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GAME  作者: 普久原 なみ
15/24

第13章 希望 続き

残り時間・・・19分24秒・・・






“コトッ、コトッ、コトッ、コトッ・・”






「え~と次を右か」






優は、確実に出口のドアに近付いていた。






“ザァ・・・ザァ・・・”






まただ・・・






また無線機にノイズが・・・






これで、3度目、一体、どうゆう事だ?






まさかっ!?






優は、何かひらめいたようだった。





“カチ・・・”





「〈どうだそっちは?〉」






「《どうって・・・相変わらずや、似た様な所をひたすらな・・・》」






「〈そうかぁ〉」






「《そうや!俺らもさっきノイズがあったで!優が言ってたように、しばらく歩いたら、だんだん聞こえんようになったわ!それと、ちゃんと優の指示どうりにしとるから、心配せんでええで!》」






「〈わかった。なんかあれば、また連絡する〉」






「《あいよ!ほなっ・・・》」






“ジー・・・”






そうかぁ。啓悟の所にもあったか。これで4・・・





“コトッ、コトッ、コトッ、コトッ・・・”






優は歩き続ける。








残り時間・・・15分47秒・・・





一方、啓悟と麻美は。


残り時間・・・30分14秒・・・





“コツッコツッコツッ・・・”






「優は、学校でもあんな感じだったの?」






「ん?どうゆう事や?」






「だって、なんか普通の学生生活を送って来たようには思えないわ、さっきだって、考え事があるからとか、思考がちょっと特殊っていうか・・・優の頭の中の選択と行動はとにかく、的確なのよ」






「あぁ、その事かいな。確かに優は、飛び抜けて優秀やったで!学校ん中でも有名やわ!なんせIQ300越えの超天才児やからなぁ」






「IQ300って、数字が大き過ぎていまいち、ピンとこないわ」






「そうやなぁ・・・例えて言うんやったら、あの、エジソンが一生かけて成し遂げた研究を、たった一年で完成させてしまうんや」






「ッ!?嘘でしょっ?」





「嘘ちゃうって!俺は正直者んやで!」






「でも、それだけ凄い人がいる学校だったら、テレビとか出ててもおかしくないと思うけど・・・」






「まぁ、うちの学校はかなり特殊やからなぁ」






「なんて言う学校なの?」






「本来は、極秘事項なんやけどなぁ・・・」






「いいじゃない。名前だけなら問題無いんじゃないの?」






「いや、名前聞いてまうと、他の事も聞きたなる思うしなぁ」






「そう・・・」






「わかった。んなら、名前だけやで」






「うん」






「俺らの学校の正式名称は、え~と、確か『全国選抜天才児育成研究所(ぜんこくせんばつてんさいじいくせいけんきゅうじょ)』んで、長いから俺らは学校言うてんねん(笑)」






「・・・・・・」






「っんな?ツッコミどころ、満載やろっ?」


「確かにそうね。でも、ここから先は聞かない約束だもんね」






「すまんな。機会が出来たらまた話すわ」






「うん、ありがと・・・」






「その代わり、俺や優の事やったら、どんどん聞いてや!」





と、その時いきなり、無線機が鳴った。







「〈おいっ!今、無線機にノイズみたいな音、入らなかったか?〉」






それは突然した、優の連絡だった。






「《いやぁ、そないな音、せんかったけど。なぁ 麻美ちゃん?》」





「《えぇ、何も聞こえなかったわ》」







「〈そうか・・・〉」






「《なんかあったんか?》」





「〈あぁ、ついさっきだ、俺も出口のポイントに向っていたら、急にこの無線機に“ザァー”って、ノイズが入ったんだ。ただの電波障害だと思って、お前らに連絡したんだけど。でも、違うみたいだなぁ〉」






