1章③ 世界征服を企む部活
帯刀ポニーテール女子は、部屋の名前に驚いている一空を放っておき、世界征服部と書かれた部屋のドアに手をかけた。
「いつまでそこにいるの? 部屋に入って」
そい言うとドアの窪みに置いた右手を右側にスライドさせドアを開けた。
ドアを開けた部屋からは、微かに風が吹いてきた。
帯刀ポニーテール女子に続き、一空も「世界征服部」と書かれた部屋に入る。
部屋の大きさは、教室よりかは小さく真ん中に膝程の高さの机があり、机の両隣にソファーがあった。
その奥には校長室にありそうな少し大きな立派な机があり、椅子には誰かが座っているが背もたれがこちらを向いており誰だが分からない。
座っている人物は、開いている窓の外を見ていた。
「(誰が座ってるんだ?)」
一空は椅子に座っている人物が気になっていた。
「なんだ? 彩音、今日はやけに声が低く感じるな〜声変わりでもしたのかい?」
椅子に座る人物は窓の外を見ながら、彩音と言う人物に話しかけた。
すると、一空の後ろで入ってきたドアを閉めて、帯刀ポニーテール女子が答えた。
「部長、今のは私じゃないです! それと部長に用がありそうな人を連れて来ましたよ。」
その発言に椅子に座っていた人物はクルッと一空と彩音の方を向いた。
「ほぉ〜う、お前が私に用がある人物か……」
そう言うと、机に肘をつき顔の前で手を組むとその上に顎を置いて一空を見つめた。
「残念なことに、私はお前みたいな奴は知らないな……」
と、部長と呼ばれる人物は一空を突き放すように発言すると、一空は戸惑いながらも答える。
「俺はただ、後ろの帯刀ポニーテールに付いて来ただけなんだが……あっ」
一空は自分が変な名称で後ろに立つ彼女のことを呼んでいたことを口にしてしまったことに気が付くと、部長を名乗る人物は笑い声を漏らした。
「ぷっ! あはは! 彩音、お前のこと帯刀ポニーテールだってさぁ! まさに特徴を捉えたニックネームだな!」
「部長、そんなに笑わなくてもいいじゃないですか……それにその名前、私嫌いです」
そう言いながら、部長を名乗る人物に近づく、帯刀ポニーテール女子こと彩音。
「……」
この状況に気まずそうに目をそらす一空。
「で、どうしてそいつが私に用があると思ったんだ彩音?」
「これを見て、そう確信したからです」
そう話すと、一空から取り上げた紙を部長を名乗る人物に渡す彩音。
それを読み、彩音の言った事に納得したように軽く頷いた。
「なるほど、お前あの閻魔の関係者ってわけか。で、お前の名前はなんて言うんだ?」
一方的に納得している、彩音と部長を名乗る人物。
一空は自分の名前を言うとともに、疑問をぶつけた。
「俺は、万城一空この学園に通ってる。明日で2年だ。それより、あんたは誰なんだ? 閻魔と知り合いなのか? ってか世界征服部ってなんだよ?」
次々と質問を投げかける一空。
それに対し部長を名乗る人物は、落ち着くよう一空に対してジェスチャーを取り、質問に答え出す。
「まぁいいだろ。お前の質問には答えてやろう。まず、1つ目。私のことは『部長』と呼ぶこと。本名を教えるほどじゃないからな。次に2つ目だが、お前の会った閻魔とは、ちょっとした知り合いだ。それとあいつは本物の閻魔じゃないぞ。最後の3つ目。世界征服部だが、言葉の通りの事をする部活だ。その部長が私で、部員が彩音」
一空の質問に全て答え、更にプラスの情報もあり少し混乱する一空。
「ちょっと待て、他のも気になるが、閻魔が本物じゃないってどう言う事だ!?」
答えてもらった事に、更に全て質問したいところだったが、その中でも自分が生き返る為に契約した奴が、本物でないと言う衝撃的な内容に不安が溢れ出てきたため質問し返していた。
それに対し部長が答えた。
「正確に言うと閻魔ではないと言うだけで、何かしらの力を持つ、得体の知らない奴ということだ」
その答えに一空は、半分安心したが、半分不安が残った。
とりあえず、自分との契約は守ってもらえそうなことに安心した一方で、自分は何と契約したのか不安になっていた。
「それじゃ、次は私のターンだな。私からは1つだ。万城、お前今日からうちの部活に入れ。うちの学園の生徒だから問題ないしな」
部長は、いきなり一空を勧誘し出す。
それに対して一空は、すぐに拒否する。
「いや、俺は部活になんて入ってる暇はないんだが……」
部長は笑顔で更に話す。
「ほう、お前の質問に全て答えてやったのに、恩を仇で返すのかお前は?」
「いや、別にそういうわけじゃなくて、ただ部活に使う時間なんてないんだよ……」
「それは、寿命が1年しかなくて、契約した内容を達成しなければいけないからか?」
部長は脈絡もなく突然、一空の事情や目的を正確に言い当てた。
「えっ……なんでその事……」
一空は突然すぎて、うまく言葉が出なかった。
「言ったろ、私はお前が会った閻魔を名乗る奴とは知り合いだって」
部長がそう言うと、一空はすぐにピンときた。
「まさか、あいつから聞いたのか?」
「まぁ、全てじゃないが面白く、使える奴がいるって聞いたんだよ。と言うか、お前この紙読んだんだよな? まだ気づかないのか?」
そう言って、貰った紙の内容を思い出す。
「読んだよ。俺は協力者を探してて、その特徴が部の長で、髪が長くて、上着を……」
そこまで口に出すと一空は、それに当てはまる人物が目の前にいる事に気付く。
「まさか、あんたが閻魔が言っていた協力者か!?」
「あの閻魔野郎が教えたのは、私の事だろうな。こんな風に書きやがって、次会ったらタダじゃすまさねぇ」
紙の文を読み、部長は少し怒りながらその紙を丸めた。
「で、どうだ? うちの部活に入るだろ? お前が課された条件の達成にはピッタリな場所だろ?」
再度、一空を勧誘した。
しかし、目の前に世界征服を企む人が未だにどんな人物かも分からず、更に部活と言っている人の言葉にすぐに乗るわけにもいかないと感じ問いかけ始める。
「そもそも、あんたらはどうやって世界征服をするつもりなんだ? と言うか、何故世界征服なんてしようとしてるんだ?」
疑問を部長に投げかけると部長は、机で組んでいた手を解き、椅子の背もたれに倒れかかり、一空の質問に答えた。
「それは、もちろんこの世界を牛耳る【神の名を継ぐ者】全員を消す為だ」
静かに何も物怖じせずに、この世界の常識としてありえない事を言い放つ部長に、一空は冷や汗をかいた。