5章㉒ セカンド VS 彩音
「はぁ...はぁ...はぁ...ここまで来れば、少しは時間が稼げそうね...」
彩音は岩の陰に身を隠して、その場に座った。
「今の私の攻撃じゃ、アイツに届かない...」
彩音はその場でセカンドに対しての現状を再度振り返り、今後の対策を考え始めた。
「私のこの力は、イメージ力に左右される。だから、声に出す事でイメージを固定させて威力のある力にさせている。」
彩音は、残りのストラップを腰元から外して手の上にのせた。
「残りはこれだけか...多くはないな...」
すると彩音は、そこから両腕と両脚のアーマーが付いたストラップを取り上げた。
「これなら、アイツに通用するかもしれない...」
彩音はそのストラップを手に握って、立ち上がり移動し始めた。
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「...この辺か...」
セカンドは彩音が逃げ込んだ先に入り、彩音が逃げて来た方と思われる所で足を止めた。
辺りは、木々が生い茂っており隠れられる所が多くあった。
セカンドは、その場で両手の槍を構えて周囲に気を張った。
「......」
セカンドは黙ったまま、その態勢を維持し続けた。
すると、セカンドの真後ろから『ガザッ』と音がし、そこから短剣がセカンドに向かって飛んで行った。
セカンドはすぐに振り返り、槍で弾くとすぐさま両横の茂みから短剣が飛び出て来た。
だが、セカンドは焦ることなくその場で回転し短剣を槍で弾いた。
これでセカンドは、また周囲から攻撃されると考え意識を周囲の茂みにした時だった。
セカンドの頭上目掛けて、勢いよく落下し攻撃を仕掛ける彩音がいた。
彩音は、片足を前に出してそのままセカンド目掛けて落下していた。
しかし、セカンドは寸言に彩音の攻撃に気付き咄嗟に真横に回避行動を取った。
その為、彩音の攻撃は当たらず地面に勢いよく片足から着地した。
彩音は両手、両脚にアーマーを装備しており各装備の中心部には長方形の凹みがあり、そから何か光る物が見えていた。
セカンドは回避行動取った直後に、彩音に向かって槍を突き出した。
「っ!」
彩音は、それを目にして呟いた。
「...黄!」
すると、右足から雷が放たれ彩音とセカンドの間に雷の壁が発生しセカンドの槍が弾かれる。
「!?」
セカンドは突然の事に、少し驚いていた。
だが、すぐに態勢を立て直して再度槍を彩音目掛けて突き出した。
「これなら、どう!...青っ!」
彩音は左拳を握って槍目掛けて突き出した。
その左拳は、徐々に氷がまとわりだしその拳を槍の先端にぶつけた。
すると『ガンッ!』と槍の先端が少しかけた。
「っ!?」
セカンドはそれを見てすぐに彩音との距離を取るために、後退しようとした。
だが、彩音がそこから更に一歩踏み込んで、右手で拳を作って振りかぶって呟いた。
「赤っ!」
彩音の右拳が炎に包まれて、その拳がセカンドの腹部に直撃した。
「ぐっ...!」
そのまま彩音は右腕を振り抜き、セカンドは吹き飛ばされるが、槍を地面に突き刺し吹き飛ぶ勢いを減らし止まった。
セカンドはゆっくり顔を上げて彩音の方を見た。
「(何だ今のは...今までの攻撃と違って、すぐに別の力を使えるのか?)」
彩音の方を見ていると、彩音の右腕の凹み箇所から何か薄い物が吐き出されているのを見かける。
「(今、何か飛び出たな...それと攻撃時の掛け声は何か関係がありそうだ...)」
すると彩音がセカンド目掛けて突っ込んで来た。
セカンドは、地面に刺した槍を片方抜いて、突き出した。
だが、彩音は左足を前に踏む込んだ所で呟いた。
「緑!」
すると、急に地面下から風が急に吹き上がりセカンドの槍がその風に流されて槍ごと腕が上に上がった。
「風っ!?」
隙が出来たセカンドに対して彩音は、再び右拳を振りかざした。
「赤!」
彩音の右拳が炎を纏ってセカンド目掛けて、迫った。
セカンドは次の瞬間、風に吹かれた手に握っていた槍を手放し、彩音の右腕を掴んだ。
「!?」
