2章⑫ 戦闘開始
「それじゃ、作戦通りで頼んだぞ2人共」
そう部長が言うと、彩音・竜胆チームと別れる。そして部長と2人きりになった一空は作戦の確認の為、恐る恐るもう一度言われたことの確認をする。
「あの、さっき話した部長と東堂のストラップの事もう一度聞かせてくれません……」
一空は部長に跳ね返されると思っていた内容だったが、部長はそれを聞くなりすんなり話し出した。
「あぁ、《五源器》のことか?」
その態度に逆にビックリする一空。
「えっ……嫌がらないのか……」
「なんだ? 聞きたくないのか?」
「いや、聞きます!」
一空は素直に部長の話しに耳を傾けた。
「さっきも話した通りだが、私と東堂のストラップはお前達のやつより特殊なんだ」
そう言って、部長はそのストラップを見せた。
「《五源器》と言って、ストラップ魔法にある科学者が手を加えて作った物だ。この世に5つしかなく、それぞれ強力な力を秘めている。何より代償を毎回、必要としないことが特徴でもある」
「代償が必要ない?」
一空は部長の発言を聞き返した。
「正確に言うと、必要ないのではなく既に支払っているんだ。こいつは寿命付きで、その分の代償を前払いしている。どんな代償なのかは知らない方がいいぞ」
部長は一空を脅すように話すと、一空は目を逸らした。
「それは教えてくれなくて結構……話を戻すが、使いたい放題な武器ってことか。それにそんなのが、残り3つもあるのか?」
「まぁ制約はあるが、それを除けばお前の言う通りだ。後、私が分かってるだけでは、残りは2つの行方が不明なんだ」
「残り3つの内1つは、誰が持っているのか知ってるってことか」
一空の返答に軽く頷く部長。
「《五源器》の1つはある女が持ってるのは分かっているが、今も持っているかは五分五分だな」
「その女ってのは誰なんだ?」
「それは……」
部長が一空の質問に答えようとした瞬間に、勝負開始のチャイムが響き渡った。
「!!」
一空と部長はそれを聴いた瞬間に、話しを止めて走り出す。
「話は中断だ! まずはこの階を探しながら奴らの拠点場所であろう所を目指す!」
「了解!」
2人は走りながら、フラッグがあるかを探していた。そして廊下の曲がり角を左に曲がった時に2人の足が止まった。
「まさか、いきなり貴方達に会ってしまうとは」
そう言ってきたのは、サン・ホアロだった。
「お前1人か?」
一空がホアロに聞き返すとホアロは両腕を広げて答えた。
「そうですよ。私1人ですよ」
そう言い返すと、部長目掛けていきなり突っ込んで来て、殴りかかった。が、部長はその拳を片手で止めた。
「おいおい、いきなり女子に殴りかかるのは、どうなんだ?」
ホアロはすぐに、部長から離れると後方へと回避し距離をとった。
「貴方は強いんでしょう? だったら始めらから本気でいかないと勿体ないじゃないですか……」
ホアロはそう言って手元にストラップを取り出し、紐に指を引っ掛けそのまま引っ張った。すると、ホアロの腕と脚が黒い鎧に包まれた。
「万城、お前はフラッグを探しながら目的地に行け。あいつはここで簡単に引き離せる相手じゃなさそうだ」
「……分かった」
一空はそのまま走りだして、その場から離れて行く。それを見て部長は片手を腰に付けて、ホアロに向かって挑発した。
「どうした? 早くかかって来い。私を本気で狩りに来たんじゃないのか?」
だが、ホアロは部長の挑発に乗らず、問いかけて来た。
「まさか、貴方が残るとは意外でしたよ。でも、私に構っていていいのですか? もう一方の方を1人にしていいのですか?」
「お前をさっさと片付ければ問題ない事だ」
「随分と、バカにしてくれますね……」
そう言って、ホアロは再度部長に殴りかかりに行く。
――――――
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「こっちがハズレか……」
彩音と竜胆は柱に隠れながら相手の攻撃をしのいでいた。
「どうする、真? さすがに3人相手じゃ、1人で対処は難しいでしょ……」
「いや、どうにか隙を作る。彩音はフラッグを優先してくれ」
話し合っている間も攻撃が続く。攻撃してきたのは、副会長の桃瀬だった。その他には、双葉と東堂がいた。それぞれ武器を装備しており徐々に近付いて来ていた。
「隠れてても無駄ですよ。桃瀬の鞭からは、逃れられないですよ」
桃瀬は持っている鞭で辺り一帯を攻撃し続けていた。東堂は大剣を逆手持ちで持ち、双葉は短剣の双剣を装備していた。そんな中に竜胆は、自らのストラップを引き抜くと同時に桃瀬に突っ込んだ。
「それはただの無謀な行動です」
桃瀬の前に東堂が庇う様に現れ、大剣を盾の様にして竜胆の蒸気で勢いがついた拳を止めた。
「!? 嘘だろ……剣が砕けない?」
竜胆の拳は鉄の剣ぐらいなら簡単に破壊するぐらいの威力があったが、東堂の大剣はそれを受け止め無傷で受け止めていたのだ。すると、東堂は竜胆の拳を大剣で押し返し、怯んだ竜胆に鋭い蹴りをくらわせた。竜胆はもろに蹴りを腹部に受け、後方に吹っ飛ぶ。
「ぐぅっあぁ! ……さすが《五源器》の1つだけあるな……」
「真!」
彩音が飛ばされてきた竜胆の側に寄る。
「僕の剣は決して壊すことはできないよ。君達も知っているんだろう、この剣の特性を」
そう話しながら近づいてくる東堂。
「真、ここは一旦下がろう! 別のルートで向かおう」
「ぐぅ……分かった……」
そうして彩音と竜胆は東堂達に背を向けて来た廊下を戻って行く。
「逃しはしませんよ」
東堂達は、逃げて行った彩音と竜胆を追いかけた瞬間だった。遠くの方で大きな爆発音の様な音が響いたのだった。