表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オバケの世界征服  作者: 属-金閣
1章 3月31日 終わり、出会いと始まりの春
6/154

1章⑤ ストラップと魔法

 

「人ではない存在ってどういう事だよ?」


 一空は理解出来ず、混乱していた。


「そのままの意味よ。悪魔や天使、神のなりそこないのような者が学園を脅かすの。最近じゃ、様々な所で被害が出ているの」

「そ、そうなのか……」

「知らなくて当然よ。そんな奴と戦う時は、人を近づかせないようにしているからね」

「なるほど……もしかして、今日学園に誰もいないのは、そういう力を使っていたりするのか?」


 一空は、学園に来た時の謎がそうではないかとふと、思った。


「察しがいいわね。その通りよ。今日学園を脅かす存在が出現すると情報があり、学園から人払いをしているの。まぁ、そこに貴方が来たのは予想外だったから驚いたのだけど」

「いや……それは俺のせいじゃないんだがな……」


 一空は、小声でそう呟くと話題を変えた。


「で、どうやってそういう奴らと戦うんだ? ただの人の力だけじゃ勝てないんじゃないのか?」

「その通りよ。そこで私達はこれを使うの。」


 そう言って彩音はあるものを取り出し、一空に見せつけた。


「それって……え? ……本当にそれなのか?」

「えぇ、これを使って戦うの」


 一空は、見せつけられた物を見て驚きを隠せなかった。

 それはけっして戦う為の物でなく、誰もが持ったことも見たことがある普通のストラップだったからだ。


「だって、どう見てもそれストラップだよな?」


 彩音が一空に見せた物は、小さな本が付いているストラップだった。


「そうよ、一見ストラップだけどこれで奴らと戦えるの」


 そう言うと、彩音はストラップの本体と繋がっている紐を引っ張った。

 その瞬間、『ボン』っと言う音が響く。

 すると、彩音の手にはストラップではなく本を手にしていた。


「な、なんだ?」


 一空は目の前でいきなり現れた物に目を疑った。


「これこそが、奴らと戦う為の本当の姿。だけどこれは、威力が弱い物だけどね。」


 そう言うと、また一瞬でストラップに戻った。


「まっ……マジックか?」


 一空は思った事を口にしていた。

 それに対し、彩音はすぐ言い返した。


「違うわよ! これは、魔法の一種なの。対象の物体をコンパクトにすることが出来て、自分の意思で変幻自在に使う事ができるものなの!」


 言い終わった彩音は、少し息を切らしていた。


「そうなのか。なんか……ごめん」


 一空は、素直に彩音に対して謝る。


「別に謝らなくてもいいわよ……話しを戻すけど、奴らと戦う為の武器をストラップ型にして持ち歩いているのよ。」

「なるほど、それなら他の奴が見てもただのストラップとして認識されるし、持ち運びも楽だな」


 一空は、1人納得していた。


「ちなみに、私の身に付けている刀も、奴らに対抗する武器でストラップにもなるわ」


 そう話し、彩音は身につけていた刀をストラップにして見せる。

 ストラップの形は、刀がついておりそのままの形だった。

 すぐに彩音は元の状態に戻し、腰につけ直した。


「どうやって、戦うかは理解したが、それで俺はこの部活で何をするんだ? まさか、俺も戦うのか!?」


