2章⑮ 屋上の攻防戦
一空と彩音は階段を駆け上がり、遂に屋上への扉を開けた。屋上は上から見ると四角形で中央には中庭が見える形になっていた。
「彩音、フラッグはあったか?」
一空の問いかけに彩音はそこから屋上の辺り一帯を見回すと声を上げた。
「あった! 対角線上の先にフラッグが見える!」
「反対側か……今なら誰もいない、取りに行くぞ!」
一空の掛け声を聞き、彩音も走り出す。四角の屋上の左下側に出た2人は、フラッグがある右上側に向かって走り出す。その時、足元から道幅ほどのレーザーが出てきた。
「うわぁっ!?」
一空は、ギリギリで後ろに避けた。
「今のは……」
「あっぶね……ってなんだよ、これ!?」
一空と彩音の前に先程まであった道が、放たれたレーザーによって崩れてしまい無くなっていたのだった。
「さっきの、どでかいレーザーみたいのはなんだ?」
一空は軽く崩れた下を覗くと、そこには部長らしき姿が1階に見えたが、確信できるほどではなかった。
「一空、何してるの反対側の通路から行くよ!」
「あぁ、今行く!」
そう言って一空は、覗くのを止めて、彩音の後を追う。角を曲がり直線上にフラッグが見えてきた瞬間、近くにあった扉から双葉が飛び出てきた。
「嘘だろう!?」
一空が驚いている間に彩音はナイフを取り出し唱える。
「鉄よ、我が命に従い《氷結》となれ」
そして、彩音の持つナイフの刃がみるみる氷になっていき、双葉の双剣と交わった。
「一空、今のうちにフラッグを!」
「言われなくても!」
一空が彩音を抜き去ると双葉が片手を短剣から離し、一空に掴みかかった。が、寸前で掴むことはできず、一空はそのまま手を伸ばしフラッグを掴みに行った時、フラッグが右にずれ掴むことが出来なかった。
「なんだ!?」
ずれた方を見ると、そこには桃瀬が立っており、フラッグを鞭で引き寄せていた。
「なんでお前がここにいる? あいつはどうした!」
一空が問いかけるが桃瀬は答えなかった。だが、桃瀬の状態は先程よりボロボロの状態ではあった。それに崩れた通路側に立っている理由が、理解出来なかった一空だったが、崩れた所の下の階から盾が伸びているとこが目に入った。
「なるほど、あの伸びる盾を使って下の階から来たのか……」
一瞬、彩音の方を見るが双葉との対峙で、加勢はないと踏んで、桃瀬と対峙することに決める。だが、ゲージは1本しかなく不利な状況だった。
「ここでお前を潰す!」
桃瀬は声を上げながら鞭を振りかざし、一空に攻撃をする。腕を前に出して鞭を防ぐ一空だが、威力が強く後ろに押されていた。彩音も双葉の双剣に防戦一方となっていた。
「(このままじゃ、マズイ……なんとかフラッグだけでも……)」
彩音は自分の残りの武器を確認して、一空に声をかける。
「一空! ガントレットに爆発をつけて!」
「っ! 分かった!」
一空は彩音の方へと大きく下がり、言われた通りにゲージを使い右腕にガントレットを装備した。その光景に驚く桃瀬。そして彩音は双葉を振り抜き、一空の真後ろに移動しに来て、短剣を2本取り出して一空の背中に当てた。
「彩音、何するのか分からないんだが……」
「このまま飛ばすから、凛ちゃんごと爆発で飛ばしてフラッグを取る! 屋上はフェンスがあるから、それに引っかかるはず」
いきなりの作戦に戸惑う一空だったが、彩音はすぐに実行した。
「鉄よ、我が命に従い《暴風》となれ」
「ちょっ、ちょっと待て! まだ心の準備が……」
そんな事に耳を傾けることなく、彩音は一空を暴風で桃瀬に向かい吹っ飛ばした。
「!?」
桃瀬は驚きの表情をしており、対処が遅れる。そこへ一空が、ガントレットを前に突き出して、桃瀬の近くで振り下げた鞭に当たり爆発が起こった。すると、桃瀬は後ろのフェンスめがけて吹っ飛び、後ろに下げていたフラッグごとフェンスへと吹き飛んでいた。フラッグは折れて地面に転がり、桃瀬は気を失っていた。
一空も彩音が使った暴風の影響もあったが、桃瀬が飛ばされたフェンスまで吹っ飛ぶ事はなかったが、爆風の影響で真横のフェンスを超えて中庭に落ちて行った。
「え!? う、うそーーーー!!」
すると、一空の落下中にフラッグを取った合図のチャイムが1回鳴り響いた。