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オバケの世界征服  作者: 属-金閣
6章 6月24日〜 獣王
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6章② 彩音が残した言葉



「お久しぶり....いや、初めましての方が合っているかな。」



翡翠の発言直後に仁が言葉を発した。


「お、お前は、あの時死んだはずじゃ...」


仁の問いかけに翡翠は、自分も少し首を傾げながら答えた。


「私もそう思っていたんですけどね。」

「何がどうなってるんだよ?死んだって聞いていたけど、本当は生きていたのか?」

「そんなはずはない。目の前で心臓を貫かれて息を引き取るとこまで見ていたんだぞ。」


一空が混乱し始めると、仁が一空の言葉を否定し自分が確認した事実を伝えた。

そんな理解出来ない状況の2人を見て、翡翠が口を開いた。


「私が説明する前に、部長さんから私の事について説明されてはいかがですか?」


と、翡翠が部長に提案をした。

すると、一空と仁は部長の方を向いた。


「あ〜、確かにそうだな。万城と似たようなもんだから、勝手に解釈すると思っていたが当てが外れたな。」


そう言って部長は、壁のホワイトボードの前まで向かった。


「(そう言われれば、俺も似たようなもんか...)」


部長の呟きを聞いて一空は心の中で思った。

そして部長がペンを取って、翡翠についての話を始めた。


「分かりやすい様に少し抜粋して話すぞ。まず、そこに立っている伍代翡翠は、確かに私達の前で心臓を貫かれて死んだ。だが、今は生きている。」


部長は、ホワイトボードに翡翠とした人の絵を描いて胸にバツを書いた。


「じゃ、何で生きているかと言うと、貫かれて無くなった心臓が再び造り直されたんだ。」

「っ!?」


考えてもいない言葉を聞いて一空と仁は驚いた。

すぐに仁が部長に問いかけた。


「そんなの人間じゃねぇぞ...」

「まぁ、半分は人間じゃないと言ってもいいな。」

「半分?」


部長の返答に一空が首を傾げた。


「伍代の体は、元々〈ハデス〉が意識的に操っていたんだ。」

「〈ハデス〉って確か、【神の名を継ぐ者】の1人だったか?」

「あぁ、7年前の戦争時、中心にいた人物の1人だ。」


少しうる覚えながら答えた一空の言葉に、部長が付け足す様に答えた。


「その〈ハデス〉がどうしてコイツなんか操っていたんだ?」


その問いには、割り込むように翡翠が答えた。


「〈ハデス〉のとある勘違いから、操られたんです。申し訳ありませんが、何を勘違いしたかまでは、今は教えられません。」

「とある勘違いね...」


仁は少し疑問が残る回答だったが、それ以上は追求せずに止めた。

その状況を見て、部長が再び話始めた。


「話を戻すが〈ハデス〉は他人を操る際に対象に自らの一部を取り込ませる事で、操っているんだ。それで伍代は、こないだまでセカンドを名乗らされていたわけだ。」


そして、ホワイトボードにハデスと書いて円で囲み、翡翠の絵の近くに小さい円を描いて説明し出した。


「〈ハデス〉の一部と言っても奴自身は、ほんの少しだけ体の一部を切り離し、対象に取り込まれてから体内で増殖して、対象を完全に乗っ取り操るのが、仕組みだ。」

「っ!」


部長の説明に仁が反応した。


「ん?何か引っかかる事があったか仁?」

「...いや。少し驚いただけだ。」


仁の返事を聞くと、部長は続きの説明を再開した。


「そこの伍代は、あの時の戦闘時に増殖した〈ハデス〉の一部の中心が心臓であり、そこを貫かれた事で一時的に解放された。元々、増殖力の強い奴の一部は、すぐに再生を始めた事が、伍代の心臓が造り直された理由だ。」


「それじゃ、あいつはまた〈ハデス〉の操り人形じゃないのか?」


一空の問いかけに部長は、首を横に振った。


「確かに回復した直後はそうだったが、今は完全に支配下から解放されて、自らの意思でそこにいるぞ。」

「おかげさまで。」


部長が翡翠の方に視線を向けると、翡翠は軽くお辞儀をした。


「解放されたと言ったが、そんな簡単に解放されるものなのか?話からすると、そんな簡単に行きそうにはないが。」


仁が部長に問いかけた。


「私も詳しくは分からないが、閻魔の奴いわく自らの対話?だとか言ってたが、それで支配から解放されたらしいぞ。詳しくは、伍代にでも聞け。」


すると翡翠が、部長の方へと歩き出し、一空と仁の前に立った。


「では、代わりにお話しします。閻魔を名乗った方は、対話と表現されましたが、簡単に言うと死合です。今の私と私の体を操った状態の〈ハデス〉とでこの体をかけた、殺し合いです。それに、勝って今は自由の身と言うわけです。ただ、体内には〈ハデス〉の一部が残ってはいる状態ですが、完全に活動は停止しており、今は私の一部となっています。」


