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オバケの世界征服  作者: 属-金閣
1章 3月31日 終わり、出会いと始まりの春
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1章⑧ 1日の幕引き

 

 一空は、立ち上がる為にキメラを振り抜いた剣を自分に寄せると、剣を杖の様に使い立ち上がった。

 そして、息を切らしならが倒れているキメラに視線を向けた。


「はぁぁ……はぁぁ……」

「……せ……」

「?」

「ころ……せ……」

「!」


 キメラが初め、何かを発しているか聞き取れなかったが、自分を殺せと言う発言に驚いていた。


「ふざけんな、殺すつもりはない! 負けただけで、殺せなんて言うんじゃねぇ!」

「まだ綺麗事を……そう言って、お前らはためらわずに今まで殺して来たろ!」

「っ! 俺はそんな事はしない! 命をそう簡単に奪っていいわけないだろ!」


 一空は、自身の主張を強くするが、キメラに響く事はなかった。


「もういい……」


 キメラは呟くと、一空が杖として使った剣の先端を突然右手で掴んだ。


「えっ!?」


 突然剣を掴まれると、剣はそのままキメラ側に引っ張られる。

 キメラは、そのまま剣を片手から両手で掴み直した直後、剣をそのまま脇に向けて勢いよく引き寄せると、一空の引っ張れた勢いも加わり、ズブッとキメラの体内に剣が突き刺ささった。

