河崎爆発ッ!
「名護屋の街は冬は寒く、夏は暑いと言われててな、もう陽も沈んで暗くなってきてるというのにまだ暑いだろ?」
「ふむ、そうだな。でもまあどうでもよい。暑さにも寒さにも慣れてるからな」
「ところで、ここに来る前まではどこにいたんだ?そして俺を目的に訪ねてきたってことは…」
「横濱だ」
ピタッ。思わず一瞬立ち止まってしまった。横濱だと?昔、噴水族と大抗争をした、横濱連合がいるところじゃないか。
「もしかして、、」
「ああ、そのもしかしてだ」
おいおいマジかよ。これは厄介なことになりそうだ。
「私は横濱連合の本部で、最強の兵器として作られた。おぬしも噂には聞いているだろう?」
「噂だと思ってたね。なにせ、横濱連合はアノ抗争の後、表舞台から姿を消した…。残党は凍京の異能力グループに入って、他は、横濱総会に統合したと聞いていた。まだ存在していたのか…?」
「ふふふ、まあ、無理もない。協会のグループ一覧からも消え、事実上消滅したグループだからな。でも、まあもうすぐじきに分ることになる。この話はここだけの内緒だからな?まあ、シナトラ本部に報告しても誰も信じないだろうがな、今は」
「厄介なことになりそうだな…。俺は普通の高校生活を楽しむ、普通の一般人だと言うのに」
「この期に及んでまだそんな幻想を抱くのか?運命は必然だ。異能力者が世間一般で生きることなど不可能!とりわけ、貴様のような名護屋最強クラスの異能力保有者はな」
コンビニから帰ってきた。もうすぐ夜9時だ。夕食を済ませた俺はさっそく風呂へ入ろうとしていたところ、テレビからニュース速報の文字が。
「えー、番組の途中ですが、ここでニュースに切り替えます、えー、さきほど、午後8時30分ごろ、えー、神奈河県河崎市において、大きな爆発があったということで、警察が捜査してるとのことです。詳しい情報が入り次第またお伝えします。繰り返します…」
テレビからはその爆発の映像とみられるものが映し出されていた。
「おいおい、、まじかよ!あれはどう見ても工場の火災とかではない、異能力の爆発じゃねえか…」
「ふふふ、始まったか」
「お前、何か事情を知ってるのか!?」
「だからさっき言っただろ?横濱連合はいまだ存在している、とな!まあ、さっさと貴様はお風呂に入ったらどうだ?裸を私に見せつけるなど、無礼者だな?」
お風呂から上がった後は、ずっとテレビに張り付いていた。あれはどう考えても異能力者による【攻撃】だ。しかも一般市民を巻き込んでいる。これは異能力協会案件だ。
さっそくシナトラ本部から電話がかかってきた。
「会長!テレビ見てますか?」
「ああ。見てるよ、あと、会長ってのやめてくれ、普通に遥と呼べよな、修誠」
電話相手はシナトラ・アトラクションズの副会長の本田修誠。実は俺はシナトラの会長を務めている。
はぁ。明日のテストは化学と英語だよぉ?勉強してないよ?俺。でも今はテレビに映し出されてる河崎の爆発の案件の方が先だ。
「さっそく緊急会合だ!修誠は、とりあえずシナトラの幹部を全員本部に集めろ!」
「了解!」
「夜10時から本部で緊急会合だ!これは会長命令だ、総会規則の緊急事項の権限を行使することを宣言する!」
本部に集まった幹部は4人。修誠、野田マリン、南達樹、原劉
シナトラはそんなに大きな異能力グループでは無く、幹部はこの4人だけだが、強さは名護屋界隈ではトップである。
修誠がさっそく喋りだした「今回の河崎の爆発の件に関して、会長の遥から緊急会合が宣言されましたたためー」
「そういうのいいから早く始めろよー」
金髪ボーイの達樹が文句を言う。
「うちバイト中だったんですけどー?」
ツインテールで化粧の濃いマリンは眠たそうだ。
「まあまあ、この爆発は結構大きな事件になりそうだから…仕方ないよ」
さすが劉、俺よりも10歳年上でサラリーマンの彼は落ち着いている。
「えー、コホン。さきほどテレビでも映し出され、全マスコミで報道されてるように、河崎で大きな爆発があった。これは間違いなく異能力者の仕業だ。おそらく今日中にも神奈河異能力協会が動き出すと思う。何か詳しいことが分かったら、愛地異能力協会から各グループに連絡が来ると思う。でも、協会の連中が動く前にこちらでも情報収集を行いたいと思う。」
たつき「なんで??よその県のよそのグループの仕業だろ?俺ら関係ないじゃん!そういうの首突っ込まない方が良いと思うぜ。異能力界って、そういう厄介ごとに巻き込まれない方が生き残る秘訣だろ?」
マリン「達樹に賛成!異能力協会がなんとかするっしょ!」
ふうむ、参ったなぁ?この爆発に関係ありそうな子が俺んちにいることを言った方が良いかなぁ?
