どんな手を使っても絶対に生き残ってみせる
1
ドス‥ドス‥
砂が舞い、1m先が見えるか見えないか、そんな砂漠の中、一人の男が歩いている。
男の左腕は根元から抉られたように千切れており、出血を抑える為、黒く薄汚れている布で縛られていた。身長は180 cm程の、日本人にしては長身で、年齢は20代前半に見える。目は少し吊り目で、強面といった印象だ。
ここはどこだ、なぜこうなってしまった。
男は舞い上がる砂の中、残った意識を繋ぎ止め、ゆっくりと前進していく。
先程まであんなに優しくしてくれていたじゃないか。
何故このような目に。
「ウグッ」
男は喉からこみ上げてくる吐き気に抗えず、口の前に右手を伸ばした。
「ゴボッ」
男は右手に付いた血溜まりを見て死を悟る。
あぁ‥酷い死に方だ。私が何をした。しがない営業マンだぞ。結婚もしてない、ましてや彼女さえいない。そんな私がこの様だ。
ガチャッ
男の耳に聞き覚えのある音が聞こえた。
左腕を失うほんの数秒前に書いた音だ。
「君は愚かだ。調子に乗り自分の秘密を、それも数多くの人が集まる酒場で喋るなんて。呆れた男だ。」
この声は何度もこの世界で聞いた。右も左も分からない私を助けてくれた女。身長は160cm程の小柄、顔はいつもフードを被っていて分からなかったが、声は透き通るように綺麗でとても印象に残っている。
「なんでこっちへ逃げているのが分かった?」
「簡単な事。君の背中に発信器を付けていた。いつでも居場所が分かるように。」
女はそう言い返し、
「さようなら」
最後にそう告げて、男の頭に構えていたライフルを撃った。
2
「もう7時か。」
人気が少ない電車の中で男は呟いた。
今日も外回り頑張ったな、、、最近獲得が少なくなっているのが辛い所だが。
そんな事を考えていると、電車内に
「次は府中、府中です。お忘れ物が無いようご注意下さい」
と、次の駅の名が響く。
ようやく地元だ。早く帰って寝たい。そう思いながら降りる支度をし、扉の前へ近づく。
やがて電車は止まり、扉が半分開いたその時
ガチャン!
扉が強い勢いで閉まった。
なんだ?どうしたんだ?
呆気にとられて男が呆然と立っているとまたも駅員の声が響く。
「次は、始まりの街、始まりの街。渡航者様、意識を強く保って下さいませ。」
‥は?なんだ?始まりの街?渡航者様?何を言っているんだ。
呆気に取られている男の疑問は次の瞬間一瞬で吹き飛ばされた。男は気がつくと電車内の椅子へ吹き飛ばされており、ぶつかった衝撃で意識が朦朧としている。数秒間程して男は無理矢理に意識を繋ぎ戻し、窓の方へ向き外を見る。
「ははは‥なんだこりゃ」
外は紫色に染まっており、時々波のように揺れている。
もう、訳が分からない。男は現実逃避か、無理矢理戻した意識を繋ぎ止める事を諦め、目を閉じた。