5章㊱ 各幹部達
遡る事、2週間前。
〈神守護〉施設内の一室にて。
「どう言う事だ!」
そうフォースが机を叩いて声を荒げた。
その声に、ビクッとしたのはフォースに報告しに来た1人のメンバーだった。
部屋には、他にフィフスとシックスが同席していた。
「フォース一度落ち着け、すまないがもう一度、具体的に報告してくれるか?」
シックスがフォースをなだめて、報告して来たメンバーに再度優しい口調で話しかけた。
「はい、それでは再度報告させていただきます。」
フォースは、報告者が話し始めると黙って再度報告を聞き始めた。
「問題が発覚したのは、今朝方です。夜間の見張りと交代してモニターを確認した時に、ファースト様の姿がない事に気付きました。」
「夜間の間は、確認出来ていたのか?」
途中で、フォースが質問を問いかけたがすぐに報告者は答えた。
「はい、夜間担当者からはそう報告を受け、再度映像を確認したところハッキリと映っていました。」
「それじゃ、ほんの一瞬交代時に目を離した時にファーストが居なくなったと?」
「....はい...そうとしか、報告が出来ません。」
「そんな事が出来る状態では、なかったはず。この1週間目を覚ましていないファーストが急に何処に消えるんだ。」
「フィフスの言う通り、ファーストはこの1週間目を覚ましていないのですよね?」
シックスがフィフスの発言を元に、再度確認した。
「はい、1週間前に発見されて今日まで、様々な機器で状態を確認していましたが、目を覚ましたと言う計測は出ていません。」
「そうか。」
「それじゃ、逃走後何処かしらのカメラに映っていなかったのかい?」
フィフスが次に問いかけたが、報告者は首を横に振った。
「そうではないかと、こちらでも確認したのですが突然映像が真っ暗になっており、何も映っていないのです。」
「もしかしてだが、その現象は全てのモニターで起こったか?それとも一部分だけで起こったか?」
突然、フォースが問いかけると少しおどおどしながらも報告者が答えた。
「大半のモニターで起こりました。ですが、一部モニターは正常に動いてその時間帯も映っています。」
「なるほど。数は少し多いか...」
それを聞き、フォースは報告者に指示を出した。
「今すぐ、その現象が発生したモニター箇所を捜索範囲としてファーストを探せ。」
「は、はい!」
報告者が支持を受けて、部屋を退出する前にシックスが呼び止めた。
「ただし、捜索メンバーは限定すべきだ。現状でファーストが居なくなったなど広まるのは良くない。俺が捜索隊を編成する、いいなフォース。」
「....分かった。お前に任せるシックス。」
フォースが返答すると、シックスと共に報告者は部屋を後にした。
そして部屋に残った、フィフスがフォースに問いかけた。
「何であんな指示を出したんだ?」
「はぁ〜...まだ分かんないのか?」
「うっ...」
フォースの言葉にフィフスは、黙ってしまった。
「まぁいい。ファーストは雷を操れる力を持っていた。しかも、それはストラップ魔法ではなく、独自で発生させたものだった。これは、あの部屋と戦闘の映像からお前も理解しているだろ。」
「!そうか。ファーストは、その力を使って自分が映らないように、カメラをショートさせて逃げたのか。」
フォースの言葉から答えを導き出したフィフス。
「それも逃走ルートを絞らせない為に多くのモニターに対して行ったようだが.....あの、負傷状態を考えてそこまで遠くへは行けないはず。必ず何処かで体を休めているはずだ。」
「ファーストが消えた時間から、モニターが映らなくなった箇所を探せば、見つかると言うことか。」
「シックスは、ここまで言わずとも分かって行動に出たようだがな...」
「うぅ...」
フォースはフィフスに対して小言を呟いた。
「ファーストの件は、即急に対処しなければいけないが、セカンドとサードの件も進めないと行けないがどうなっている。」
「その件だが...」
そう言ってフィフスが答え始めた。
結論から述べると、あれからセカンドの行方は掴むことが出来ず一時捜索は中止となった。
だが、戦闘の跡や血痕、仮面の破片から重傷であると判断し、死亡している可能性が高いとされた。
そして、サードは治療中だが意識はすでに戻っているが、ずっと何かを呟いている状態で、まともに話を聞ける状態では無かった。
その為、今回の戦闘の経緯や今後の方針など、今までトップでいたメンバーが、一気に消えたりしている状態に困惑していた。
「そうか、セカンドはあれから証拠がないか。サードもその状態では、もうダメだろう...」
そう言ってフォースは、部屋の扉に向かって行った。するとフィフスがフォースに問いかけた。
「なぁ、これからどうなるんだ、ここは?」
フィフスが不安そうな顔をして、フォースの後ろ姿を見つめていると、フォースはそのまま振り返らずに答えた。
「それは、今考える事じゃない。今はファーストを探し出して、確保する事を考えろ。」
そう言い残しフォースは、部屋を後にした。
そして、フィフスもすぐに部屋を出て行った。
その後、捜索班から連絡が入り地下に以前、侵入して来た【革命者】が使用したと思われる、外への抜け穴を使用して、ファーストが逃走したと言う報告が入った。
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時は戻って現在。
「...これからは、私がファーストの立ち位置として〈神守護〉を率いる。それに際し、まずは、序列を再編成する!」
フォースの発言に、集まった〈神守護〉のメンバーは、驚き目を見開いていた。
そんな状態のメンバーに対して、フォースは続けて話し続けた。
「何故こんな事を言ったのかは、お前達も気付いているのではないか?」
