表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オバケの世界征服  作者: 属-金閣
5章 5月7日~6月21日 神守護
128/154

5章㊲ 『心臓』



円卓テーブルに配置された4つの椅子の背もたれの頂点には、円形の水晶が1つ埋め込まれていた。

秘書の様な格好をした女性が話し終えると4つの椅子の1つの水晶に『腕』と書かれている椅子に座っていた人物が発言した。


「少しいいか?まだ、牙の奴が来ていないようだが、始めるのか?」

「はい、開始時間は過ぎていますので、牙様がいられなくても始めさせて頂きます。スケジュールを優先とします。」


そこに、『脚』と水晶に書かれた椅子に座っていた人物が割り込んだ。


「いいじゃない。アイツ、いつも途中から来るし、問題ないでしょ。」


『脚』と水晶に書かれた椅子に座っている人物は、足を組んで片手を前に出して、爪を見ながら話していた。


「アンタもそう思うでしょう、爪。」


そう問いかけると、水晶に『爪』と書かれた椅子に座っていた人物が、話しかけて来た人物の方を見て答えた。


「私に聞かれましても、困ります。」

「硬ったい返事ね〜誰に似てるんだか?」


『脚』と水晶に書かれた椅子に座った人物は、そのまま横目で『腕』と水晶に書かれた椅子に座る人物を見た。


「...ともかく、毎回揃わずに行うのはどうなんだ?スケジュール優先だと言っても、こうも揃わないのは問題じゃないのか?」


『腕』の椅子に座る人物は、『脚』の椅子に座る人物の視線を無視して、秘書の様な格好をした女性に訴えた。


「腕様の意見ももっともですが、皆さまのスケジュールもございますので、そちらは目をつぶって頂きたい所でございます。」


淡々と答えると、『腕』の椅子に座る人物はそれ以上追求する事なく黙った。


「腕様の意見は、次回の会議時までに反映させられるように考慮致します。それでは、定例報告会議を開始いたします。」



--------



定例報告会議を開始して、15分後。



「以上が、私からの報告となります。」



そう言って、『爪』の椅子に座っていた人物が口を閉じた。


「爪として着任してから、間もないが牙の奴の時と違うな。」

「それは、元部下自慢かしら?」

「そう言う意味じゃない。」


『腕』と『脚』の椅子に座った人物達が会話を交わしていると、突然部屋の扉が勢いよく開いた。


「!!」


急に開いた扉の音に、部屋に居た人物は一斉にその方向を向いた。

そこには、少し息を切らした人物が立っていた。



「牙か.....やっと来たのか。それと、そんな勢いよく扉を開けるな。」



『腕』と書かれた椅子に座っている人物が牙に向かって話しかけた。


「....おい、どう言う事だ?」


牙は円卓テーブルに座っている人物達を睨む様に話し出した。


「どう言う事って、定例会議よ。アンタいつも遅刻してくるから、いつも通り始めてるだけよ。」


『脚』と書かれた椅子に座っている人物が、牙に返答すると、声を少し荒あげて否定をした。


「そんな事を聞いているんじゃない!」

「?どう言う事ですか。」


『爪』と書かれた椅子に座る人物が、問い返すと牙が円卓テーブルに近付きながら話し出した。



「幹部構成の話だよ!幹部は、4人構成で『牙』『爪』『脚』『腕』じゃなかったのかよ!どうなんだ、腕!お前が幹部内で一番の古参だろ!」

「何の話だ?」


腕と呼ばれた人物が、牙に向かって問いかけると牙は、円卓テーブルに手を勢いよく叩きつけて答えた。


「とぼけんな!今さっき、『心臓』と名乗る奴が乗り込んで来て、獣王様に合わせろって言って来たんだ!」

「何!?」


腕は、その言葉を聞くと椅子から勢いよく立ち上がった。


「てめぇ、やっぱり何か知ってやがるな!」

「それで、そいつは何処に行った!」

「ねぇ、何の話をしているの?」

「おい、話を逸らすな腕!」


『脚』に座っていた人物も話に入り、それぞれが話し始めてしまう。


「牙!いいから、早く答えろ。」

「うるせぇ!俺の質問に答えるのが先だろうが!」

「アンタ達、いい加減無視をしないでくれるかしら。」


3人は、今にも手が出る状態になり手に負えなくなる寸前だった。

そこに、秘書の様な格好をした女性が両手を勢いよく叩いた。

その音に、一瞬全員の動きが止まり振り返った。



「皆さん、落ち着いて下さい。今は、定例報告会議中ですよ。」

「あぁ?そんなの.....」

「定例報告会議中です。」

「うぅっ....」



牙は、秘書の様な格好をした女性が放った威圧する様な言葉にたじろいだ。


「それでは皆さま揃ったとこで、再開...」


そう言いかけた時に、秘書の様な格好をした女性の片耳にしていたイヤホン型の通信機が点滅し始めた。


「...はい。....はい。....承知致しました。」


そう言うと、片耳から手を離すと幹部達の方を見て口を開いた。



「幹部の皆さま、定例報告会議ですが一旦中断をします。先程、獣王様より幹部の皆さまを連れてくるように指示を受けましたので、移動致します。皆さま、付いてきて下さい。」

