2章⑬ 楯守 VS 一空
『ドォーン』と大きな音が響き渡り、誰かが壁に打ち付けられると煙が一帯を包んでいた。
「ぐはぁっ……」
煙の中からよろよろと抜け出てきたのは、ホアロだった。
「ここまで、強いとは……想定外だ……」
膝と手を付いて、息を整えていた。
そこに、煙の奥からホアロに向かって来る足音が響く。
「もう、おしまいか?」
「バケモノが……」
煙の奥から現れたのは、部長だった。そしてホアロの言葉にすぐ反応した。
「お前は女性に向かって何て言葉を言うんだ」
「素手だけで、そこまで強いんだピッタリでしょう」
それを聞き部長の顔が曇り、ストラップを取り出した。
「これで、お前の失礼な口閉ざしてやるよ……」
部長はストラップの紐を引っ張るとある武器が部長の右手に出現した。武器の全体は銃剣の様な形状だったが、握り手の箇所は円形状になっており真横に一本の掴み部分がある者になっていた。すると、握り手部分を真横から縦に回すと先端の剣の刃が引っ込み、銃口が広がり少し突き出た。
「それが、《五源器》ですか……」
「受けてみればわかる」
そして、部長とホアロは再びぶつかり合った。
――――――
「今スッゲー音がしたな。でも、よそ見はしてられない」
一空はそう言うと自分の戦闘に集中を戻す。既にストラップを引っ張り、装備をし戦闘に入っていた。
「……」
一空の前には、ヘルメットを被り両手に大きな盾を装備していた、楯守がいた。そして、その後ろには東堂達のフラッグが立っていた。
「さて、どう攻めるかな……」
「行かせない……」
一空と楯守は両者動かず、相手の出方を見ていた。そして先に動いたのは一空だった。
「別にあんたを倒す必要はないんだ! 後ろのフラッグは貰うぜ!」
一空は一直線に楯守に向かい、直前で左に方向を変えて、回り込む様にフラッグを取りに行った。
「よし、抜ける!」
その時、楯守の装備していた盾が一空の目の前に現れ一空の進行を防いだ。防がれた勢いで、そのまま後ろ弾き飛ばされる一空。
「いってぇぇ……なんだ?」
「行かせないと言ったはず……」
一空は顔を上げて楯守の方を見ると、先程自分が突っ込んだ所には楯守が装備していた盾が伸びていた。
「おいおい、伸びるのかよその盾」
一空の問いかけには答えない楯守。そして、伸ばした楯はすぐに元に戻っていた。
「くそ、だったらその盾を貫くしかないか。あの盾を貫ける剣を出現させよ!」
そう呟くと腕のゲージが1本消えると武器出現する。そして、再度楯守に突っ込むと楯守は自らの盾を構えた。
「いっけぇぇ!」
叫びながら一空は楯守に剣を突き出し、剣が楯守の盾に当たった瞬間、一空の剣が折れる。
「えっ、嘘!?」
一空が驚いていると、楯守の盾が襲いかかって来て、そのまま一空を後方に吹っ飛ばす。
「くっそぉぉ……なんでだよ! 貫けないじゃねぇかよ」
「あなたには、私を抜くことはできない。このフラッグを取ることもね」
一空は楯守の後ろのフラッグを見つめる。
「(目の前にフラッグがあんのに、あの鉄壁少女が思ってたより厄介だな)」
一空はそう考えているとあることに気づく。
「(そう言えば、あいつから攻撃してこないな……まさか、こいつがハンデの守備だけの奴か?)」
「……」
楯守は黙ったまま盾を構えて一空を睨む。
「(そうだとしても、どうやってフラッグを取る。抜けない、攻撃も何故かダメとなるとどうすれば……)」
一空は考え続けていると、戦闘訓練をしていた時の彩音のある言葉を思い出す。
――――――
「彩音、さっきの行動なんだよ! いきなり目の前で武器捨てて、俺が驚いて止まった所をいきなり攻撃するのとかありかよ!」
「一空、相手が想像のつかない行動をするのも一種の攻撃だよ」
「なんだそれ……」
「まぁ、少しでも頭のすみに置いておいてよ」
――――――
「相手が想像しない行動……か」
一空は小さく呟く。そして、何か閃いたのか立ち上がり再び戦闘態勢をとる。それに楯守は、警戒して構える盾に力を入れる。
「どんな衝撃にも耐えられる槍を出現させよ!」
すると、長めで先端が鋭い円錐の槍が出現した。それを見て楯守が小さく発した。
「どんなものだろうと、私の盾を破ることはできない」
「こんだけ、鋭ければお前の盾だろうと突き破れるだろ!」
一空は楯守に向かい挑発するような言葉を投げかけ、勢いをつけて突っ込んんで行く。
楯守はその言葉を聞き、さらに足腰に力を入れて一空の槍を待ち受けていた。
「さぁ、もっと力入れて構えないとあんたごと吹っ飛ぶぞぉ!」
「ぐぅっ!」
勢いよく突っ込んでくる一空に、楯守はどんな力にも耐えられるように盾を下に伸ばして、めり込ませた。それを見た一空は、槍を徐々に下に向けて行く。すると両手で槍を持って楯守が下にめり込ませた盾めがけて槍を勢いよく突き刺した。『ガンッ』と音が響き、楯守は目の前の光景を疑った。
「なっ!?」
そこには一空が槍を使って空高く舞い上がっていた。それは、棒高飛びのように槍を盾に食い込ませ、そのまま勢いよく飛び上がって楯守を飛び越えて行っていたのだ。
それに対し楯守はすぐに対処できなかった。理由は一空に挑発され、盾と体勢に力を力を入れていたため、予想外の行動に動くことができなかったのだ。
「力を入れてくれたお陰で上手くいったぞ!」
一空はそのまま、楯守を飛び越えその奥にあったフラッグに手を伸ばし掴んだ。その瞬間、チャイムが1回鳴った。そして、一空は背中から着地していた。
「いっだぁ……体勢崩した……」
「そんな、あんな行動で抜かれるなんて……」
楯守は取られたフラッグを見て、崩れ落ちた。
「よし、これで1本目だ!」
一空は立ち上がって崩れ落ちた楯守を見た後に、その場を後にした。