2章⑧ 三原学園と噂
一空が彩音と戦闘訓練をし出して4日がたった。この日は、部長から訓練が終わり次第部室に集合と言われていたため、早めに切り上げて2人は部室に向かっていた。
「今日は、なんで部室集合か知ってんのか?」
「いや、今日のは私も知らない」
彩音は首を横に振って答えると、一空は恐る恐る聞いた。
「……もしかして、また戦闘とかか?」
「いや、その可能性は低いと思う。あるんだったらわざわざ、訓練後に集めないで、先に行かせると思うよ」
その返答に確かにと頷く一空。そんな事を話しているうちに、部室前に到着し彩音がドアを開けた。
「ただいま戻りました」
そう言って部室に入る彩音と一空。部室には、既にいつもの椅子に座る部長と竜胆がソファーに座って待っていた。竜胆と一空が合うのは、勝負の日以来であった。
「……」
「……」
2人は目を合わせただけで何も会話する事なく、無言だった。彩音は部長に今日の集まりの理由を聞き始めた。
「部長、今日はどういう集まりですか?」
その質問に一空、竜胆も気になり部長の方を見た。
「今日はこの後、ある所に向かう為に集まってもらった」
その答えに3人ともピンときていなかった。それを見て部長が上着からある手紙を出して彩音に渡した。手紙は二つ折りになっており、そこに書かれていた名前を読んだ。
「三原学園」
その名を読んだ彩音と聞いた竜胆は、何故集まったかの理由を理解した表情をしたが、一空は何も理解出来ず『ポカーン』とした表情をしていた。
「部長、もしかしてあの噂を確かめに行くんですか?」
竜胆の問いかけに、部長は頷いた。
「竜胆の言う通りだ、現状三原学園と連絡が取れない状態だ。それに噂の件もあり、確認する必要がある」
「でも部長、どうやって行くんですか? 三原学園は隣町ですよ、今から行くと相当時間がかかりますよ」
3人は一空を置いてけぼりにして話を続けていたが、一空が堪らずに口を開いた。
「話を進めてるとこ悪いんだけど、何の話か全っっ然分からないんだけど。誰か説明してくんない?」
その発言に3人は一空を見つめた。
「い、いきなり黙って見つめるなよ……」
その状況に一空は少したじろぐ。すると、彩音が説明しだす。
「そうだよね、一空は知らないよいね。えっと、そうだな……まず、三原学園って言うのは、うちの学園とは、よく交流があるの学園なの。それにそこの生徒会長と部長は仲がいいの」
一空は、彩音の説明を真剣に聞き入っていたが、1つ質問をした。
「もしかして、そこの生徒会はうちみたいな活動してるのか?」
「そうね、同じ様な活動をしてるよ」
彩音は一空の質問にすぐに答えると、そこに竜胆が口を挟んだ。
「常識として交流がある学校くらい、知ってるもんだろ普通」
竜胆の言葉に一空は『ムッ』としたが、黙って流した。
「真、喧嘩を売るようなことを言わないの。誰もがみんな、知ってるわけじゃないんだから」
彩音がその場を納めて、話を続けた。
「それで、噂ってのが三原学園で【神の名を継ぐ者】が現れて戦闘があったらしいの」
「この前みたいな奴じゃなくて、【神の名を継ぐ者】か?」
「それは何とも言えないの、ただの噂だから」
彩音は一空に対して説明し終えると、部長も加わって話し出す。
「先程も言ったが、三原学園と現状連絡が取れない状態だ。それが心配なのと噂を確かめる為に今から向かうのが今日の目的だ。ちなみに今回は私の個人的な依頼活動だ。それでもついて来るか?」
部長は部員達に、再度伝えると部員達が答えた。
「俺は噂に興味があるので、ついて行きますよ」
「私は、三原学園に知り合いもいますし部長について行きます」
「俺は……俺は真実を確かめると決めたんだ。【神の名を継ぐ者】って奴に合えるなら、ついて行くぜ」
「そうか。それじゃ行くぞ、お前ら」
「あっでも、部長どうやって?」
彩音の出鼻をくじくような問いかけに、部長は部室の窓の外を指すような動作をとる。その先を見ると、黒いゲートが突然出現して、閻魔を名乗る人物が出てきた。それにいち早く反応したのが一空だった。
「お、お前!?」
「よぉ、久しいなオバケさん」
閻魔を名乗る人物は一空に軽い挨拶をした。
「あのなぁ、よぉとかじゃなくてだな、お前にも色々聞きたいことが……」
「それは、またいつかな」
一空からの問いかけを軽く流し、部長の方に視線を向ける。
「それじゃあ、やるぞ」
「あぁ、頼む」
それを聞くと閻魔を名乗る人物は自身の正面に黒いゲートを出現させ、部長達目掛けて黒いゲートを突き放った。次の瞬間、部長達は黒いゲートに飲み込まれて部室から消えていった。
「ふぅ〜やることも終わったし、帰るか……」
閻魔を名乗る人物は自身の正面に再び黒いゲートを出現させ、そこへ入って消えた。
――――――
部長達が黒いゲートに飲み込まれて、次に見た光景は、十色学園とは違う学園の正門前だった。
「だいたいな……って、どこだここ?」
一空はさっきまで、閻魔を名乗る人物に話しかけていたが、瞬間的に違う場所に立っていた事に驚いていた。
「万城、いつまでいない奴に話しかけてんだ。もう三原学園に着いたぞ」
部長が一空に向かって答えると、一空は正門前から学園を見上げた。
「ここが、三原学園……」
すると周囲を見回す一空。そして違和感を感じた。
「本当に、学園かよ……なんか気持ち悪い感じだ……」
その言葉に彩音も同感していた。
「三原学園はこんな雰囲気じゃないはず……」
「何か起こっているのは確かだな」
竜胆もそう言って辺りを警戒しながら見回す。そんな中、こちらに近付く足音に全員が気付く。
「誰か来たな」
部長は、3人に近付く者がいることを伝え警戒させる。その中近づいて来た人物が、4人の前で立ち止まり挨拶をしだす。
「ようこそ、三原学園へ。お待ちしておりました、十色学園の世界征服部の方々」