1章④ 【神の名を継ぐ者】
「あんた、今何を言ってるのか分かっているのか?」
一空は部長が言ったことを聞き顔が青ざめていた。
それは【神の名を継ぐ者】という単語に対しての冒涜だったからだ。
だが、一空とは対照的にそんな事もなく部長は堂々と話し続けた。
「何であんなもんに怯えてんだ。あいつらは、歴史を偽っている。そんな奴らに世界を支配させておけないだけだ。その為に、この場所を作ったんだよ」
部長は、一空に対し強く伝える。
「何でそんなデタラメな事言ってんだ! あの人らがそんな事するなんてありえないだろ! アンタも知ってんだろ現に7年前の戦争だって、その人らのお陰で解決した事も知ってるだろ? あの人達がいなければ、この世界だってどうなっていたか分からない訳じゃないだろ!」
一空はそれが常識だと訴え、どれだけ非常識な事を言っているか訴えた。
「そもそもあんた、【神の名を継ぐ者】がどういう存在か本当に分かっているのか?」
「あぁ、知っているぞ。この世界を平和にした方々だ。戦争を終結させ、今までこの世界の危機を何度も救って来た方々だ! あんたこそ、知らないなら教えてやるよ」
部長は静かに、一空を見つめたまま黙っていた。
そして一空は【神の名を継ぐ者】の事を語り出す。
――――――
【神の名を継ぐ者】
これは一空らの世界にて、世界を守っているとされる存在である。
この世界では、これが常識として教えられる。
その正体を知る者はおらず、神の名前を継承して様々な力を保持しており、この世界を維持し、守り続けているとされている。
だが、7年前に【神の名を継ぐ者】に対し反乱を起こした集団がいた。
そして大きな戦争が起こった。
結果は、大きな損害を出したが【神の名を継ぐ者】が反乱分子を粛清し、世界の平和を守ったとされている。
――――――
「これが【神の名を継ぐ者】の常識だろ」
一空は、教わってきた常識を全て伝えた。
それを聞いた部長は、ゆっくりと口を開く。
「確かに、その常識は私も知っているとものと同様だった……だが、それを伝えているのは、他でもない【神の名を継ぐ者】だ。歴史を偽る事など簡単だ」
部長は一空の話を聞いても依然変わらず、意識は変わらなかった。
「何でそこまで【神の名を継ぐ者】を貶すような事を言うんだ! 何か恨みでもあんのか? お前がやろうとしてる事は、7年前の戦争と同じ事じゃないのか?」
一空は部長に強く訴えた。
「恨み……? まぁ、個人的にはあるな。やろうとしてる事もそうかもしれない……だが、奴らにこのまま支配させていたら、いずれ今の世界はなくなる」
部長はそう答えるが、一空には全く理解できなかった。
一空は部長に近づき、机に手を強く突きつける。
「あんたは間違ってる! また戦争をしようなんて! 無関係の命がなくなるんだぞ、そんなことやっていいわけないだろう!」
部長は一空の主張に対し、部長も椅子から立ち上がった。
「私が間違っていたな……お前のような奴に、まだ話すことじゃなかった、私の悪いクセだ」
そう話すとおもむろに、部長は肩にかけていた上着の内ポケットから右手で拳銃を取り出し、一空に向けた。
「っな!?」
一空は、向けられた拳銃に驚き後ろに下がろうとしたが、すぐ部長の左手で胸ぐらを掴まれ逃げれない状態になる。
そして、部長は一空を引き寄せ拳銃を頭の額に押し付けて、一空の耳元で小さく囁やいた。
「一度、消えろ……」
その後に、拳銃の引き金を引き、『カチッ』っという音が鳴る。
直後、一空の頭部に激痛が走る。
そのまま、後ろに倒れ頭を抱え、うずくまる。
「くぅぁぁ……ぁああ」
言葉にならないような声を上げる一空をただ見つめる、部長と彩音。
「部長、さっきのは話しすぎですよ。何でも答えてしまう、そのクセ何とかしてください……」
「分かってるよ……だから、あいつの記憶をちょっと飛ばしただろ?」