「ぐっ!」
セカンドは炎を纏う腕を掴み、彩音の腕をそのまま押し込み軌道を変えて、顔面に迫った拳を避けた。
そして、セカンドは目の前で彩音の右腕から炎が消えるとこを見て、そこから腕の凹みから黒焦げになった薄い板の様な物が排出される所を見た。
セカンドは、そこからもう片方の手で彩音の右腕を掴みに行き、そのまま体を回転させ彩音を一本背負いで投げ飛ばした。
「ガハァッ!」
彩音は背中から地面に叩きつけられた。
セカンドはすぐに、地面に突き刺してあったもう一つの槍に手を伸ばして掴み、抜き上げた。
「させない!赤!」
彩音は仰向けのまま、右腕を地面に叩きつけた。
直後、地面から炎の壁が燃え上がった。
だが、セカンドは怯む事なく槍を炎の壁に突き刺すと突き抜けて、彩音に向かった。
そしてセカンドには、何かに突き刺さった感触を得ていた。
しかし、それは人肌に刺さった物でないとすぐに気付くセカンドだったが、気付くまでに一瞬だけ間があった。
本当に一瞬の間だったが、そこに彩音は攻撃を仕掛けていた。
「ハァァァッ!」
彩音の右足が炎の壁を突き破り、セカンドの顔の横に直撃した。
「グッ...!!」
セカンドは、蹴られた方に吹き飛んで行った。
「ハァ...ハァ...ハァ...」
彩音は息を切らしながら、片膝を地面に付けた状態で槍が突き刺さった氷を纏った左拳を下げた。
「(あの状態からでも、攻撃が来ると思っていたが...やっぱり来たか...)」
彩音は左腕の纏った氷を解除すると、突き刺さっていた槍が地面に落ち、腕の凹みから黒焦げになった薄い板の様な物が飛び出た。
そして、右足の装備にもある凹みからも同じ様な物が飛び出ていった。
「(一部だけ、かなり使ったか...)」
彩音は、両手首や両足のかかとを流し見ていた。
すると、セカンドがうめき声を上げながら立ち上がった。
「あ“ぁぁ...まさか、顔面に受けるとは...」
セカンドは蹴られた箇所を片手で抑えながら彩音の方を向いた。
「だが、お前のその力の使い方が分かったぞ!」
「っ!?」
セカンドが抑えていた箇所から手を離すと、仮面にヒビが入っていた。
「お前は、鉄を別の何かに変える力だと特定した。現に今のその装備でも使っている力は変わらない。」
「うぅ...」
「さっきから攻撃後に、何かを排出しているのは分かっていたが、それが鉄だったと分かった事で確定した。」
セカンドは、手に真っ黒になった鉄の薄い板を彩音に見せつけた。
「後は同じだ、お前は口に出してそのイメージを変化させそれを纏って使っていた。それも、単語だけで発動させていた。」
「っ...」
彩音は額から頬にかけて一滴の汗が流れて落ちていった。
「原理させ分かれば、避ける事もない...!」
セカンドはそう言って、彩音の近くにある槍目掛けて突っ込んだ。
「それでも、今は私の方が優勢!黄っ!」
彩音は近付くセカンド目掛けて、右足を前に蹴り出した。その足には雷が纏っており普段の蹴りより一段と早い速度で蹴られていた。
「黄は、雷だったか...」
「!?」
セカンドは小さく呟くと彩音に近付く寸前で左真横に方向を変えてからブレーキをして、そこから彩音に突っ込んだ。
彩音は蹴った動作の後だったため、背中がガラ空きになっていた。
そこにセカンドはタックルをし、彩音は吹き飛ばした。
「ぐっ!」
彩音は、飛ばされた方に両手をついて地面を築き上げて宙で態勢を直し、足から着地した。
セカンドは槍を2本とも回収し、その場で立っていた。
「(攻撃の属性が読まれた!?)」
彩音は、すぐにセカンドの方を向いて考えていた。
「お前の攻撃パターンは読めたぞ。色がその攻撃に連携していたんだろ?声でイメージを刷り込ませているんだろう...何度か受けていれば、すぐに分かるぞ。」
「...やっぱりファーストパターンじゃ限界か...」
彩音は厳しい表情をして呟いた。
「さて、そろそろ幕引きと行こうか。」
セカンドがそう言うと、一本の槍を前に出して地面に突き刺した。
そして手をかざして呟いた。
「外装解放...」