「っ」
「お前達の間で、序列上位者が消えたや、おかしくなったなどと言う噂が、広まっているのは、分かっている。」
その言葉に、集まったメンバーは騒ついた。
「ここで、ハッキリ言っておこう。その噂は事実だ。現に、サードは精神状態に異常が見られ、セカンドは行方不明。...そしてファーストは、施設から逃走して、行方不明だ。」
「.....」
フォースが告げた真実に、耳を疑う者や呆然としている者、動揺する者と様々な反応をしていた。
「そんなトップがいない状態では、この組織はいずれ潰れる。そこで、私が名乗りを挙げたと言うわけだ。」
言い終えた後に、少し間があった後に集まったメンバー内で、一人が手を挙げて発言した。
「そもそも、それは事実なんですかね?貴方がこの組織を乗っ取る為に、陥れたという事もあるんじゃないですかね?」
「っ!?」
そう発言した者に、周囲のメンバー達は視線を向けフィフスとシックスも、その発言者の方を見て驚いていた。
「そんな訳ないだろ、セブンス!」
「何で、そう言い切れるんだフィフス?そいつは、よくファーストと対立していたじゃないか。」
「それは.....」
フィフスが黙ってしまうと、セブンスと言われた男性が続けて発言した。
「もし、ファースト達が本当に消えてしまったとしても、これからお前が、ファーストとしてトップに立つ事には、賛同出来ないな。」
セブンスの発言に、周囲にいたメンバーの数人が乗っかる様に、反対する発言をし始めた。
その影響は、すぐに広まり所々から意見が飛び交って来た。
フィフスとシックスは、その状況に慌て出したがフォースは、少し俯いていた。
だが、数秒後にフォースがマイクに向けて話し始めた。
「.....こういう事になるだろうと、思っていたよ。」
「!」
「お前達は、ファーストに付いてきた、賛同した者が、ここに集まっている。そして奴は、強い者を序列という形でランク付けした。」
「それが何だと言うんだ!」
フォースの発言に、反発する者が大声で発言するとフォースがその方向を向いた。
「簡単な事さ、気にくわないなら私をねじ伏せて見ろ!」
「!!」
「今、この中で一番強いのは私だ。私に勝てればそいつが、この中で一番強い事になる。そうすれば、そいつがこの組織を率いればいい。」
そして、フォースはマイクを捨て、腰元に付けた双剣のストラップを引っ張り、両手に中国刀を出現させた。
「今ここで、反論がある奴はかかって来い。お前らがトップになれるチャンスだぞ!」
「ぐぅっ...」
フォースの発言に、今まで反論を述べていた奴らが一斉に黙ってしまう。
フォースの強さは理解しており、序列一桁台の奴に勝つ事は、万が一にでも勝てることは、出来ないと言うのが共通の認識だった。
だが、そんな中から3人が壇上へと飛んでやって来た。
「.....来たな。」
フォースは、『ニヤッ』と笑いやって来た奴らの方を見た。
「話し合いなんかより、こっちの方が分かりやすくていい。」
そう言ったのは、壇上の上にやって来た3人の内の1人、セブンスだった。
セブンスは、髪を後ろで一本の三つ編みにしており、長さは肩の辺りまであった。
そして、腰元から短剣のストラップを引っ張り逆手で、短剣を握り前に突き出した。
「兄さん、私からやらせてよ。」
そこに、セブンスの横に並び立って声を掛けたのは壇上に上がって来た、2人目のエイスだった。
「おい、エイス。」
「ん、もしかして兄様の方が良かった?それとも、お兄ちゃん?」
「はぁ〜.....」
セブンスは、ため息を漏らすとフォースに目線を戻した。
エイスは、両側のもみあげを三つ編みにしているのが特徴であり、体型と言動からセブンスの妹である事が分かった。
すると、兄妹と並ぶ様に最後に壇上に上がって来た人物が近付いた。
「ハァッハァッハァ!まさか、こんなすぐに一番強い人と手合せ出来るなんて最高だな!」
笑い声と共に話したその人物の背中には、『99』と大きく書かれていた。
「にぃやん、この人見た事ある?」
と、エイスがセブンスに尋ねた。
「99...見た事ない奴だ。新入りじゃないか。」
「俺は、ナインティナインス。強い奴と手合せ出来ると聞いて、この組織に入った。最近やっと序列が少し上がったが、まだまだ一番強い奴とやれるのは先だと思っていたんだ。だが、こんなチャンスをくれるとは、アンタ最高だな。」
ナインティナインスは、フォースに指を指して笑いながら話した。
そこに、シックスが割って入った。
「おい、フォース本気かお前!仲間内で何故戦う必要がある?今、そんな事をしても...」
「シックス、お前もさっきの反応を見たろ。もし、私が逆の立場なら、コイツらと同じ事をしていたと思うぞ。.....お前も言葉だけじゃ、納得しないと思っているだろ?」
「うぅっ....」
それに、シックスは黙ってしまう。
そして、フォースは右手に持った中国刀を前に突き出した。
「さぁ、まずは誰からだ?私は、3人まとめてでもいいぞ!」
「言ってくれるじゃねぇか...フォース。」
セブンスがそう呟きとエイス、ナインティナインスもが一斉に構えた。
数秒間、睨み合った後、先にセブンスがフォースに殴りかかって行った。
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そこは、薄暗い部屋で、大理石の床の中心に大きな円卓テーブルが配置されていた。
円卓テーブルの周りのみ天井から光が照らされており、周りには4つの椅子が用意され内3つの椅子には、人物が座っていた。
するとそこに、秘書の様な格好をした女性が円卓テーブルに近付いて立ち止まると、ゆっくりと口を開いて喋り出した。
「それでは、これより【獣王】幹部による、定例報告会議を開始させていただきます。」