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謎の少女楓

「だからさ、ハッチーとはまぴょんだったらハッチーの方が強いってば!カエルと魚だったら魚の方が強いに決まってるだろ!」

「ふざけんな。俺は認めないぞ!両生類は海でも陸でも活動出来るんだ!ハッチーは陸では生きていけないだろ」

中学生と思われる制服男子が爽やかな会話で盛り上がってる。

時は2000年代後半、名護屋の地下鉄。今日もいつもと変わらない、平日の朝の通勤ラッシュを迎えていた。俺の名前は工藤(はるか)名護屋で生まれ育って、いたって普通の男子高校生だ。あともうすぐで高校の最寄り駅に着こうとしていた。

「…たねまるとキッコロ&モリゾーだったらたねまるだよな!」

「ああ、間違いない!」

ハッチーとはまぴょんはどこへ行った…。中学生のどこにでもある普通な会話に耳を傾けてるうちに、とうとう駅に着いてしまった…。今日は夏休み前の期末テスト期間。しかし俺…。

「よぉ!遥やん!勉強した?今日数学やろ。お前の大好きな!(笑)」

「しょっぱなの挨拶が嫌味かよ。勉強してねーし数学なんか嫌いだわ。お前はもっと嫌いだけどな…」

テスト期間の朝早くからご機嫌なコイツの名前は加藤裕也(ゆうや)同じクラスで見重からわざわざ名護屋まで通う強者である。

「大丈夫なん?数学赤点取ったら夏休み補習やん。しかもあのオニババと(笑)」

「夏休み何も予定無いからな。なんならオニババとデートしてもいいぜ」

「誰がオニババじゃ!」

痛ッ!「あ、裕子先生、いたんですね。全然気付かなかったっス!」

背後から現れた通称オニババ、裕子(ゆうこ)は俺たちのクラスの担任であり、数学の先生である。背が高いそこそこの美人であるが、三十路独身である。

「遥、おぬし中間テストも成績よろしくなかったぞ。このままでは数学の単位が無い。進級も危なくなるから覚悟しておけ。高校一年のこの時期でつまづくと後々の進路に響くからな!」

「はい、以後頑張ります…」

「ハハハ!朝早くから怒られてやんの!さすが遥様、期待を裏切らない人やなぁ!」

「裕也、おぬしも人のこと言えんぞ。現代文と世界史の成績忘れたのか?」

「はいはい、以後頑張りまーす!」

「はい、は一回!ピシッ!」

そうこうしてるうちに駅の改札の外に出た。オニババは先を急いでさっさと学校へ行き、駅で裕也は女の子と待ち合わせしてるらしく駅を出たところで別れた。学校に早く行っても勉強するタチではないし、近くのコンビニにでも寄って立ち読みしようかと思って歩いていたところ…。

「おい、そこの貴様、異能力者であろう?」

おいおい、今度は誰だよ。俺は普通に一人でいたい、普通の男子高校生なのに…。

「なんすか?」振り向くとそこには、中学二年生くらいの青髪美少女が立っていた。最近流行ってる、らき☆〇たの主人公みたいな。

「貴様、異能力者だな!どこのグループだ?噴水族か?」

噴水族、名護屋では恐れられている凶悪異能力グループ。東海地方最大規模をほこり、一般人にも手を出すことがあり、十数年前から度々事件を起こしている。しかし、異能力者は表立っては存在していないことになっており、異能力者がグループを作って抗争を起こしたり、事件が世間一般に広がることは無い。俺が異能力者であることをとを知ってるってことは奴も異能力者か…。

「違う。俺は()()()高校一年生だ」

「ふむ。私の目をごまかせると思うなよ。その身なり、表情からして自分が異能力者であると悟られたくない、一般人として普通に生きていきたい異能力保有者。そしてその異能力はおそらく光。数ある異能力の中でも最強に分類される能力だ。そして…、、。先ほどの言い方からして噴水族では無さそうだな。ということは…」

なんだ、この女の子は。俺の中身を読めるのか?