 突然、目の前で起こった出来事に一空は絶句した。


「なっ……」


 そして、苦しそうな表情でキメラは、一空を見て不気味に笑う。


「これで偽善者のお前も……同類の仲間入りだ……」


 一空自身は手を下してないが、自分が生み出した剣で間接的にキメラの命を奪った事に、一空は声も出せずに、口が開き呆然としていた。

 キメラはその直後、ボロボロと固めた物が崩れる様に体がなくなっていく。

 そして最後には、一空が生み出した剣だけが地面に落ち残るが、直ぐに剣も煙となり消えてしまう。

 一空は無言のまま体を起こし、その場に座りこんだ。


「あなたが奪った訳じゃない……」


 そう言いながら、少し首を左右に振りながら一空に呟く彩音の言葉を聞き、振り返る。


「あんな事をするなんて、思ってなかったんだ……ただ戦いを諦めさせる為にやっただけで……俺は……」


 一空は誰にも責められてもいないのに、言い訳の様に話しだした。


「別に責めてない。これは私の責任、私が油断したから……」

「違う! 俺が、勝手にやったんだ! 彩音のせいじゃない……」


 その場で2人の傷の舐め合いが始まってしまい、収取のつかない状態になりかけた。

 その時、勢いよくホールの扉を開ける物凄い音が響いた。

 2人は直ぐに音の方を向くとそこには、部長が立っていた。


「部長……か? なんで何も言わずにこっちに向かって来るんだ?」


 一空が疑問に感じ彩音に聞こうと彩音の顔を見ると、顔が真っ青になっておりそれに驚いた。


「ど、どうしたんだ彩音! 顔が真っ青だぞ!」

「……」


 彩音は出来るだけ背筋を伸ばし、震え出して口が引きつっていた。

 一空は何だか理解出来ずにいると、2人の前に部長が仁王立ちで立った。


「で、何だこの状況は?」


 低くドスの効いた声で話しかける部長に、彩音は何も答えられず、口がガタガタしていた。

 それを見かねて一空が代わりに答えた。


「これは……その……全部俺が悪いんだ! 勝手な事をして、そのまま自分で解決しようとしたんだが、上手くいかなくて……それで……それで……」


 一空は咄嗟に話し出したため、何を言いたいか部長に伝わっていなかった。


「要するに、お前が悪いってことか?」


 そして、上着から銃を取り出し一空の額に向けた。


「後、まとめてから話せ……何言いてか全然分からん」

「え……」


 そのまま、銃の引き金を引き、1度聞いたことがある『カチッ』という音がが小さく響いた。


「いっっっってぇぇぇーーーー!」


 叫び出す一空。

 その痛みは部室で1度撃たれた時と同じ感覚だった。

 更に、そのまま無言で何度も一空に向けて引き金を引く部長。

 カチカチという、何とも言えない音と一空の悲痛な叫ぶ声だけが交互にホール内に響き渡る。

 そして、部長は引き金を引く指が疲れたのかやっと止める。

 一空は球で撃たれた訳でもないのに、激痛に何度も襲われ、動く気配がなくその場で伸びてしまう。


「とりあえず、お前への罰はこれくらいにしといてやる」


 そう一空に強く言って、次に彩音に視線をずらし近づくと、銃のグリップ底で頭を軽く叩いた。

 彩音は、叩かれた箇所を両手で抑え、部長の方を涙目で見る。


「お前も悪い! 約束も破る、命を勝手に無下にする、自分で何でも解決させようとする! 言ったろ、やばかったら直ぐに呼べって!」

「すいません……」


 このまま部長の説教が始まると思っていた矢先、突然1つため息を漏らした。


「まぁ、無事とは言えないが、生きて会えて何よりだ」

「はい……」


 その言葉に彩音は、涙声で部長に返事をした。

 その雰囲気で、いきなり声を出して起き上がったのは一空だった。


「うばぁっっあ!! って……あれ、俺は……」

「いきなり変な声出して起き上がるな!」


 部長は驚いたのか一空に対し強く当たった。


「……いやいや、あんたがいきなり撃つからだろうが!」

「あぁ? なんか文句でも?」

「い……いえ……」


 部長の言葉に萎縮する一空。


「それじゃ、本題に入ろうか……」

「本題? いや、何があったかはさっき伝えたろ」

「いいや、その事じゃない。私が今1番気にしてるのは、この現状だよ」

「どう言うこと?」


 一空のその言葉を聞き、鬼の形相で睨みつける部長。

 すると無言で一空の脛を狙い、銃の引き金を何度か引いた。


「いたい! いたいたいたいたい! 脛だけを撃つな!」


 両手で脛をさする一空。


「だから何を気にしてんだよ!」

「私は、ズタボロのホールの現状を言っているんだよ」

「なんで、ホールの方なんて気にしてんだ?」

「はぁ〜」


 部長は頭を抱えて深いため息を漏らした。

 すると、小声で彩音が部長がどしてホールの現状を気にしているのかを教えた。


「一空……部長はね、この学園の生徒じゃないの」

「……はぁ?」


 首をかしげる一空に、彩音から部長の衝撃の事実を知る。


「部長はね、この学園の理事長なの」


「えっ……えぇぇぇーーー!」


 一空は直ぐに理解など出来ず頭痛がし出す。


「いや、だって……えぇ……どういうこと!?」

