神の森 1
「分からねえな、こりゃ」
騎士団長であるトルドロは頭に手を当ててあちゃーと言った。部下達は直立不動を保ったままであるが、不安を隠しきれていない。目の前の女も不安そうに瞳が揺れていた。
しかしこれで確信した。
彼女たちは"神の使い"だ。
これほど多いのは予想外だが止むを得ない。
とはいえ言葉が通じなくてはここから共に出ていけない。
無理やり連れて行ってもいいのだが、そんなことをして神の怒りに触れでもしたら。
「アルゾール、お前が相手をして差し上げろ」
「団長。それは逃げでありますか」
「馬鹿を言うな、これも経験だ。いいか、お前がこの方々に説明して国へ連れて帰るんだ。安心しろ。手柄は全部お前のもんだ」
「そう言って、いつも団長は自分のものにしていますが」
「細かいことは気にするな。団長命令だ、いけ」
渋々女の方へ近づいてアルゾールは微笑みながら話し始めた。手応えは全くない。
彼の顔立ちは誰もが振り返るほどでもないが整っている。故にトルドロは彼に任せたのだ。
「おっさんより若いやつの方が警戒しないと思わないか?」
「そうかもしれませんねぇ」
小声でのやり取りに引き攣りそうになる顔を留めながら、アルゾールは必死で説明していた。
「僕たちは、君たちに、危害を、加える気は、ありません。寧ろ味方です。ここは危険なので、安全な所へ、行きましょう」
身振り手振りを混じえて言うと、女は考え込んでいた。
通じているのだろうか。
しばらくして後ろを向いて、座っていた女達と何か話し始めた。相談しているようだ。
「通じたな」
「だといいのですが」
女達は覚悟を決めたようだ。
リーダー格の女が何か言いながら手を伸ばした。きっと握手をしようとしているのだろう、こちらも手を伸ばして手を握る。
彼女はほっとしたように微笑んだ。
「早い者勝ちはいけませんよ」
アルゾールが倒れて、そこにいた男が笑った。