「《そうかいなぁ。俺らは、うんともすんとも言わんかったけどな》」






「〈わかった。またなんかあったら、連絡する〉」






「《はいよ・・・》」




「一体、何が起きてるのかしら?」






「さぁな、でも、電波障害かぁ。確かに、優にノイズが入った時に、俺にもノイズがあれば、わかるんやけどなぁ」





「えっ?どうゆう事?同時にノイズが入ればわかるって?」






「ええか?そもそもノイズが起こるんは、大気が乱れた時なんかに、ラジオとか無線機みたいな受信機能がついてるもんに入ってくる電波なんや。」






「ちょっと待って、でも、なんで優は、あんなに慌ててたの?それに、わざわざ確認を取るほどの事じゃないんじゃないの?・・・だって、ノイズって、どっからか流れ込んだ電波なんでしょ?」






「確かに、流れ込んだ電波自体はさほど重要や無いんや。問題なんはこの区域、最低でもこの建物内全域が圏外って事や」


麻「?」





「圏外ゆーんは、電波が全く入ってこうへん空間やで?そこに、理由はどうあれノイズなんか入って来よったんや・・・大問題やで!」






「あっ!そっか!圏外域にノイズが入るって事は、近くの場所に圏外じゃない場所があるって事。だから優は、あんなに慌てて・・・」






「そゆこと。やけど俺はこう思うねん。【圏外は作られたもん】ってな」






「作られたもの?」






「そうや。起きた時に、携帯みて圏外や。って知ってんけど、そん時は単純に【この建物ん中は電波が入らんのや】って思ってたんや。でも、この建物ん中でちっさい窓見っけて、そっから携帯出して電波探しとったんやけど、結局圏外のままやったわ。でも そんとき窓から外の景色みて、思ったんや【おかしいな】ってな」






「私も、その窓から優と一緒に見たけど、周りは深そうな森だったし、圏外って事に違和感はなかったわ。都会の真ん中だったら別だけど・・・」





「そこやねん。ひとつ矛盾があるとおもわんか?」






「どうゆう事?」





「確かに、都会やったら違和感あんねんけど、逆にまわりが森ってとこにも違和感が出てくんねん」





「まわりが森で、出て来る違和感って・・・・・あっ!」





「気付いたか?」





「この建物!

そうよね、森の中にこんな建物がある自体、不思議だもんね」






「な?仮にここが無人島でも、人が住んどる島でも、こんな大規模な建物ん作るんやったら、絶対にそれ相応の人手がいるはずや。それやのに圏外っておかしな話しやろ?」





「確かにそうね、電波がなかったら、連絡取れないもんね。あっ、でも、無線機なら圏外でも連絡出来るんじゃない?ほらっ!さっき優と通信できてたし・・・」






「ホンマや!無線機の事、考えてなかったわ」






「はい!啓の推理、大ハズレぇ(笑)」






「クソ~、爪が甘かったかぁ~」





「でも、すごいと思うよ。私なんか、優や啓に聞いてばっかだし」






「なんや、慰めてくれるんか?ええ子やなぁ(笑)」






「でも、本当の事よ。私も、啓や優みたいにちっちゃい頃から頭がよかったら、もうちょっと良い学校に楽に入れたかなって(笑)」






「ハハッ、確かに俺は、物心ついた時から、同年代やちょっと歳上には負けんぐらいの頭脳はあったけど、優は・・・」





「優がどうかしたの?」






「あいつ、数年前までは、普通の学生と変わらんかったんや

あいつ・・・俺と同じ孤児院で育てられたんや」






「孤児院?」






「あぁ、俺は捨て子で 優は赤ん坊の時に両親を無くしてな・・・」






「そうだったんだぁ・・・」






「んで、そんな俺らを拾ってくれたんが、そこの孤児院の創立者であり、たった1人の先生の恵理子(えりこ)って言う若くて美人な人やった・・・」






少し、啓悟の表情が曇った。





「俺らが、小学校ぐらいの時期やあの事件が起きたんは・・・・」






「あの事件?」






「孤児院にいた子供、俺と優以外全員が殺されたんや・・・」





「嘘ッ・・・」





「そん時、俺と優は外で遊んどってな、院内に戻った時にはもう全員死んでた。んで、そん時に優は犯人に持っとった果物ナイフで腹、刺されたんや。まぁ奇跡的に命に別状はなかってんけど・・・それ見て、俺・「「ビビってもてな。その場から逃げたんや・・・次に院内に戻った時は、呼んだ警官と一緒やった・・・」