 一空は、自分の立場や役割が気になり彩音に問いかけた。


「そうね、とりあえずは私のサポートかな。いきなり、武器を渡しても武器として使える保証もないからね」


 彩音は、そう一空の役割を伝えると一空は何とも言えない顔をしていた。


「サポートも微妙だが、武器を持っても武器として使えないってのはどう言う事だ?」

「私達が持つ武器は、さっき見せた通りストラップ型が基本形態なの。それをいきなり本来の武器として使える用にするのは無理なの」

「ただ、ストラップに付いてる紐を引っ張ればいいんじゃないのか?」


 そう一空が質問すると、彩音は左右に首を振る。


「そんなに簡単な事ではないの。武器側にも認められて始めて使える物なのよ」

「そうなのか? じゃあ、試しにやらせてくれないか? それには少し興味もあるし」


 興味本位で話す一空に、彩音は少し呆れた表情でストラップを渡す。


「別にいいけど、今までいきなり武器化させた人なんていないからね」


 彩音は、一空に釘をさすように言いさっき本にさせたストラップの紐を一空が握る。

 ストラップの紐を引っ張る前に少し自分のことを話す一空。


「こう見えて、運動神経とかもいい方だし初めてのやる事は、大抵の事はやってこれてるかならな。こういうのも見てたら、一回やりたくなる性分なんだよ」


 そして、紐を引っ張りストラップからピンが抜ける。

 しかし、何も起こらなかった。


「……ありゃ? これは……失敗か?」

「だから言ったでしょ。どんな経験や自信があっても、武器に認められていないと武器化はできないの」


 彩音は、結果が分かっていたように話す。

 一空は少しガッカリしながら、受け取ったストラップを彩音に返す。


「なぁ、1つ聞きたいんだが俺がずっと持っているストラップとかも、もしかしたら武器になったりする可能性とかはないのか?」


 一空は、服の内側に身につけていた鎧の形のようなストラップを彩音に見せながら、そんなことはないだろうと思いながらも質問する。


「それは、ゼロではないわ……」

「マジか!?」


 一空は、予想してない回答が返って来て少し喜んだ。


「でも、普通ありえないわ。基本的にストラップ型の武器は一般人が持たないように、ストラップ自体にも魔法がかかっているの。作った人か、その人から貰うかしないと所持することはありえないものなのよ」

「これは小さい頃に貰ったもんだが、渡してくれた人はそう言う人じゃなさそうだし、ないか……」


 一空は、出したストラップをしまう。


「さて、部活の活動内容を一通り話したわ。後は、実際に見て参加すれば分かると思う。言葉だけじゃ、説明仕切れないこともあるからね」

「ちょ、ちょっと、まじで戦いに俺も参加するの?」

「そんな心配しなくても大丈夫。貴方は、ただ見ているだけでいいの。仮入部だしね」


 彩音は、一空の不安な点にも問題ないと切り替えすと、部長の方を見る。


「うん、うん。そんなもんでいいと思うぞ。お疲れ様、彩音。じゃ、早速部活といこうか!」


 そう部長は、決めていたかのように話した。


「え、本当に今からやるのか?」

「部長! 本気で言ってるんですか!? 今日は別にいいんじゃ」


 一空の驚きと共に彩音も驚いていた。


「別に問題ないだろう! いつも通り、彩音がサクッとやればさぁ。ただ見物人が増えるだけだって。それに、これからはこれが普通になって行くんだから、慣れるのも早い方がいいだろ?」


