「銀行強盗だぁ?殺しじゃねぇのかよ?」
「はい、確かに殺人が主体ではありませんが、邪魔になる人間は殺して貰っても構いません。その代わりと言ってはなんですが、私達組織の人間を今回の任務に参加させて頂きます・・・」
「フンッ・・・構わねぇが、足手まといになるなら俺様が片付けるが・・・構わねぇか?」
「いいでしょう・・・」
「じゃあ決まりだな」
「はい、それでは、任務は明日、場所は桜川銀行、こちらからはうちの組織の者3人をつけさせて頂きます。それでは、いつものように隣りの部屋で装備を整え下さい・・・」
“タッ、タッ、タッ・・・”
仁は無言のまま、隣りの部屋に向った。
―そして、翌日―
“バンッ!!”
勢い良くドアを突き破り銀行に侵入した。
「いいか!ここに金を入れろ!!」
近くにいた店員にバッグを投げ付ける。
銀行員は、言われるままバッグにお金をつめ始める。
その行程を見ていた仁に思いも寄らない出来事が降りかかる。
それは、仁が銀行員からバッグを受け取った瞬間に訪れた。
“ドォォォン!!”
仁の足に激痛が走る。
一瞬の出来事に、仁の思考が一時停止する。
組織の人間に足を撃たれたのだ。
その時、仁はさとった“裏切られた”と・・・
組織の人間は、俺様から銃を奪い、周りにいた銀行員と客を次々に撃って行く。
「・・・貴様ッ!・・・一体・・・何を・・・」
「上からの命令でね、あなたはここで終わりです」
「・・・なん・・・だと?」
男は電話をかける。
「もしもし・・"はい、任務は完了です。はい・・・それでは・・・」
男は電話を切り、すぐに他の場所へかけ始める
「もしもし!大変です!桜川銀行に強盗が!早く来て下さい!さっきから銃声もして、とにかく早く!」
「何を!?」
「言ったでしょ・・・あなたはここで終わりです。いいですか、警察に組織の事を話せば、あなたの・・・いや肇様の恋人がどうなるか・・・わかっていますね・・・」
男は俺様からバッグを奪い、銀行をあとにした。
その数分後、警察が到着し、俺様の刑務所暮らしが始まる事となった・・・と同時に、組織への復讐計画も俺様の中で生まれた。