「それで?犯人は捕まったの?」






「犯人か?死んどった・・・持っとった果物ナイフで自分の首斬って、子供達といつもみたいにお昼寝をするように・・・」





「まさか!?犯人って!?」






「そう・・・恵理子先生や・・・」


「そんなぁ・・・なんでなのよ」






「さぁな。警察は多額の借金が動機やって言っとったけどな」






「借金・・・」






「あぁ。話しを戻すけど、そんとき優の腹、刺された言うたやろ?確かに、命に別状はなかったんやけど・・・」





「なんかあったの?」






「実はそんとき、刺されたとこが悪くてなぁ、下半身の神経が逝ってもて、もう立たれへん身体になってもたんや」






「えっ?でも待って!優、普通に歩いてたよね?」






「そう。おかしいやろ?一生立たれへん体やのに、あいつピンピンしとんねん。それも、最近の事やないんやで!?」






「どうゆう事?」






「その事件から1週間後や俺も優も落ち着いた頃でな、俺が優の入院しとる病院に見舞いに行った時や、なんや個室に移されとってな、いちいちナースステーション行って聞いたんや」

ほんで、優の部屋の前に来た時や ノックしてんけど全然返事なくてな、寝とるんや思て、せめて持って来たマンガだけでも置いてったろ思てドアを開けたんや

でも、そこはもぬけの殻やった。

その後、病院の人と血眼になって探したけど、結局そのまま消えてしもたんや・・・

そっから数年後、俺が例の学校に通っとった時や珍しくもなかってんけど、転校生が来るっちゅう事になってな、普通やったら別に驚かんねんけど、その転校生言うんが・・・」



「優・・・」







「そうや。あの天才頭脳と歩ける身体を手に入れて帰って来たんや」






「病院を抜け出した後、一体、何があったのかしら・・・」





「さぁな。それだけは、あいつも教えてくれへんかった・・・というより、病院から出た事も、今なんで普通に歩けてるのかも、全然記憶に無いそうや」






「そんな事があったんだ・・・」





「やから、優の天才頭脳の秘密は、わからんまんまやねんなぁ」






その時、また優からの通信が入った。






「〈まただ!またノイズがあった!そっちはどうだ?変化なしか?〉」






「《またかいなぁ。こっちは、ノイズなんか全然ないで!》」





「〈そうか。でも、なんかあるかもしれない。そっちでもノイズがあったら、そのノイズがあったポイントを地図に印を入れておいてくれ!〉」






「《わかったわ。そっちはどう?どのくらい進んだの?》」





「〈今で大体、半分ぐらいだ〉」


「《私達も同じぐらいよ。残り20分・・・急ぎましょ》」






「〈ああ、じゃあ頼んだぞ。ノイズは音がしたポイントから離れると次第に聞えなくなる、聞こえたら、なるべく早く印をつけてくれ〉」







「《おぅ!まかしとき!》」






“ジー”






通信を切った。






「それにしてもノイズかぁ。一体なんなんやろ?さっぱりやわぁ」






「あっちには あって、こっちには無いもんね・・・」






「まぁ、歩いとったら いつかなるやろ?」






“コツッコツッコツッ”






懐中電灯の光と地図を頼りに、暗闇の中を黙々と2人は出口へと進んで行く。






その時だった突然、無線機から、例の音が流れた。






“ザァ・・・ザァ・・・”






「ッ!?」





「これか、優が言うとった、ノイズっちゅうんわ!」







残り時間・・・19分50秒・・・


残り時間・・・7分28秒・・・







優は出口のドアの前に来ていた。







口もとに、無線機を構えた。





「〈おぃ!そっちはあと、どのくらいだ?〉」







「《俺らも、もう着くわ。今、最後の角を曲っとうとこや・・・・・・・よしっ!着いたで!》」







「〈残り7分・・・どうやら間に合ったようだな〉」






「《しっかし、デカいドアやなぁ。俺ん家の3倍はあんで(笑)》」






「〈まぁでも、これぐらいの方が出口らしいじゃねぇか〉」






「《ヨッシャ!早速、ドア開けようで!》」






「〈あぁ、じゃ、鍵を入れるぞ・・・〉」






“ガチャッ・・”