「「シナトラ・アトラクションズだ」だな」

「ここは人が多すぎる。異能力は世間では無いとされてるものなんだから、あんまり大きな声で話すな。異能力協会に厄介になりたくないからなぁ。しゃあねえ。あそこのファミレスにでも行くか?あのファミレスなら今の時間帯人もいないしゆっくり出来るだろ」

「ふむ。飲み込みの早い奴だな。嫌いで無いぞ!もちろん貴様のおごりだ!」

おいおい、急に笑顔で上目使いしてくるのやめてくれよ…。それに俺、貧乏人なんだぜ。両親は幼い時に亡くなり、生計は一緒に住んでる料理人の兄貴が立ててる。俺が通う学校も私立で学費そこそこかかってるんだぜ。そんな俺におごらせるとは。

「ふむ、貧乏人だからおごる金もそんなに持ってないとな?良いぞ。無理を言った私が悪かった。金は全部出そう!」

「…、人の中身読むのやめてもらいません?」

「何を言ってるのだ。全然中身を読んでなんかないゾ。これは私の人間観察という、ただの趣味だ!」

「悪趣味な奴だな、てっきり人の中身をのぞき込むのがお前の能力だと思ってたが…」

「なんだ失礼な。私はそんな破廉恥な能力では無い。もっと偉大な能力だ。誰にも話さないがな!フフフ」

自分の能力を他人に話さないのは身のためだ。異能力者の間では決闘や殺戮がしょっちゅうある。それを取り締まるのが異能力協会、いわば異能力界の警察みたいなものだ。

「然るにしておぬし、さっき自分の能力を公言していたが、余裕の感じだな?」

「当然だ。俺の能力【光】は最強の能力の一つだ。ここ名護屋では一番強いだろう。隠してもお前は何もかもお見通しだろ?だったら無駄なことはしない」

「ふむ、かなり利口だな。その潔さは素晴らしいことだ。まあ、私の能力の方が強いがな。フフフ」


ファミレスに到着、今もう9時か、数学のテスト…。まあどうせ受けても赤点だし別にいいか。

「ところでお前の制服、俺の通う学校の中等部の制服だよな。テスト期間だけど大丈夫なのか?」

「おぬしこそ、私の通う学校の高校の制服を着てるではないか?」

「なるほど、お互い似たもの同士って訳か(苦笑)」

「一緒にするな!貴様よりも頭が良い!大学へ飛び級出来るくらいの頭の良さはあるわ!」

「ははは。まあ本題に入るとすっか。んで、お前の目的はなんなんだ?俺は異能力世界で名を広めたいわけでも無い、世間に隠居してる普通の高校生だ。いくらお前が美少女だからと言っても、そんなに助けになれないと思うぞ?」

「別に助けなど要らぬ。ただ、情報が欲しいだけだ。いかんせん、ここ名護屋に来たのはつい一週間前だ。それで青山中学に転校してきたわけだが、住む場所が無い!」

「住む場所も無いのに学校に入るか?普通では無いってことか。オーケー!賃貸不動産なら俺の兄貴のお得意分野だ。兄貴は宅地建物取引士でもあり、ちょっと前までは不動産屋に勤務してたからな!」

「いいや。違う。異能力者であるレディが一人暮らしとか何考えてるのだ?おぬしの家に住まわせろ!」

何を言い出すかと思えば…。

「あ、そういえば名前をまだ名乗っていなかったな!私の名前はユー・スタンシアラ・(かえで)だ!よろしく頼む」

「お、おう。俺の名前は…」

「工藤遥だろ?」

なぜ俺の名前を知ってる。

「最初から貴様目当てだったからな、フフフ。この青山中学に入ったのも高校に貴様がいるからだ。シナトラ・アトラクションズに所属してるのももちろん知っていたがな!」

「楓、俺のことからかってたな!」

「アハハ!まあ良いではないか。よろしく頼むぞ、では、学校へ参ろうか!」

「それじゃ、放課後、駅の改札で待ち合わせな!」


学校へ着いた。数学のテストはとっくに終わり、俺は職員質でオニババの説教を受けていた。

「なんでテストを受けんのか?これでは単位あげれんぞ?もちろん補習だ!」

「すみません。でも先生、俺今日朝異能力を持った女の子と会って、、たしか中等部の楓っていう、上の名前?苗字がすげえ長い、、」

実はオニババも異能力者である。所属は俺とは違い、岐府に本部がある飛騨会の所属だ。

「ふむ、楓?あとで調べておこう。だ、が。それとこれとは別だ!自分の事を先にしろ!たわけ!」

「すみませんでした」

「もうよい。下がってよろしい。それと他にも来なかった裕也のことで何か知らんか?てっきり朝一緒だったからおぬしと一緒にテストをぶっちしどっかで遊んでると思ってたのだが?」