「!」



そのまま秘書の様な格好をした女性は、部屋の扉へと歩いて行った。


「獣王様が、急に私達を招集するなんて、何事かしら。」

「理由など考える必要はない。獣王様が、私達を呼んでいるのなら、どんな状況だろうと駆けつける。ただ、それだけだ。」

「私も同意見です。」


秘書の様な格好をした女性の後に、『腕』に座っていた人物と『爪』に座っていた人物が付いて歩いて行った。


「はいはい。そうでしたね〜。」


その後に、『脚』に座っていた人物が歩いて行った。


「あーっ、モヤモヤすんなっ.....くそっ!」


牙は、片手で頭を何度かかくと部屋の扉へと歩いて行った。



--------



幹部の4人は、一面大理石の床の空間で中央には絨毯が引かれており、その奥に数段階段があり、そこを上がった所に王座の様な椅子がある部屋に居た。


4人は、中央の絨毯に横一列に並び片膝をついて、頭を下げた状態で待機していた。

そんな状態の4人に、声がかかった。


「皆、顔を上げよ。呼びつけておいて遅れてすまない。」

「いえ、我らは貴方様の一部として仕える身。貴方様より先に到着し待機しているのは、当たり前の事です。」

「ふっ...そこまで、かしこまる事はないと前にも言っただろ、我が腕よ。」


そう言葉をかけたのは、獣王であった。

そのまま獣王は、王座の様な椅子に腰をかけた。



「さて、今日お前達を呼び出した理由だが...薄々分かっているんじゃないか?」

「!?」



その言葉に一番反応したのは、牙だった。


「ん?牙は思い当たる事がある様だな。言ってみろ。」

「!?....はい。......『心臓』と言う者についてでは、ないでしょうか。」


牙が恐る恐る言葉を発すると、獣王は軽く笑った。



「ふふっ.....その通りだ。知っているなら話は早いが、反応を見る限り分かっていない者もいるようだから、簡単に話そう。」



そして獣王が話し始めた。


「先程から『心臓』と言っているのは、お前達と同じ立場の奴を言っている。つまり、お前達4人以外にも同じ立場の奴がいると言う事だ。」


「(やっぱり、そうだったか...)」

「(幹部は、私達だけじゃなかったって事ね...)」


牙と脚が小さく呟いた。


「伝えずに隠していたのは悪かった。それに、腕にだけは伝えていたが、他の奴らに伝える事をオレがしないように命令していた。腕もすまなかったな。」

「いえ。」


「(やっぱり、知っていたのか。)」


牙が腕の方を見て呟いた。


「今まで心臓には、別任務を与えていたが今日からお前達と共に任務についてもらうことにした。その為の紹介の場として、今回集まってもらったと言うわけだ。」


すると、部屋の扉開きそこから、フードを被り全身マントの様な布で覆っている人物が入って来た。

そのまま絨毯を歩いて行き、4人の幹部を追い抜き階段前にて、膝をついて頭を下げた。



「(コイツが『心臓』。)」

「(アイツが、獣王様が前から聞いていた『心臓』の名を与えられた者...)」

「(ふーん、あんな子がね〜...)」

「(新しい幹部か。)」



4人の幹部は、新しい幹部を見てそれぞれに思う事を考えていた。


「よく帰ってきた、我が心臓よ。」

「.....」


獣王の言葉に、心臓は黙ったまま頷いた。



「腕、脚、牙、爪....そして心臓。お前達には、これからも私の為に動いてもらうが、やってくれるな。」

「仰せのままに!」



--------



「では、これで解散とする。心臓は、残れ詳しい話をしたい。」


すると、部屋に秘書の様な格好をした女性が入って来て、幹部の全員に声をかけた。


「失礼致します、獣王様。それでは、心臓様以外の幹部の方々は、これより定例報告会議を再開致しますので、元の部屋に移動して下さい。」


そう言われると、4人の幹部は獣王に一礼して振り返って、部屋の扉へと歩き出した。

そして、全員が部屋から出ると最後に秘書の様な格好をした女性が、深く一礼して扉を閉めた。

部屋には、獣王と『心臓』のみが残った。



「こうして会うのは、何年振りだったかな....3年だったかな?」

「.....」

「我が心臓よ、もうここにはオレとお前しかしないのだから、話してもいいだろう?」



すると、『心臓』がゆっくりと立ち上がり両手をフードにかけた。

そのままフードを脱ぐと、頭を軽く左右に振ると長い髪が左右に揺れて現れた。


「!ふっ.....もしかして、心臓と呼ばれるのが嫌だったか?だが、それだけはどうしようもない事だぞ。」


そう言いって獣王は、立ち上がり階段を降りて『心臓』の前に立って片手を頭の上に置いた。



「我が心臓よ......いや、2人だけなのだからいいか。」



そう言って獣王は、見上げた『心臓』に向かって名前を呼んだ。



「アヤネ。」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