「《ほな俺も・・・》」





“ガチャッ・・”






「〈準備OKだ〉」






「《そんじゃあ俺が、カウントとるでぇ!》」







「《3!》」






「〈・・・・〉」





「《2!》」





「〈・・・・!!〉」






「《1!》」





「〈ちょ、ちょっと待て啓悟!!〉」


残り時間・・・6分47秒・・・







優は慌てて、啓悟のカウントを止めた。






「《どないしたんや急に?》」






「〈肝心な事を忘れてたぜ・・・〉」






「《なんや?肝心なことて?》」






「〈そっちに秒数までがわかる物、なんかねぇか?〉」





「《私の携帯のストップウォッチ機能なら、秒数までわかるけど・・・》」






「〈ああ、それでじゅうぶんだ〉」







「《一体どないすんねや?ストップウォッチなんか?》」







「〈この無線機の通信の誤差を調べるんだ〉」






「《通信の誤差?》」






「〈ああ。よしっいいか?今から俺がスタートって言ったら、ストップウォッチをスタートさせてくれ〉」






「《わかったわ》」






「〈・・・・〉」






「〈スタート!〉」






“カチッ・・・”






麻美は、優の合図と同時に携帯のストップウォッチ機能を起動させた。



残り時間・・・5分48秒・・・






「〈麻美ちゃん、秒数を数えていってくれ〉」






「《・・・3、4、5、6・・・》」









「〈・・・やっぱり・・・〉」






「《そんで、どんくらいずれてたんや?》」






「〈1秒・・・〉」






「《1秒かぁ。そら、デカいなぁ・・・》」





「《待ってよ、なんでそれがわかったの?私、秒数を数えてただけよ・・・》」







「〈それは、俺も携帯のストップウォッチ機能を使ってたからなんだ。麻美ちゃんが5秒をカウントした時、俺は既に7秒だった・・・〉」






「《・・・?じゃあ、誤差は2秒じゃないの?》」






「〈いやっ、確かに全体的に見れば、時間差は2秒だけど俺がスタートと言って麻美ちゃんに伝わる時間を仮に2秒だとする。すると、俺が2秒の時に、麻美ちゃんがスタートするわけだ。この時、時間差2秒だから、麻美ちゃんがカウントした時間は、さらに2秒の時をへて、俺に伝わって来る。分かるか?つまり、麻美ちゃんが5秒の時(優はこの時7秒)、無線機を通して俺が麻美ちゃんのカウントが5秒だと認識する時、9秒じゃないといけないんだ!〉」






「《でも、7秒だった。だから、無線機を通しておこる時間差は1秒・・・》」






「〈そうゆう事だ〉」


残り時間・・・4分22秒・・・






「《もう残り時間5分きってしもた。5秒カウントすんで!》」






「〈わかった。じゃあ俺は、お前の『1秒』って言葉と同時に鍵を回せばいいんだな?〉」






「《そやな。んじゃ、カウントとるでぇ!》」






再び啓悟が、カウントを取り始めた。






「《5ォ!》」






「《4!》」






刻一刻とカウントが進む・・・






「《3!》」






2人の手に緊張がはしる・・・






「《2ィ!》」






優が構える・・・






「《1!》」






“ガチャ・・・”






優が、無線機から伝わった、啓悟のカウントと同時に鍵を回す。





一方、啓悟もカウントを終え、心の中の『0』と同時に鍵を回す。






建物内は沈黙する。





「《どないや?あかんかったんか?》」





・・・・・。





「〈わかんねぇ。失敗だったのかもしれねぇ・・・〉」





・・・・・・。




「《なんで開かないのよ!!》」




扉は永遠に開く事の無い鉄の塊と化してしまった・・・。

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