転がっている一空を放置しながら、小声で話し合う2人。
すると一空が大声を上げた。
「いってぇぇーー!! 何すんだお前!?」
声を荒げる一空に反応して答える部長。
「何って、モデルガンの引き金を引いただけだぞ。ちなみに弾は入れてない」
「じゃあ、なんだよこの痛みは!?」
「それは、お前みたいな奴に痛みを味あわせる用の武器だからかな。当然の痛みだ」
「なんだ、それ……」
部長はそれについては、詳しく話さずに、椅子にまた座り別の話題を振った。
「それより、さっきの話しの続きをしようじゃないか?」
一空は思い出したかのように立ち上がり、続けて話し始めた。
「そうだった、さっきの……話……」
しかし、何故がさっきまで何を話していたか、思い出せず言葉に詰まってしまう一空。
すると部長が話し出す。
「なんだ、忘れたのか? 世界征服部についてだろ?」
「そうだった……か?」
一空は釈然としないままが、部長の話を聞き入れた。
「で、世界征服部は何すんだよ?」
「簡単に言えば、この学園を脅かす存在を阻み、学園を守る部活だ」
一空はそれを聞き、部活名とかけ離れすぎており疑問を持った。
「それで、何で世界征服部なんだ?」
「それはだな、この学園こそ私が大切にしたい世界だからだよ。それを守るためにこの学園という世界を征服をするから、世界征服部なんだ」
その答えに、一空は驚く。
「十色学園があんたの世界?」
「あぁ、世界と言ったら、私達が今いるこの世界の事を考える奴もいれば、私みたいにこの学園こそが私の考える世界という考え方もある。人それぞれに、考える世界があるってことだ」
部長の言葉に、一空は世界と聞き、勝手にこの世界全ての事だと決めつけていた事に気付く。
「そんな考えはしたことがなかったか? 契約した条件の世界征服もお前が考える世界を征服すればいいんじゃないか? もしかして、この世界を本当に世界征服する気だったか?」
「っう! ……悪いかよ、世界征服と聞いたら普通そう思うだろ……」
少し恥ずかしいそうに答える一空。
「ハハハァ! さすがに、ただの一人の学生がこの世界を征服するのは無理だろう!」
笑いながら、部長は一空を茶化す。
「でもまぁ、お前がどんな世界を征服するかは知らんが、この部にいれば手伝いくらいしてやるぞ。まぁ、その代わりに私の世界征服も手伝ってもらうがな」
その言葉を聞き、一空は考え出す。
自分が達成すべき、世界征服は何なのか。
部長のように、自分が考える世界はあるのか。
それに、そんな自分勝手な世界征服であの閻魔を名乗る人物との契約が果たされるのか。
また、何か忘れていることがあるような気もして、それについても考えていた。
そんな事を考えているうちに、部長からの声が考えを遮った。
「考えて決まらないのなら、うちの部活を手伝いながら、色々な事に触れて決めてみたらどうだ?」
部長からの提案に一空は、少し沈黙したのち考えていても何も始まらないと思い返答する。
「まずは、……仮入部って形でなら……」
「別にそれでも構わない」
「とりあえずだからな! 俺は生き返る為に仕方なく世界征服するだけで、契約の為だからな!」
「はいはい……契約の為に世界征服する奴もどうなんだか……」
ちょっと呆れながら答える部長
「じゃあ、詳しい活動は彩音から説明よろしく!」
部長はいきなり彩音に説明を押し付け、彩音は驚いた表情をする。
「わ、私ですか?」
「あぁ、私ばかり話して疲れたから、あとよろしく。やってること話せばいいからさぁ」
部長の無茶振りに少し呆れたが、彩音は部長に変わり話し始める。
「私はまだ納得しきれてないけど。ひとまず、具体的にやってることを説明するわ。私達は、学園を脅かす者と基本的に戦っている」
「そもそも、学園を脅かす奴ってどんな奴だ?」
一空の問いかけに彩音は少し険しい表情をする。
「人ではない存在よ」
「え?」