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オバケの世界征服  作者: 属-金閣
2章 4月1日~4月4日 三原学園
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2章④ 竜胆のストラップ魔法と代償

 

 一空は目の前で爆発した反動で吹っ飛ばされた。


「いってぇぇぇ……咄嗟に1回使っちまった」


 爆発し周囲を煙が覆っていたが、それが晴れると竜胆がガード態勢で立っていた。


「……」

「(あれを防ぐのかよ……)」


 一空は自分の身を犠牲にした反撃が全く効いてない事に落胆していたが、竜胆のある状態が目に入った。


「はぁ……はぁ……ふぅ……ふぅ……」


 何故か竜胆の息が荒く、それに先程より汗をかいていた。その変化に気づいた一空は、あれは竜胆の力の代償ではないかと考えていた。すると、すぐに一空は竜胆に向かって走り出した。


「右腕に重く大きなガントレットを出現させよ」


 一空が唱えると右腕に腕より一回り大きいガントレットが装備され、走った勢いのまま竜胆に殴りかかる。竜胆は防御態勢をとり続けるかと思われたが、攻撃する態勢をとっていた。

 そして竜胆は、右腕を一空のガントレットに向けて撃ち放った。同時に右腕の突起から勢いよく煙が放出される。それは、竜胆の拳の勢いを増していたもので、そのままガントレットとぶつかると『ガンッ!!』っと鈍い音が辺りに響く。

 次の瞬間、一空のガントレットが弾かれ、後方に体が飛ぶ。竜胆の右手の拳は振り抜いていた。


「嘘だろ! 俺の方が飛ばれるのか!?」

「ふぅ……ふぅ……ふぅ……」


 竜胆が拳を振り抜いた後には煙が残り、一空も直接その煙を被っていた。そこで、一空はその煙は、ただの煙ではないと理解した。


「(ただの煙じゃない……熱い……蒸気か?)」


 一空は確信を持っていた訳じゃないが、竜胆の力がスピード的な力という認識を変えた。一方で、竜胆も一空の力を推測し始めていた。


「(あいつ、口に出した武器を出現させられるのか……力だけなら、かなり強い方だ。だが、それの代償も大きいはずだ)」


 その推測はほとんど当たっていたが確信はない為、少し様子を見だす。


「竜胆の奴、もう一空の力を見抜いたか? 逆にあいつは、竜胆の力をまだ完全に分かってはいないな」

「部長、真の力は蒸気でしたよね? さすがにさっきのぶつかり合いで、気付いたんじゃないんですかね?」

「気づいてはいるが、本当にそうかと疑っているんだよ。なんせ、ほんの一瞬だけ煙に触れただけだからな」


 彩音と部長は2人のぶつかり合いを見ながら各自の状況を分析していた。


「この試合あいつが竜胆の力に気づく前に、竜胆が決着をつけるだろうな」

「でも、真も一気に力を使い過ぎて、代償が大きい様に見ますよ。だから、まだ決着を決めつけるには早いんじゃないんですか?」


 その言葉に部長は『ニヤッ』とした。


「真の代償は、自らの水分。それを代償に自由に蒸気を出して、移動や攻撃に活かしているから、さっきのでかなり使い切っているはずですよね」


 そこに部長が割り込む。


「回復はすぐに無理だから、まだ分からないと?」


 その言葉に頷く彩音。だが部長はそれをすぐに覆した。


「残念。あいつは、それを想定して回復の手段も常に持ち歩いているんだ」


 そう言うと、竜胆の方に視線を向けた。

 竜胆は上着から試験管のようなプラスチックを取り出してた。中には色はないゼリー状の物が入っていた。


「さっきので使い過ぎたな……」


 そう呟き、試験管状のプラスチックの蓋を外し中に入っていたゼリーを飲み込んだ。『ゴクッ』と喉を鳴らしながら全て飲み込んだ竜胆は、みるみる荒かった息が整った。

 それを遠くで見ていた彩音は部長は説明を求めていた。


「あれが竜胆の回復の手段だ。飲んだのは水分を一定量回復できるゼリーらしい。詳しくは知らないが、あれで竜胆自身の代償は弱点ではなくなっている」

「そんな物を持ってたなんて……これじゃ一空がもっと不利に……」


 彩音は少し持っていた一空の勝利を諦めかけていた。

 一空もそれを目の前で見ていて、息を飲んだ。


「おいおい、何飲んでんだ? それになんか、息が整っている?」


 一空は先程の爆発のダメージと力を既に2回使っている代償で、かなり体が重くなっていた。


「(思ったより体が重く感じる……どうする考えろ、この状況であいつにダメージを与える方法を……)」

「ふぅ〜っ……反撃にこないなら、次で仕留めてやる」


 そう言って竜胆はボクシングの戦闘態勢をとる。一空はそれを見て何か思いついたのか、片膝をつけ低い姿勢をとった。直後、竜胆は一空との距離を縮めた。


「何をしても俺の一撃は、もう防げない」


 竜胆が右の拳で殴る態勢に入ると同時に一空は唱えた。


「全てを跳ね返す、分厚い盾を出現させよ」


 竜胆が殴る掛かる寸前に、一空の手元に盾が現れると竜胆の拳は盾にぶつかる。今回は吹っ飛ぶ事なく耐える一空。


「よし、上手くいった」


 逆に竜胆は殴りかかった腕が震えていた。


「くっ……まさか、そんな盾を寸前で出すとは……だが!」


 そう言うと、竜胆は一空の構えていた盾を左手で掴み蒸気を出しながら手前に引いた。そして、前に引っ張れる一空。


「うぁぁ!」


 顔が前に出たところに、竜胆の膝が蒸気と共に下から突き上がってきた。『ゴンッ』という鈍い音と共に一空は空中に浮く。竜胆は、そこから軽く飛び、空中で一回転して、蒸気を出して勢いをつけカカトをそのまま浮いた一空の頭部に叩きつけた。

 さらに『ガンッ!』と言う鈍い音が響くと、一空はそのまま顔面から地面に叩きつけられる。その後、一空は起き上がる気配もなく倒れ、竜胆はそのまま着地してメガネを中指であげて、一空を見下ろして一言呟く。


「お前の負けだ」


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