「え?裕也が?知らないっすよ。確かあいつは女の子と待ち合わせしてたんで駅着いた後すぐに別れたんですけど…」

「ふむ?そうだったのか。連絡しても出ない、道理で、どっかで女と一緒に遊んでいるのだろうな。まったく、、どいつもこいつも!」

あのチャラい裕也のことだ。あり得る。

「ああ、そうだ、遥。お兄さんから電話があったぞ?何か、知らない女が部屋の中にいるとか、遥の友人を名乗っているとか、、。まったく、貴様も大変な人生を送ってるな」


自宅アパートに帰ったら、そりゃあもう手が付けられない大騒動だった。

「おい遥!こいつ一体誰なんだ!?お前の携帯に電話しても、電源入ってないとかで仕方ないから学校に電話したんだが、全然帰ってこないじゃないか!今までどこほっつき歩いてた!」

「あーすまんすまん!話すと長くなる!とりあえず、この子は楓、俺の、、彼女だ!うん。同棲することになった!」

「あ?誰が彼女だ!きちんと説明しないと後々面倒なことになるぞ?」

もう面倒なことになってるっつーの。っていうかなんで俺の住所知ってんだよ、なんで俺の自宅に直行すんだよ、駅で待ち合わせって言ったのに。

「は、は、遥、お前、お兄ちゃんより先に彼女作ったというのかぁ」

涙目の兄が膝を床につけて震えている。

「遥が遅いから先に家に行ったのだ。ドアを壊したことは申し訳なかったが、すぐに修理出来る!問題無い!」

いや、色々問題あるだろぉ、最近の女子中学生怖いわー。

「とりあえず、だ。俺と楓は今日から一緒に住むことになった。楓も俺らと同じ異能力者で、色々な事情があるんだ」

さすがの兄も、異能力という言葉に察したのか

「そうか、色々取り乱してすまなかったな。さて、こうしちゃあ居られない。今日も夕方5時から仕事だからな」

そう言ってさっと自分の部屋に戻っていった。

「ま、ひとまず収まって良かったわ」

「面白い兄だな。高校一年の弟が彼女と同棲って言ってもすんなり受け入れた表情だったではないか?」

「あー、兄は昔からそういう奴だ。あ、兄の名前は統也(とうや)だ。よろしくしてやってくれ」

「んじゃ、さっそくだけど、、ここが俺の部屋だ。統也の部屋には入らないようにな、あいつ、他人に自分の部屋を見られたくない奴でさあ、友達も家に呼んだこと無いんだぜ」

「ふむ、他人に部屋を見られたくないのは誰も一緒だろ。それに統也は、友達いないタイプの人だと思うぞ」

さらりと毒のあること言ったぁ!統也聞いたら泣くぞ、それ。

「楓って、さらりと毒吐くよなぁ。お前もあんまり友達出来ないタイプだろ…」

「な、なにを言うか?べ、別に友達などいなくても生きていけるわ!」

あ、図星だった。ちょっと怒らせちまったかな、まあ良いっか。

「ま、今日は色々疲れたわ。お風呂沸かしてくるわ」

「お風呂?お風呂があるのか!お風呂が?」

「え、まさか楓…」

「お風呂、一週間くらい入ってない」

「オーケー、何か匂うなぁって思ってたけど、やっぱ原因お前だったか。すぐに入れ!」


兄の仕事は夕方5時から朝の6時。週休2日制で土曜日も出勤だ。だから夕飯や朝食はいつも兄が作り置きした料理を温めて食べている。

「急だったから楓の分作ってねーんだよなぁ。今からちょっとコンビニ行ってくるわ。付いてくか?」

「ふむ、家にいても暇だからな」



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