「そのままの意味よ。生徒じゃなくて、理事長なの」

「なんで理事長が部活の部長なんてやってんだ! てか、生徒じゃなかったのかよ!」


 一空は部長が生徒じゃないと言うことに一番驚いていた。


「俺が勝手に生徒だと思ってただけってことか?」

「お前がどう思っていようがいいがな……部活をやってるのは1度言ったろ、学園を守るためだって」

「じゃあ、理事長って事は……物凄く年上?」


 その言葉に部長の顔が歪む。


「私はまだ、24だ……」


 そう言って銃を再び一空に構えて、無言で引き金を引いた。


「いったーーーーぁ!」


 一空は頭を下にして前かがみになる。


「というか、お前はまだ分からないのか? 私が何故、この現状を気にしているのか」

「わ……分からん……」


 部長は呆れた様に再びため息を漏らした。

 彩音は、部長の代わりに何を気にしているか教えた。


「一空、明日がなんの日か覚えてる?」

「明日……あぁ!!」


 一空は思い出したかの様に声を上げた。


「入学式!」

「そう、その為のホールがこんな状態なんだから、部長はそれを気にしてるんだよ」


 部長はやっと理解した一空に怖い笑顔で話しだす。


「だ・か・ら、綺麗に元どおりにしてね」

「え? ……いや、冗談ですよね?」

「な・お・せ!」


 強い口調で一空に再度、命令した。


「マジですか……」

「マジ」


 笑顔で返答する部長。

 そして、電話を取り出しどこかへ電話し終えると、一空と彩音に言い渡した。


「彩音はこれでも飲め! 傷はすぐに治るはずだ」


 部長は彩音に飲み便を渡し、彩音は一気に飲む。


「修理業者を呼んだから、お前ら2人とも手伝って一緒に修理しろ。明日までに綺麗にして、入学式の準備もやれ!」

「え? ちょっと、入学式の準備も!?」

「なんだ、壊した張本人は償う気持ちがあまりないのか? 私に無駄な金を出させておいて」


 持っていた銃を自分の肩でポンポンとさせながら一空に話した。


「うぅ……やります。やらせていただきます」

「それじゃあ頼んだぞ。あと彩音、また何か壊さないようにそいつ見張りながらやれよ」


 そのまま、部長はホールの扉に向かってその場を後にした。


「あんな風に言われたら、やるしかないよなぁ……はぁ〜」

「……一空……その……ありがとう」


 彩音は一空に恥ずかしながら、いきなりお礼を言いだすとそれに一空は動揺した。


「い、いきなりなんだよ」

「その……なんとなく……ね」


 2人はぎこちない雰囲気になるが、それを察し一空は戦いの中で気になった話題を振った。


「そ、それより力を使ってる間にどんどんと体が重くなったんだが、なんだか分かるか?」

「体が重く……多分だけど、それは一空の力を使う代償だと思う」

「代償?」


 彩音は一空に対してストラップ魔法について話し出す。


「うん、私の力も使う時に代償を差し出しているの。ストラップ魔法は、ただ単に力を得られるわけじゃないの。力に見合う代償を差し出す事で力を使うことができる仕組みなのよ」


 彩音は一空にストラップを見せながら力の仕組みを説明した。


「それじゃ、彩音の代償は何だ?」

「私の代償は『鉄』よ。『鉄』を元に力を使えるようになるの。……一空の力は、私のと少し違うようだし私のより強い力に見えたわ。だから、その力の代償が自らの体力だったんじゃないかって思うの」


 彩音は一空の力の代償を推測し教えてると、一空は頷いていた。


「なるほど、自分の体力か……それなら体が重くなるのは分かるな」

「ちなみに、一空のストラップは誰から貰ったの? それに力が宿ってるって事はそれをくれた人は、どんな人なの?」


 一空はストラップを見つめながら昔の事を思い出して答えた。


「これは、俺の命の恩人に貰ったものなんだ。もう、7・8年くらい会ってないんだがな。俺の印象は面白くて優しいお兄さんって感じだったし、特別な雰囲気はなかったかな。名前はえっと……」

「名前を憶えてないの?」

「いや、ただあんちゃんと呼んでいたことがほとんどで、本名が思い出せなくて」


 一空は記憶を思い出したが、本名を思い出せなかった。


「まぁ、謎は残るけど今はそれ以上考えても仕方ないか。後、一空の使った力はどんなものだったの?」

「俺もよく分かってないが、3回武器とかを自由に出すことができるってことぐらいってとこかな」

「ふんふん、一空自身もまだ分からないのか……なるほどね。それじゃ、詳しくはまた部長と一緒に相談して見極めようか」


 彩音はそう言った直後ホールの扉が開き、部長が頼んだ業者がやって来た。


「すいませーん! 依頼されて来たんですけど、こちらで合っていますかね?」

「あ、そうです! こちらで合ってます!」


 彩音が業者の問いかけに答え、小走りで向かって行く。

 その後は、業者の方と修理作業を行い、修理後は別の業者の方々と入学式の準備を行った。

 こうして、一空の怒涛の1日が過ぎて行った。


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