「んー......まぁ、色々あったが今はもう〈ハデス〉が操っていたセカンドでなく、元通りって事だよな。」

「その通りです。」


一空が話の結論を確認すると、翡翠は頷いた。


「あんたが、どうしてここにいるかの事情は、大体分かった。それで、彩音の話に戻るがあんたは何を知っているんだ。」


仁が本題を再度提示した。


「そうですね、次は私が話す番ですね。まず、あたな達は私と彩音様の関係は、どこまでご存知ですか?」


翡翠は、一空と仁に向かって現在の認識確認を行った。


「彩音には、昔命を救われた執事がいたって話は聞いたが、その後は行方知らずになったって事くらいかな。その執事がアンタとは御神楽から教えて貰ったぞ。」


翡翠の問いかけに一空が答えた。


「その情報は彩音から教えてもらったものだ。〈神守護(ガーディアン)〉と戦闘の時に万城、お前を探してる時にな。」

「なるほど、私と彩音様の関係はある程度理解しているという事ですね。」


翡翠はそう言って両腕を組んで何かを考え出し、黙ってしまう。

その光景に耐えきれず一空が声をかけた。


「何黙り込んでいるんだよ。まさか、そのまま何も話さないって訳じゃないよな。」

「.....」


「おい、聞いているのか?」

「.....」


一空は全く反応しない翡翠に、たまらず部長の方を向いた。


「部長、コイツ黙って話す気なんてないぞ。時間の無駄だ。」

「少しは待つ事が出来ないのか、お前は。」

「待つも何も、こっちは彩音の話を聞きたいのにコイツは、さっきから...」


一空がそう言いかけた時、今まで黙っていた翡翠が口を開いた。


「あっ、すいません。何を伝えるべきかを判別していて考え込んでしまいました。」


その声に一空が反応すると、部長は顔を翡翠の方に向けろと無言で何度か前に動かした。

一空はそのまま黙って翡翠の方を向いた。


「初めに伝えておきますが、皆さんに彩音様の全てをお話しする事は、まだ出来ません。」

「!」

「ですが、これはお伝えします。」


翡翠は、少し間を空けてから再び話し出した。



「彩音様は、7年前の戦争を私と一緒に逃げた後、ある日彩音様は、私の目の前で獣王に連れて行かれました。その後、獣王に瀕死状態にされた私を〈ハデス〉が拾ったのです。」



「!?」


一空と仁は、翡翠から出た言葉に驚きを隠しきれなかった。



「なっ....何を言っているんだよ。彩音が連れ去られただと?彩音は、7年前に部長が見つけて保護しているって話じゃないのか。」



仁が慌てて部長と彩音の話を出した。

すると部長が、話し出した。


「私と彩音の話は真実だし、伍代が言ったその話も真実だ。」

「それじゃ、連れ去られた彩音を部長が獣王から取り戻したって言うのか?」


すると部長が横に首を振った。


「違う、私は獣王と言う奴の面識も無いし、彩音を保護した時は、どしゃ振りの雨の中だ。」


部長に続いて翡翠が話し出した。


「そうなのです。部長さんの話と合わせると時系列が異なり、獣王に連れ去られた後で部長さんに出会っているのです。これは推測ですが、彩音様は、一度獣王に連れて行かれた後、何らかの形で逃げ出したのか分かりませんが、獣王の元を離れているのです。」

「それで、どうして彩音を忘れろって話に繋がるんだ。」


一空が質問すると部長が答えた。


「これまでの話も彩音からは、聞いていたが不明な箇所や曖昧な所があってはっきりしていなかった。それに、元々記憶が曖昧な時があったり、最近では東和村の時は頭痛がする事が多々あったりしていた。」


部長の言葉に一空も東和村にて思い当たる節があった。


「彩音の7年前の記憶の曖昧さ、東和村での獣王の一味と会ってからの頭痛、急に学園に来なくなった件、そして決定的なのがこれだ。」


そして部長がポケットからボイスレコーダーを取り出して再生ボタンを押した。

そこから流れてきた声は、彩音のものだった。



「.....ここでの任務は終了だな。獣王様にとって重要な情報も得たし、もう用はない。....どうせ何処かに録音機でもあるのだろう。...いいタイミングだし、最後に伝えておくか。いいか私は、初めからお前達の仲間ではない。獣王様にこの身を捧げて、獣王様の為に動き部長、貴方に近付き情報を集めていた。そして、その任務も終えた今、お前達と関わる必要は無くなった。もし次に会う時は、殺し合う時だ....ブツッ!!」



最後は急に途切れる様に終わったが、彩音自身の宣言の様な言葉だけが、部室に響き渡りボイスレコーダーからの音声は終了した。


「...何だよ....それ...」


一空は力が抜けた声で呟いた。


「今までの証拠。そして彩音は、獣王側の奴だと自ら告白したんだ。この理由で、お前らには、もう忘れろと言ったんだ。」


一空はうなだれており、仁は下をうつ向いていた。そこに部長は追い打ちをかけるような言葉を言い放った。



「いいか、お前ら彩音は...いや、七宮彩音は仲間でなくなった。獣王のスパイとして私達の仲間となり奴は、情報を得て獣王の元に帰ったんだ。だから、もう仲間でもない奴の事は忘れろ。」



部長は、冷たい目をして命令する様に言葉を投げつけた。

そして部室は、重い空気に包まれた。



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