ある日の村
ドーン…… ドーン…… !
地響きが鳴り響く。
ここは都市サウザーン
人口が1000を超えるこの街は冒険者に自治を国が認め雇用と防衛、そして本業である冒険の契約・依頼をギルド主体で行っている。
冒険者達による相互連携自治による安全面や有名冒険者の来訪といった娯楽、各地の冒険者が立ち寄る為に珍しい物が集まるので独特な貿易が発達しマーケットとしても成功をしている。
そんなサウザーンの中央広場に地響きが続く……
――― ドーン…… ドーン……
それは魔力が溢れた日以前には存在しなかった10メートル近い一ツ目が石畳に巨木から抜き取り加工した棍棒を叩きつけている音だ。
その棍棒は大きく分厚く
叩き付ける振動から重いのだろうと想像に軽い
「ひいっ! 」
小型の…… それでも4メートル程の身長がある一ツ目がサウザーンの住人を見つけ肩に抱えて持ってくると一連の流れ作業のように棍棒を持つ一ツ目が受け取る
「ぐうっ! 」
ビタビタと糞を肛門から飛び出すぐらい荒く粗雑に地面に投げ下ろすと一ツ目は棍棒を住人に叩き付ける
ドーン!
地面に血生臭い肉や血の塊が増える
その塊はどうやら数百人の人だったようだ。
一ツ目の流れ作業は続く
老若男女、傷病者、子供の全てが淡々と潰れていく……
その時、猛火をあげながら何かが高速で走り込み一ツ目を燃える剣で薙いだ
「てめーら! なにしてやがんだ! 」
それはサウザーンにある冒険者ギルドのスター業火のフレイルだ。
火魔法を使うフレイルはサウザーンの燃料として充実した雇用関係を築いていた。
難しい事はない
ギルドの遥か地下150メートルに土魔法で穴を掘り各家庭や商店などに火を巡回させている。
もちろん24時間ではない。
据えられた炎の魔石に魔力を蓄積させたら後は自由時間となる。
フレイルは前日にも地下で燃料としての業務を終えた後にウォッカ程に強いのアルコールを飲んで寝ていたのだ。
一ツ目による強い地震を泥酔の中に感じ飛び起きて地上に上がると……
「なんだこりゃ…… テメェら…… 」
アツい心をもつフレイルは家畜と屠殺するより無惨に破棄されていった友人達の残骸に涙を流す。
その涙はフレイルの強い怒りによる魔法の熱で蒸発する。
「殺す! 死ねや! 」
魔力が溢れた日から更に強くなった魔法の炎が広がっていく
空を焼き雲を霧散させるほどの炎を一番大きな体躯の一ツ目に叩き付ける
巨大な柱のような炎は
一ツ目に倒れこむ
まだ昼なのに夕日の残照のように高温・光源が炎の柱、一直線に地面や遺体や一ツ目を焼き付ける。
「…… 火葬になっちまったな…… すまねぇみんな…… 」
目を伏せて一度、殺された人々に黙祷をすると残る一ツ目をフレイルの目の光が睨みつける
――― 焼き殺す……
濛々(もうもう)と魔法で焼けた煙から巨大な手がフレイルに伸びる
「なっ! 」
ビターーン!
まるでハエを叩くように魔法で焼いたはずの一ツ目が平手でフレイルを叩き飛ばす。
(む…… 無傷だ…… と? )
体のあちこちが変な方向に折れ曲がったフレイルが一ツ目を目の端でとらえる。
(なんだよ…… なんなんだよ…… )
一番大きな体躯の一ツ目はひょいとフレイルを手に掴み人々を潰していた所にフレイルを寝かせると棍棒で作業を再開した。
ドーン
ドーン……
勇者と共に戦った炎神とまで言われたフレイルは
ハンバーグのタネのように友人達と一つにまとまって絶えた。
一ツ目に潰されたフレイルを見た生き残りは絶望して動けなくなる。
それを一ツ目は探して作業を続ける。
魔力が溢れた日で魔力が溢れてしまっている人間は隠れても存在が隠しきれずサウザーンから人が居なくなるまでたいした時間を必要としなかった。