 彩音の提案を、部長は聞かずに強引に話しを進める。


「で、でも……」

「まぁ、とりあえず2人で行ってこい。ヤバくそうだったら私を呼べはいいから。ほら、行った、行った!」


 部長は立って彩音の背中を押しながら、一空と彩音を強引に向かわせるようとする。


「分かりましたよ……ほら、行くよ」

「お、おう」

「後、しっかり仲は深めとけよ。自己紹介とか今後のパートナーとしての意識を持つんだぞ彩音」

「……」

「返事」

「……はい、部長」


 彩音は少し不満そうに返事をし、2人は部室を出て行った。

 それを見送った部長は、スタスタと元々座っていた椅子へ戻り、座り直す。

 すると、誰もいない部室で部長がいきなり口を開く。


「……で、何の用だ。さっさと要件を言え……」


 部長は、背もたれに寄りかかり、手を腹部の上で組み、正面を見つめながら話した。


「いつから、分かっていた? それにしても強引に2人を行かせたね」


 部長の後方から、声が聞こえ部長は椅子で反対側に反転し、開いている窓の外を見る。


「お前にはどうでもいいだろう、そんな事は……さっさと本題に入れ、偽閻魔やろう……」

「いつになっても口が悪いな〜まぁよい、要件は《万城一空》についてだ」

「まだ、あいつのことで何かあるのか」

「あぁ、お前にも関係するただならぬ、運命があるだよ」


 そして、部長は偽閻魔の話しを聞き始めた。



 ――――――



 一空と彩音は、十色学園の体育館の前にいた。

 部長に強引に部室から送り出されてから、体育館に敵が現れる情報から彩音と共に向かっていた。

 その道中は、部室に向かって来た時とは違い、2人はある程度、部長からの指示もあったことから自分達の事を話し合っていた。

 またその中で、2人は名前の呼び方も決めていた。

 とりあえずは、今から戦う事もあり、今後のパートナーになると言う事を含めて、「一空」「彩音」と呼び合うことにしていた。

 道中は、名前呼びに慣れる練習や戦いの連携や役割を確認していた。

 そんなこんなをしながらで、2人は体育館の前に着いていたのである。


「とりあえず体育館に着いたね。い、一空……」

「そ、そうだな……あ、あ、彩音……」


 2人はぎこちなく、両者の名前を呼ぶが未だ慣れていないため、少し恥ずかしくなり沈黙となる。


「てか、うちの学園ってこんな立派な体育館だったか?」

「春休みの内に改装したらしいよ」


 そう言うと、彩音は一空の為に簡単に体育館内部の説明をしだす。


「体育館の入り口は自動ドアで、3階建てよ。1階が大きなホールがあり、3階まで吹き抜けになっているの。それに、1階には剣道場が別の部屋にあるの。そして2階の中心は1階のホールが見える吹き抜けになっていて、他には柔道場とトレーニングルームがあるの。最後に3階は、2階同様に1階ホールの吹き抜けが中心にあり、周りはランニングできるコースがあるわ」


