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オバケの世界征服  作者: 属-金閣
2章 4月1日~4月4日 三原学園
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2章⑭ 屋上への可能性

 

 一空は部長に指示された目的地へ向かっていた。その途中で激しく戦い合う音が聴こえてきた。


「この先で誰かが戦っているのか?」


 そのまま走っていると、突然左の曲がり角から彩音と竜胆が現れて、ぶつかりそうになる。


「あぶねっ!」


 ぶつかる寸前の所で止まる一空。それに気付く彩音と竜胆。


「お前! なんでここに!?」


 竜胆が驚いて問いかけたが、彩音はすぐに目線を前に向けて、短剣を取り出し唱えた。


「鉄よ、我が命に従い《防風》となれ!」


 次の瞬間、通路を覆うように風が出現し、迫って来ていた鞭の攻撃を防いだ。そして彩音が一空の方に視線を向けた。


「とりあえず、一空もついて来て! ここじゃ、話すことができない!」

「お、おう」


 一空は彩音の命令に従い、彩音と竜胆について行くように走りだした。



 ――――――



「はぁ……はぁ……」

「ふぅ……ふぅ……」

「とりあえずここまで……来れば……大丈夫でしょう……」


 3人とも息を切らしながら、竜胆は少し足を引きずっていたため、負傷した足の治療を行い、彩音は後ろを振り向き追撃されていないことを確認した。


「てか……なんで……逃げてたんだ?」


 一空も息を切らしながら問いかけた。


「それはね、分が悪かったの……ふ~、しかも相手に東堂さんがいたから」

「だが……奴は途中で、どこかに行ったろ」


 彩音と竜胆は息が整いながら問いかけに答えた。


「どこかに行ったって、どういうことだ?」


 一空は竜胆の言った言葉に引っかかっていた。

 

「一空も聞いたでしょ? 爆発音みたいな音」

「あっ! あの音か。あれを聞いてどっか行ったのか?」


 一空の言葉に頷く彩音。そして竜胆は一空の手に持っていた物に気がつく。


「お前、その手に持ってるのはフラッグか?」

「あぁ、さっき取ったんだ」


 あっさり答える一空に驚く2人共。それで彩音が何か納得した表情を見せた。


「まさか、フラッグを取ったからさっきチャイムが鳴ったのかな?」

「なるほど。たぶん、そうだろうな。それ以外にあのタイミングで鳴る意味が分からないしな」


 彩音の推測に竜胆が賛同した。


「とりあえず、後フラッグは2本だ。残りのフラッグを早く見つけに行かないと」


 一空は2人を急かすように話す。


「そうだね、でも私達は逃げ回ってたから見つけてないのよね」


 彩音がそう伝えると竜胆は意外な一言を話す。


「いや、確実ではないが、逃げ回る時に屋上にフラッグの様なものが見えたな……」

「真、それ本当!?」


 彩音はその発言に驚く。その時、逃げて来た方から走ってくる足音がした。


「っ! ……もう追いついて来たか」


 竜胆がいち早く気づき2人の前に出る。


「真、どうする気?」

「もちろん、足止めだ。あの会長がいないだけマシだ。そのうちに屋上に行け! 今は少しでも可能性がある方に行くのが効率的だ」

「確かに真の見た事を信じて行く方が、無闇に探すより良さそうだけど……さすがにあの相手に負傷もして戦闘でも不利な真だけ残すわけには……」


 彩音は竜胆が追って来ている相手に対して、先程の戦いから不利な事を分かっていた為、竜胆を残すに反対していた。だが、竜胆は意見を曲げなかった。


「負傷の俺が行くより、彩音とそこのフラッグ取った奴が行く方がいい。いいからさっさと奥にある階段から上に行け!」


 竜胆が強い口調で2人を行かようとする。それに彩音は、少しその場に立ち止まっていたが振り返って走り出す。


「……真! ここはお願い、一空行こう!」


 一空も振り返って彩音の後を追おうとしたが、一度立ち止まり竜胆に呟く。


「あんたは、俺より強いんだ。無様に負けるんじゃねよ……」


 そう言い残して彩音を追って走り出した。そして竜胆は独り言を呟いた。


「……お前にそんなこと言われたくねーよ」


 上着から、最後の1本の体力回復できるゼリーを取り出し飲み込んだ。飲み終えたのと同時に、目の前に追撃に来た2人が立ち止まった。


「また、お前か……」

「もう逃げないのか?」


 追撃に来た2人の桃瀬と双葉は竜胆に言葉を掛けた。


「あぁ、俺は足手まといだから、お前らの相手する役になったんだよ……女でも手加減はしねからな……」


 そう告げると腕から軽く蒸気を出して威圧した。それに対抗するように桃瀬は鞭を地面に打ち付け、双葉は短剣の双剣を構えた。そして両者一斉に地面を蹴り出し、正面から激突する。



 ――――――



 一空と彩音は階段を駆け上がっていた。


「一空、部長とはどうしたの?」

「ホアロって奴を足止めする為に早々に分かれたよ……そのあとは分からん」

「もしかしたら、東堂さんは部長とホアロって人の所に向かったんだよ」

「それって、部長大丈夫なのか? 二対一で不利になるんじゃ」

「問題ないよ。一空は分からないだろうけど、想像より部長は強いから大丈夫だよ」


 それを聞くと一空は、返答する事なく頷き彩音と屋上を目指して階段を駆け上がった。



 ――――――



 『ギィン!!』という刃物が交わる音が辺りに響いた。一度だけでなく、二度三度もぶつかり合う音が廊下中に響く。


「ふぅ~……少し体がなまってたかな?」


 そう呟き部長が軽く肩を回したりしていた。一方、部長が相手にしていたのは東堂だった。東堂は息を切らし始めていた。


「ふぅ……ふぅ……」


 それでも部長を睨み、戦闘態勢は解かなかった。


「東堂、ハッキリ言ってやろう」

「?」


 その部長の言葉に耳を傾ける東堂。


「今のお前は、弱い……」


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