森の中 2
彼女が目を覚まして初めに見たのは、奇しくも青空だった。覚醒しきっていない脳で、いつ天井に空の壁紙でも貼ったのだろうかと間抜けな事を考える。すると突然興奮した少女の声と共に体を大きく揺さぶられた。
『目は覚めた!?ああ、よかった!あたしと同い年の子ってあなただけみたいだから怖くって。同い年よね?人は見た目で判断しちゃいけないって言われてるけどね。それ制服でしょう?カワイイわ!あ、あなたの名前は何?あたしはカーリー!』
怒涛の言葉たちに目を回し、唯一分かったのはこの少女はアメリカ人だということ。とりあえず拙い英語と身振り手振りを駆使しながら名前と英語が話せないことを伝えてみる。
『うそでしょう』
おーまいがーと頬に手を当てる。びっくりするほどアメリカンだ。
よく周りを見回してみるとなるほど、確かにここにいるのは大人びた容姿の女性達である。日本人は見当たらないがアジア系の顔立ちの女性は何人かいるようだ。
彼女たちが寝ていた場所はふかふかとした感触の白い植物の上だった。手触りはお金持ちの家にありそうなカーペットに似ている。実際触った時はないが。
周りは木々で囲まれていて、天井にあたる部分だけがぽっかり空いている。太陽は真上にないようで、今から正午なのか過ぎたのかは判別できない。
夢見心地で頬を抓ると、思った通り痛かった。
『いいわ、とりあえず友達になりましょう。よろしくね!』
「はあ、よろしくってこと?」
手を差し出してきたのでおずおずと手を出すと暖かくて柔らかい感触にどきっとした。そして凄い勢いで振られる。手を握るのなんていつ以来だろう。文化の違いを思い知らされた。
『動いた方がいいのかしら。こういう時、物語なら何か武器になるものを探すものよね』
顎に手を当て何かぶつぶつと呟いている彼女には声を掛けず、少女は立ち上がって埃を払った。
そして近くにあった自分の鞄の中身を見てみる。
特に荒らされた形跡はない。こんなところで円が通用するかも分からないからか。
『ああ、それあなたのだったのね』
ひょいと覗かれて少し恥ずかしく思うが、寝顔も見られていたようだし今更かと開きなおる。
武器になりそうなものは文房具と水筒のみだった。こんなことになるなら辞書でも持ち歩くんだった、と後悔。
『ハサミとペンはいい武器になれそう。あたしはこれしか持ってないの』
カーリーが取り出したのは奇抜な色のお菓子たちだった。