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第57話 神狼フェンリルをゲットする その1

 カナタはなぜ聖女マリアンヌの元へ向かわないのか。


 それはもちろん彼女を倒すのが目的ではないからだ。


「もっふもふ♪ もっふもふ♪」


 カナタは鼻歌を口ずさみながらフェンリルが囚われているという牢獄へ向かっていた。


『カナタ様、そちらの扉を開けて、地下に下ったところです!』


「はーい」


 フェンリルの案内に従って地下牢にカナタはたどり着く。


 そこには大きな白い狼が繋がれていた。


「モフモフー! 大きいモフモフー!」


 カナタの視界には、神狼の姿しか見えてなかった。


『カナタ様! お待ち下さい! そこには強力な結界が! というか牢が!』


「えっ?」


 カナタは鋼鉄の牢屋を飴細工のように引きちぎり、結界を踏みつける。


 その瞬間、強者ほど強い拘束力を持つはずの結界は、キャパシティの限界を超える強者を拘束しようとして逆に自らが砕け散った。


『……いえ、なんでもないです』


 牢も結界も、カナタには何の障害にもならなかった。


『カナタ様、失礼します』


 フェンリルはカナタの肩から飛び降り、うずくまる白い神狼に頭をすり寄せた。


 そして触れた部分から光があふれ出し、そのまばゆさが地下牢を白く染め上げるほどに強くなる。


 カナタが眩しさから閉じていた瞳を開けると、そこには意識を取り戻した神狼フェンリルの姿があった。


 軋む体をよろよろと起こしたフェンリルは、カナタの前にお座りし、姿勢を正した。


 そして改めて名乗りを上げる。


『我が名は神狼フェンリル改め、カナタ様の従者フェンフェン。元の力を取り戻した今こそ、カナタ様のお力になりましょうぞ!』


『くっ、ちょっと格好良いではないか……』


 誇り高く名乗り上げたフェンリルに、ザグギエルは嫉妬し、カナタは全力で飛びついた。


「大きいモフモフゥゥゥゥゥゥゥッ!!」


『カナタ様!?』


「モフモフ! ハァハァ! モフモフハァハァ!」


 フェンリルの体に顔を押し付け、思う存分モフモフ成分を補給するカナタ。


 だったが、そのテンションが徐々に下がっていく。


「ごわってる……」


『は?』


「なんかごわってるの!」


 カナタはプリプリと怒った。


「ゴワゴワだよー! モフモフじゃないよー! ……あとちょっと臭い」


 長い間、過酷な牢屋生活だったため、フェンリルの汚れは中々な悲惨なものになっていた。


『も、申し訳ありません?』


 カナタによって応急手当て(?)の浄化魔法を受けながら、フェンリルは頭を下げる。


『ふっ、貴様もまだまだ最強(モフモフ)には程遠いとカナタは言っているのだ』


『な、なるほど……。これよりも精進いたしますので、よろしくお願いいたします』


「うんっ。モフモフになってね! とりあえず帰ったらお風呂ね!」


『風呂と強くなることになにか関係があるのだろうか……。いや、カナタ様のすることにはきっと何か意味があるはず……!』


『その通りだ。カナタがなにも言わずとも、上手く察せられるのが出来る従僕の条件よ。貴公もよく分かってきたではないか』


 何も分かってきていなかった。


 うんうんと頷くザグギエルと、なるほどとしきりに首肯するフェンリル。


 彼らの誤解は深まることはあっても解けることはなさそうだった。

その2へ続きます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新ありがとうございます! 無理をしない程度に頑張って下さい。 [気になる点] フェンフェンがモフ度を取り戻した後のザッくん
[一言] > カナタは鋼鉄の牢屋を飴細工のように引きちぎり、結界を踏みつける。 あ~・・・うん、知ってた。
[一言] カナタもまだよのう いわずもなが、するであろうが 念入りにブラッシングできる御褒美ではないか
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