そうこう迷ってるうちに修誠が「さっそく俺の部下を集めて河崎まで飛びますよ。俺の能力は鳥。河崎まで数十分で行けます!」
「あー、よろしく頼む。被害状況、規模、出来れば爆発の時に何があったのかとか、詳しく情報収集してきてくれ!」
達樹とマリンも渋々、修誠に説得され付いていくことになったようだ。
劉は名護屋に残り、監視強化に当たることになった。
「はぁ…疲れたー」
「中々良い芝居だったではないか?影で見ていたが、手練れた部下ではないか?シナトラも中々やりおるなぁ。私のことを一切口に出さなかったことは評価に値する」
「お前のこと出すと色々面倒なことになりそうだからな、で、河崎の件について、お前何か知ってるんだろ?」
「あの爆発の犯人は、私の姉だ!」
「マジすか?」
「マジだ。言っただろ?私は、いや、私達は横濱連合で最強兵器として育てられた、と」
「それでなぜ河崎で爆発を?」
「見せつけるためだ。横濱連合は今、日本を征服しようと企んでいるからな。止められるのは誰もいないだろう」
「んなことあるか、異能力協会が…」
「その異能力協会の名簿にも載っていないだろ?」
「まさか、乗っ取り!?」
「ああ、そのまさかだ。」
「フフフ、まあ、言っておくが私は姉のような化物では無いし、自分の意志で行動する、いわば兵器になりそこねたモノだ。だから名護屋に逃げてきた」
楓の言ってることが本当か嘘か分らない、しかし、ここは信じることしか出来ない、か。
「厄介なことになったなぁ」
ー翌日朝
昨日は色々な事がありすぎた。寝不足な身体を起こしてさっそくテレビをつける。
「まだ何も分かってないそうだな。死者は今のところ、約100人。負傷者は約1万人か」
「どうだかな。これから増えるかもしれんぞ」
「なぜ、横濱連合は河崎を攻撃した?」
「だから昨日も言っただろ?奴等は見せつけたいのさ。横濱総会と、その他日本全国にある異能力グループにな」
「復活宣言にしちゃあ派手だな。さすが、噴水族とドンパチした集団だけあるわ」
「噴水族は今頃何を思ってるだろうな?」
「さあな?昔の好敵手が復活してパーティーでもやってるんじゃないか?」
「ふふふ、だろうな。噴水族も相当な戦闘狂と聞く。うずうずしてそこらへんの異能力グループにちょっかいでも出してきそうだな」
「あー、もう不吉な予想はよしてくれ。頭がいてえわ。今日の期末テストは化学と英語なのに、頭が痛くなることばっかでどうしようもねー」
兄の統也が作り置きした朝食を食べて、学校へ行く準備をしようとしたところ、統也が帰ってきた。
「あ、統也、おかえりーお疲れさまー」
「おうおう、俺が仕事してる間、大丈夫だったか!?何も無かったか?河崎でなんかテロがあったようだし、世の中物騒だよまったく」
「あ、社畜、帰って来たのか」
なんで楓は毒を吐くことしかできないのだろうか。もしかして楓の能力は毒か?
「な、なんてことを言うんだ。俺は社畜では無いぞ!あああああ」
昔の不動産勤務の過労時代の記憶を呼び起こしたらしい。統也を無視して俺達は学校へ向かった。
「だからー、初音ミクは俺の嫁だって!」
「はあ?お前の嫁はハルヒだろ?」
中学生がいつもと変わらない会話で盛り上がり、いつもと同じ地下鉄の車内。変わったのは隣にいる青髪の楓がいることぐらいか。でも、青髪美少女が横にいるってだけで俺って勝ち組だよな。
「お、遥やん!お前昨日テストサボったってマジ?あの、授業出席だけは真面目なお前がテスト行かないとか、朝同じように会ったよな!」
相変わらず関わりたくないノリで近づいてくる裕也。
「いやいや、そういうお前も学校行かなかったらしいじゃん。何してたんだよ」
「あー俺?女の子とさあ、ちと色々あってさー、だったらもう学校より栄行かね?ってなったわけや!」
「そーですかテストよりも女を取りますかー棒読みまる」
「てか隣の子誰や?」
あ、見られたくない奴を見られたくない奴に見られた!
「えー?ウチのこと?誰にも言わないでよ?遥と付き合ってる、中等部2年の楓です!」
「そ、そうなんだよ!この子ちょっと前に転校してきて、家近くて、それで…」
「マジか!遥に彼女ができまったかー。そうでっかー!」
つくづくウザイ奴だな。まあいつもの裕也で安心したわ。昨日のは本当に女の子とどっかへ行っただけのことだったらしい。
「ほな、おおきにー!」
いつも通り駅で裕也と別れた。
「なんでお前さっきキャラ変えたの?」
「キャラ変えたら悪いか?」
「別にぃ。でも、あんな可愛い言い方出来るんだって思って(笑)」
ポカッ俺の頭に思いっきりの拳が降り注ぐ
「別に好きでしてる訳では無い!それよりも、さっきの奴は何者だ?」
「あのチャラ男は裕也。あれでも一応友達だ」
「おぬし、さっきの男は、あいつは、異能力者だぞ?」
「マジで…?」