 簡単に体育館の説明をしたことで、一空は改装した体育館内の構造を理解した。


「それじゃ、早速入ろうか」


 そう言って彩音と一空は、入口の自動ドアを通り中へと入る。

 中へ入るとすぐにホールがあるわけでなく、数メートル先にホールへのドアがあった。

 その前まで行くと、彩音が何かを感じ取り立ち止まる。


「この先に敵がいるわ……準備はいい?」


 そう話すと彩音は戦闘態勢に意識を変え表情も変わる。

 一空は自分が体験した事ないことに緊張しながら彩音の言葉に頷いた。


「お、おう……言われた通りに行動はするから心配するな」


 それを聞き彩音は、小さく頷きホールに入るためのドアを左手で押し開けて入る。

 そして、ホール中央には靄が掛かった人影の様なものが1つだけあった。


「あれが、戦う相手か?」

「そうよ……」


 すると中央にいた靄が掛かった人影が、一空と彩音の存在に気づき振り返る。


「なんだ、お前ら?」


 と、靄が掛かった人影の方から声をかけられる。

 そして彩音が反応して問い返した。


「貴方はどうゆう存在? 悪魔、天使?」


 その質問で靄が掛かった人影は何かを理解したように答える。


「あ〜なるほど。あんたらがここら辺で出現する奴らを倒してる存在か……」


 すると、徐々に彩音と一空に近付き始める。


「探す手間が省けたよ。それじゃ、お前らが持ってるストラップをよこせ!」


 靄が掛かった人影は近くに連れ、本当の姿が露わになる。

 目は釣り上がっており、頭から2本のツノが生えていた。

 そして両腕は龍の鱗のようになっており、手は鉤爪のように鋭くなっていた。

 上半身の胸は衣服のようなもので覆われているが今にもはち切れそうになっており、下半身も龍の脚の様になっており、尻尾も生えていた。

 そんな存在を初めて見た一空は、言葉を失っていた。

 しかし、彩音は動揺せずに対話し続ける。


「まさか、今まで見たことのない種族かつ、ストラップを狙って来るようになるとはね……」


 彩音は、右手でずっと握っていた刀を鞘から勢いよく抜き出すと、龍のような存在に向けて地面に勢いよく突き刺した。


「鉄よ……我が命に従い『業火』となれ!」


 そう唱えると、彩音の刺した刀から炎が勢いよく飛び出て、龍のような存在に向かって大きく燃え上がりながら向かって行く。

 しかし、龍のような存在は軽く地面を蹴って左に避けてかわす。


「そんな直線的な攻撃に当たるかよ」


 余裕そうにそのままかわした瞬間、真横に一瞬殺気を感じ振り向いた。

 そして、そこにいたのは、刀を横から頭部目掛けて振りかざしている彩音がいた。

 彩音は無言で斬りかかり、そのまま首をはねて終わらせる気だったが、そう簡単にはいかなった。


「なっ……」


 そこで、彩音の動きが突然止まる。

 それは、龍のような存在が彩音が斬りかかった刀を左手で握り止めていたためだ。


「なかなか、いい攻撃力だ。少し驚いたぞ」


 そう言うと、そのまま握った刀と彩音ごと、勢いよくスライドさせるように横に投げ捨てた。

 彩音は頭から壁に向かって飛ばされるが、空中で体勢を逆にし、足を地面につけることで、摩擦力で飛ばされた勢いを止めた。


「はぁ……はぁ……今までの奴とは、何か違うな……」


 体勢を立て直し、腰につけていた別のストラップを片手で引っ張ると、短刀が入っている鞘が両腰に装備される。

 そして、龍のような存在は、自分の事を高らかに話し出す。


「オレは今までのような雑魚とは違う。お前らからストラップを奪い、抹殺させるために作られた存在。その為に、色々な遺伝子を混ぜて作られた、キメラなのだ!」


 自らをキメラと名乗る存在は、言い終えると肩甲骨辺りから、大きな翼を生やし、腕に黒い球が片腕に5個ずつ回り出す。


「さぁ! 来い! まずはお前を、なぶり殺しにしてやる!」


 空気が震える程の声で叫ぶキメラ。

 一方、彩音は更に違うストラップを引っ張り、太ももの周りに15センチ程の筒のようなものがいくつか巻き付けていた。


「あんたらも本気で潰しに来たってことね……でもっ!」


 彩音はキメラへと走り出し、先程装備した太もものの筒から棒や刃を取り出し、組み合わせて槍としていた。

 そして、助走をつけたまま上空に高く飛び上がる。

 そこで、小さく再度唱える。


「鉄よ……我が命に従い『氷結』となれ」


 そのまま槍をキメラ目掛けて投げつける。

 だが、その槍はキメラの足元に勢いよく突き刺ささる。


「どこを狙っているんだ……」


 すると、キメラは彩音へ片手を掲げる。

 掲げた手元に黒い球が集まり出す。

 その瞬間、キメラの足下から凍てつく氷が生成され、あっという間に上半身まで氷に覆われる。


「っぐ……小賢しい真似を……」


 直ぐには抜け出すことが出来ないキメラ。

 それを見て、彩音は両腰の短刀を鞘からすぐさま抜き出すと再び唱える。


「鉄よ……我が命に従い『雷撃』となれ!」


 唱え終えると手に持つ短刀が電撃を放ち出す。

 そのまま空中から勢いよく、キメラめがけて短刀を振りかざして降下して行く。

 そして、動きの取れないキメラの肩へ目掛けて雷撃を放つ短刀で切り裂いた。


「どうだ!」


 攻撃の手ごたえから、見上げた彩音はキメラを見て愕然とする。


「……少しでも、自分の力が通じると思ったか?」


 するとキメラは、覆われていた氷を砕き割ると彩音と共に吹き飛ばした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