森の中 3
使い物にならなそうな物を鞄から取り出して、役に立ちそうなものだけを中に入れていると、突然一人の女性が立ち上がって何かを呼びかけていた。
みんながそれに耳を傾けている、が、結月にはひとつも理解できない。なにしろ本場のイングリッシュだ。早口すぎて聞き取れない。
しかし水を指すわけにもいかないので、分かってる風を装って彼女をじっと見ていた。
『そうよね、何も始まらないものね』
話し終わるとまた一人の女性が彼女に話しかけていた。激しい口調なので腹を立てているのだろうか。周りの人は心配そうに見つめていた。
『ヘレンを怒るなんてお門違いだわ!』
何回かやり取りして怒っていた女性は顔に近づいた虫を払うような動作をして後ろを向いた。周りにいた女性も気まずそうに下を向く。
『いやなやつ!まるでおばあちゃんみたい』
すると立ち上がっていた女性がまた何か呼びかけて、周りの人も口々になにか話していた。
カーリーも何か話しかけてきたがさっぱり分からない。
立ち上がって腕を取りぐいぐいとひっぱってきたので、渋々腰をあげると女性たちは森の奥へと進んでいた。
なるほど、この奥へ進もうという提案を話していたのか。
少し恐怖を感じたが腕を掴む少女の手が震えていたので、怖いのは皆同じだと気づいて心を決めた。